◎不夜城 真夜中に会議は踊る②円形会議場で〈サバイバル〉
お読みいただきありがとうございます。
転生者トビアス君の出番です。
乙女ゲームのナビゲート役。
やっと乙女ゲームに辿りついた気がします。
お楽しみいただければ幸いです
イイねやらスタンプ貰えたら小躍りしながらクルクルします(笑)
◎闇の王子 Noli me tangere②
ゴーール!
アイン殿下のフラグ折ったーーー!
なんのフラグだか知らんが、フラグの匂いがした。
〈それまで自分が生きていたら…〉なんて台詞をフラグじゃなくても10歳の子供から聞きたくなかった。
俺、やった!
円卓の向かい、正義の女神のレリーフが俺を見下ろす。
女神が彫られた正面の座にニコラス先王閣下が鳩が豆鉄砲喰らったような顔で座している。
書類雪崩れを作りながら。
殿下方はというとぴよっと雛のように円卓の上に正座。
あれは理解が及ばないことが起きて戸惑っている顔。
ぴよっぴよと首を左右上下に振って状況確認をしようとしている。
可愛い(笑)
もう、あんな死にたがりのような台詞を言わないでください。
俺もイキナリアイアンクローは酷いと思いました、申し訳ありませんでしたアイン殿下。
でも他に方法が思い浮かびませんでしたぁ!
すぐ土下座して謝ろうかと思ってましたが…両の拳を…高々上げた掌を、第一騎士団の屈強な筋肉親父に両脇から捕獲されたので動けません、なので心の中で謝罪します。
てか。
ナンデヤネン。
第一騎士団、背が高いなぁ…ぶらぶら…。
掲げた両手をそのまま持ち上げられたら…足がつきませんでした(笑)
デカイナ、親父達。
ぶらぶらぶら下げられて連行されてます 俺 第三騎士団、アイン殿下付きの護衛騎士のリーダー、ミネルバ辺境伯家4男なんすけど……。
まま、拉致られる異星人のように両手を挙げたまま円卓の左側にいた兄貴、1兄と2兄の元に連れていかれる。
メチャあきれた顔された。
兄貴たち、いたんだ(笑)。
兄たちの背後の壁は東の梟の女神と梟。
夜の月と星。 濃紺のグラデーションのレリーフ。
城内案内図には乗っていないだろう ドアと窓がない円形の会議場。
出るのも入るのも大変そうだな。
真ん中に定番の円卓、東西南北中央にレリーフ。
拉致られている間に南のエリアス氏も護衛騎士と共に海とシャチのレリーフの席に着く…シャチなんだ…。
海と太陽のレリーフは赤の濃いオレンジのグラデーション。
円形ドーム状の天井には天の星々の運行と太陽、ぐるりと女神達が囲む天界の天井画。
北は熊と氷花のレリーフが彫られているが席は空席。
北の辺境は一番不穏な場所なのに、穏やかな山と森の恵みと動物のモチーフ 色は白。
中央正面は剣を掲げる目隠しされた女神 正義と天秤を咥える鷹と稲妻…金色。
〈天には星 地には花 すべて世は事もなし〉
天井近くの梁にぐるりと刻まれた言葉、勉強したことない古語の筈なのに読めます、これ、転生者ボーナス…?
それよりチートくれ、チート能力。
多分中央が王族の席 先王、殿下方、王弟が揃う。
いつの間にかアイン殿下は先王の左、ツヴァイ殿下は右に座し、ツヴァイ殿下の開いた隣にはオペル公爵が座した。
「ええと…俺はアイン殿下の護衛騎士なので中央の殿下方の席の後ろに行かせてもらいます」
第一騎士団員に強制的に東の席に座らされた俺は腰が落ち着く前に席を離れようとするが2兄にぐいっと腕をとられる。
大人しく座れと?
「四はそちらに」
1兄がにっこり俺の横を指さす。
気が付かなかったが東部辺境領にある大学の制服を着た少年が、魂抜けた顔で座っていた。
後ろに猫耳メイドを従えて。
誰?
濃いめの金髪に青い瞳、襟の詰まったブラウスに大学の規定のリボンタイ。
裾の長めのジャケットは大学生の制服。
高校生だと尻が出る短めのジャケット。
東の辺境領は6・3・3の12年の義務教育があり、志望者には大学、専門学校でも学べる。
もちろん平民の子供も義務教育だ。
紅のリボンタイは一年生だろうか。
普通に領都にいる大学生っぽいが……?
「ウチの領都、アヅチの行政官の子爵の息子だとアイルは言っていた」
「お前の相方のアイル氏が連れて来た客だ」
二兄は俺を冒険者ギルドから攫ってきた時に俺のパーティの相方だったアイルに会ったから面識があるだろうけど…。
「?」
少年は助けを求めてこちらを観ている。
なんかスライムがテイムされたそうに観ている…?
無視しますか? テイムしますか? と選択枝が入りそうな感じの少年。
その選択枝は保留で。
「ディーオイレ ミネルバ、ミネルバ家の四男、現在は騎士爵を賜ってアイン ドンナー ノイエクラッセ第一王子の護衛騎士を務めている」
少年はちょっとないくらいビックリしている…何?
「トビアス ベルトラムです ベルトラム子爵家の長男でアヅチの大学に通っていますアイル氏とは仕事の知り合いで…す」
茶色に近い金髪に青い目、普通に平凡な大学生の風体だが…。
不思議そうな顔で俺と二兄を見比べて一言。
「アイン殿下の護衛騎士はホーク ゲイガン ミネルバ卿では? 」
はい?
「二兄、そう名乗ったのか?」
「いや? 身分的にお前からだと思って何も話していない」
兄弟で身分差! (泣)
一兄。
「貴族名鑑見れば名前は載ってるが役職まで乗ってないな」
二兄。
「何で俺がアイン殿下の護衛騎士だと? 」
俺は…。
アイン殿下、自分の名前が出ているからだろうか、こちらを胡乱げに見ている。
なんかメチャビビってますね? トビアス君。
まあ、似たようなゴツイの3人に至近距離で囲まれてますからね、にやり。
汗かいたのかハンカチで首周りを拭き始めた。
妙にオッさんくさい仕草だな?
ハンカチを襟首に突っ込んだ際下に付けている銀色の金属が見えた…?
チョーカーにしては襟の下だし…。
ちょっと確認しようとトビアス君の首に手を回そうとしたらメチャビビられた。
なんで?
だが、ここで猫耳メイドさん、参入。
敵認識されたか、椅子ごとトビアス君を攫って後ろに匿う猫侍女。
おやあ? 力あるね? おやああ? 変わったメイド服着てるね? …前世で見たメイド喫茶のメイドさんだね…。
ふっくらした白に細かいレースが胸元を覆うブラウス。
膨らんだ袖に手首を締めるカフス。
ウエストを細く絞って胸を強調するメイド服?
スカートの長さが普通より短い。
ご主人庇うんだ、へー…と、汗を拭く手首を掴んで引き寄せる。
そして襟の隙間からトビアス君の首に魔力封じの首輪を見つけてギョッとした。
気が付かなかったのか兄ズ!
いや、ブラウスの襟に隠れて見えなかったか。
俺の気配を察して兄弟全員立ち上がる。
腕を振り払ってきょとんとするトビアス君。
魔力で自爆させるのに魔力封じの首輪を改造するのは良くある暗殺の手口。
二兄と俺がトビアス君、確保に動く 一兄は退避。
だって一兄、東の辺境伯家の次期当主だよ?。
あの猫! 何置いて行きやがった!
アイン殿下が座りかけた椅子から立ち上がる。
第一騎士団が俺らの挙動に気がつきニコラス先王陛下とオペル公爵を囲む。
アイン殿下放置かよ!
と、バリエとバルトが一番近い南の辺境伯の護衛騎士と共にアイン殿下とツヴァイ殿下、エリアス氏を囲む。
瞬時に全員が臨戦態勢に入る。
「その猫人侍女、イキモノじゃない! 魔力拒否不可! 」
アイン殿下がバリエ達の後ろから叫ぶ。
殿下の魔力拒否が使えないと?
魔力じゃないモノで動いているのか!
益々混乱するトビアス君。
でも、ナマモノじゃなければ何だよ!
と、二兄が俺に前衛を任せて、トンと間合いを取って抜刀!。
腰抜かすトビアス君を猫侍女は壁際に避難させた。
恐い! 後ろの二兄の殺気が俺でも怖い!
「敵じゃありません! 自爆なんてしません! 」
本人、気付かないで自爆させられるんすよ!
トビアス君、声が裏返って半泣き。
「攻撃の意思はありません! オレノヨメに攻撃しないでください! 」
大人しく確保されてくれれば痛くシナイヨ?
「攻撃すると護衛システムが働きます! 」
なんだってぇ!
言いたいことを叫ぶと壁と猫侍女の隙間で頭を抱えて蹲る。
魔力封じの首輪が魔力を吸収して光ってる。
やばい、コイツ興奮して魔力暴走するクチか。
やばいけど猫侍女、オレノヨメなのか…。
♬ファインファインファアアア~と、妙にテンション下がるのは何故?。
猫侍女、メチャ殺る気で戦闘態勢に入ってるんですが。
避難するはずの一兄も懐から小型拳銃を秒で猫侍女に向けていた。
赤い光の糸が銃身に巻き付き魔法陣が浮かび上がる。
完成してたんだ、俺発案の魔道拳銃。
魔力を装填して発射するのは魔弓と同じ原理だが、弓ではなく銃身に弾丸状態に固形化した魔力に魔力を当てて発射する。
小さい弾丸なので急所でなければ威力はないと言われので素直に、弾丸に鉛玉詰めて着弾すると爆発するようにしたらと説明したらえげつないとビビられた。
なんでそんなコト考えたのか俺も不思議だったが前世を思い出して青くなった。
散弾銃やクラスター弾、殺傷力を上げる武器の考え方を異世界に持ち込もうとしたのかと…。
あれ試作品だと思うけど、散弾銃のように爆発ははしないだろう…しないよな? もういわないから忘れて欲しい。
などと考えていたら猫侍女、渾身の一撃を俺のみぞおちめがけて放ってきやがった!
みぞおちに拳が入る寸前にかわしながら相手の力のベクトルをそらして、くるりとひっくり返し、地に叩きつけようとしたが、ひょいと交わされた?
地に叩きつけられる瞬間、空いていた片手を屈伸の要領で下から伸びあがり蹴り上げてきやがった。
のけぞり、紙一枚の差で避けた。
まだ盾は使わない。
先王陛下の前で手の内を明かしたくないんだけど。
おっと!
猫侍女、スカート! 蹴りでスカート翻って中身まるみえだ!
メチャ気が散るからズロース履かせろよ!
とトビアス君を見る。
猫侍女の足元で蹲るトビアス君、魔力封じの首輪が点滅から赤紫になった。
魔力高まっています。
やべ!
魔力封じの首輪って
点滅が注意。
赤紫が要注意。
赤が危険。
白が暴発寸前だったっけ?
本物なら暴走する魔力を吸い上げているが、爆弾なら溜め込んでいる最中。
ヤバいヤバい! 魔力満タンになる前に外せないだろうか?
考えながら蹴りを受け、いなし、這いつくばるように足払いをかけようとして失敗。
くしょーとか考えてたらヒールで踏まれそうになった。
ご褒美?
じゃねえよ! と横っ飛びに避けてそのままバク転の要領で足元まで接近、立ち上がりざまに胸倉掴んで投げ飛ばそうとしたら猫侍女様の胸部装甲を掴んでしまった。
…あひゃ? 俺が妙な声出してどうする!
いや、胸部装甲、中身寄せてあげての装甲のせいでブラウスつかめなかった。
本体予想より重いし…(失礼!)
掴み損ねて伏せた俺の上を蹴りだそうとしていた猫侍女が目標をはずれて飛ぶ。
丁度間合いが壁、俺、猫侍女、二兄で猫侍女をサンドイッチにした状態になった。
あ
一兄! あんたは手を出すなぁ!
猫侍女から間合いが離れたトビアス君を一兄が銃を構えたまま引き放そうとしているが己の身体能力を弁えない、身体能力兄弟最弱一兄ではトビアス君を引き放せないでいた。
一兄ぃい!
気付いた猫侍女が二兄を放って一兄に向かって跳ぶ。
一兄、ミンチにされるぅ!
が、先んじた二兄が一兄への猫侍女の攻撃を受け止めた。
金属がぶつかり合う高い音と共に双方離れて間合いを取る…が。
猫侍女、服の下に防具とか着てるのか、二兄の刀を腕で受けた?。
戦闘は俺とではなく、ステゴロ猫侍女VS日本刀の二兄になった。
俺はその隙に一兄とトビアス君を戦場から引きはがしにかかった。
兄ちゃん、東の辺境伯家の惣領だって忘れるなよ!
トビアス君が自爆攻撃に出たら最悪俺の盾で囲んで周りに被害がいかないように…。
って! そしたら俺が盾で囲った内部で一緒にミンチじゃねぇか!
さっきのアレは俺の死亡フラグだったのか?
一瞬、さっきへし折ったアイン殿下のフラグのセリフが走馬灯のように思い出された。
短い転生人生だったな…。
一兄からトビアス君を取り上げて床に押し付け自身も覆いかぶさる。
すまん、トビアス君だっけ? 道連れにする。
パンと誰かの手を叩く音が会議場内に響いた。
「はい、人生諦めたらそこで終わりだヨ?」
会議場内に響くその声に呑まれたのか音が止まる。
アイル、あの野郎!
アイルの姿を視認しようとうつぶせのまま横を見ると二兄が静止した猫侍女のスカートをめくっていた……。
「にいちゃん何やってんだよ」
デリカシーを筋肉で埋めてしまった二兄は手遅れだった。
「嫁は来ないだろうな…」
「何いっているんだ、大丈夫か? よん」
二兄の反対から一兄の声がした。
片方の手を女子をエスコートするように取られて振り向くと一兄が心配そうに屈んでのぞきこんでいる。
女子よりも女子力高く、そこを比べられるが嫌な女子の嫁が来ない、腹黒一兄 顔も地位もあるのに嫁が来ない。
筋肉が脳にまで侵攻してしまった二兄もだ。
ああ、うちの兄ズは見てくれはいいのに…。
関係ないことを嘆いていたら腕の下のトビアス君は白目を剥いて気絶していた。
魔力封じは元の色に戻ってる。
最初からトビアス君の意識沈めたら良かったのか?
「それ、普通の魔力封じダヨ? 何を勘違いしたノかニャ?」
いつの間にか頭の方からアイルがによによしながら覗き込んでいた。
この猫が!
「魔力封じにみせかけた魔力暴走させる魔道具で自爆する暗殺、よくあるだろ」
魔力が多く、暴走しやすい未成年などに魔力封じのための首輪をつけさせ、魔力を調節しながら学ばせる方法がある。
それを利用して、魔力封じの首輪と偽り、魔力暴走させる首輪で自爆攻撃をしかけてくるのを警戒するため、騎士や衛兵、憲兵はその首輪をつけたものが近くにいた場合警戒する。
「魔力封じの首輪にえたいの知らないヒトガタを連れて歩いている奴がいたら警戒するのは当たり前だろう! 何だあの学生、お前が連れて来たそうだが何で王家の者がいる場所に危険因子を送りこんで来た」
マジ責めているのに気にしない強メンタルの猫。
ニヤニヤ。
「ツヴァイ殿下が会いたがっていたデショー」
「は?」
「アイン殿下バトルフィギュア零号機」
前世で見たアイン殿下の戦闘服のフィギュアの名前を出す。
「アレの製作者、ゴーレムマスターのトビアス ベルトラム君」
はい?
「そこで機能停止させてる猫侍女もベルトラム氏の作品」
「ヒトガタゴーレム オレノヨメシリーズだそうだ」
「オレノヨメ……」
前世の知り合いが大事にしている美少女フィギュアをそう呼んでたっけ?
「オレノヨメシリーズ他に2体連れてきている」
ニヤニヤするアイル。
「合計3体のオレノヨメ…」
宰相じゃないが胃が痛い。
「我が国では重婚は犯罪」
いつの間にかアイン殿下がアイルの反対側、一兄の側に立っていた。
「そういうシリーズ名称のようです、本物の人間ではありませんから結婚はできません」
宰相がアイン殿下の横で復活していた。
いや、顔色は悪いままだから復活とも言えないが地下道にいた時より元気になっている。
暗い所が苦手だったのか…夜の宰相なのに(笑)
「その子供、大丈夫か? 会議に必要なのか? 」
南の辺境伯家代表、エリアス氏が覗き込んで来た。
護衛騎士をぞろぞろ添えて…。
「あー彼には大事な役割があって、その承認を得るために連れて来たのですが」
ネコ語が消えてるぞアイル。
泪とよだれと鼻水で顔面ぐちょぐちょで白目剥いて気絶しているトビアス君、会議場にいる全員に覗き込まれて見られていたその醜態。
先王閣下にオペル公爵まで。
哀れ。
「とりあえずオレノヨメに介護させようか」
情も何もないアイルのいいようが酷い。
「おーい、ヨメ!」
カクリとヨメ起動。
動くんかい!
スカートなんか覗いてないよと恰好つけて刀を収める二兄の脇を何事もなかったかのように、こちらに歩いてくる。
「旦那のトビアス君が倒れたから介護して」
返事はないがこくりと頷くとトビアス君の上半身を抱き起す。
本当にゴーレムらしい、先ほどの戦闘で手の甲にひび割れが入っていて、痛くないのかなと気になるが、本人(人形?)気にすることなく何処かから出した濡れタオルでトビアス君の顔を花瓶を掃除するが如くゴシゴシ拭いている。
い…痛そう。
旦那? の扱い結構乱暴!
「トビアス君には国王陛下のゴーレムを作って貰おうと思って連れて来ました」
は?
「とりあえず彼の目が覚めるまで肉食べますか?」
猫?
アイルの言葉に会議場にいた全員が豆腐の角に頭ぶつけた如く困惑した。
今まさに、天上の神々や女神達が見守る円形会議室の円卓で、肉祭りが始まる…のか?。
天上を支える梁には 〈天には星 地には花 すべて世は事もなし〉の言葉。
丸天井に描かれた空を見上げて考えてしまった。
そいや腹減ったな…。
長いです、今までで一番文字数多いです。
第三の転生者
主人公より格好のいい名前です。(笑)




