◎東部辺境伯領 逢魔刻 跋扈するネコミミ
お読みいただきありがとうございます
楽しんで頂けると幸いです。
今回、オタ色が濃いので苦手な方は読み飛ばして下さい
生前、ミネルバ卿はゲームやり込み系、グッズ興味なし。
コチラの方はマンガ、アニメ、ゲームを網羅し、評論、グッズ作成まで楽しむオタ。
高じてフィギュア作成してイベントで売ったりしてた。
多分転生後は乙女ゲーム、ナビゲーター役。
◎若き造形師は懊悩する
黄昏迫る東部辺境領、領都の空は茜色に染まり街の賑わいは大きくなる。
家に帰る人、仕事帰りの食事のために店を探す人々、変わらぬ日常を人々は歩いている。 いつもの領都の風景。
ただ平常と違うのは観光客が減り、街のあちこちにに半旗がかかり、店先の看板は半分に折った黒の布で隠されている 〈商売は通常通りしているが、喪に服している〉の意。
特別なセールやイベントは成りを潜める。
観光客に人気の街、アヅチの中央西よりに俺と両親、妹の住む館がある。
領都の行政区に近い、繁華街からは離れた貴族の邸宅が並ぶ一画。
一応貴族で子爵、この街の行政官を務める父の後を継ぐ嫡子なので嫁を貰ったら文官として俺は平和に平凡に生涯をこの街で過ごす予定だった。
元々平凡な大学生だし(笑)
と、油断した人生を謳歌していたら俺の元に王都から召喚状が来た。
王城の印蝋が押されている灰色の封筒…。
いや、なんで?
俺は領都の大学に通う平凡な普通の一般下級貴族の子息です。
国王の国葬に出席を求められるほどの人物ではないし。
召喚状を送られるような善行も悪事もしていない。
心あたりなどありはしない…。
…無いよな?
よし、逃げよう。
手紙の封蝋を見て即決。
ベッドの横のサイドテーブルの上に手紙を開けずに放った。
作業着に着替えようとしていたのを変更し、いつでも逃げられるように用意していた旅装をかかえ、隠しておいた最低限の旅支度が入った旅行カバンと普段持ち歩く癖を付けていた、なけなしの財産の入った斜めがけのカバンとを抱えた所でヨメの存在を思い出す。
嫁は…すまん、落ち着いたら迎にくるから。
通常行動ならすぐにはバレないだろう、学生なんかよく旅行するし、と考え、一瞬油断した
え?
周りが暗い?
いきなり沸いた黒いローブの三人組に息がかかるほどの至近距離で囲まれた。
というか、後ろの奴が俺の腰を、両横の奴らが俺の肩と腕を捕まえて拘束される。
「ひ…えぇ? 」
声が裏返った。
動けない!
背中に汗が滝のように流れる。
口から心臓が飛び出そうとはこういう体験?
というか背中の奴ヤバイ、暑いしぜーぜーしてる。
もしかしてふっくらさん?
じゃなくて!
「逃げようなんて甘いよ? 」
突然眼前に沸いて出た猫人アイル。
何回か依頼を受けて稼がせて貰った顧客。
ヤバい ヤバい!
珍しい空間魔法でニヤニヤ首だけ出した後、這い出すように全身出て来た。
お前はチュシャ猫か!
ぐるりと人の周りをまわりながらサイドテーブルの手紙を手にとる。
「召喚状、読まないと不敬だヨ? 」
「いや、なんで召喚状? 」
アレか? ソレか? コレか?
「第一王子がゴーレムマスターに会いたいって」
ソレ、俺には死亡フラグ!
すんません、いきなりですが転生者です。
前世、よく覚えてないすけど引きこもりで原型師という仕事をしてました。
あの、その…アニメやゲームのフィギュアの原型を作るお仕事です。
原型作ってそれで鋳型を作り、その鋳型にプラスチックを流し混み、手や足、頭のパーツを作り、組み立て、色塗りまでして数量限定で販売していました。
だから知ってます、この世界。
乙女ゲームの世界なんすよね。
「ノイエクラッセの薔薇姫」
薔薇姫の異名を持つ聖女が男性攻略対象を落としてハーレムエンドを狙うってやつです。
ここまでは普通の乙女ゲームなんすけど、ハーレムエンドの後がとんでもない。
最難関攻略対象がラスボス化でバトルモード突入。
なんじゃそりゃ!
バトルモードを征して最高難度攻略対象を落とす!…。
恋とバトル、愛とバトル、エロとバトル的なトコロが女性うけしたらしい。
「愛とは奪い取るもの! 」
コレ、ヒロインの台詞だろうか? パッケージに封入された初回限定攻略対象ステッカーセットの一番前、ヒロインのステッカーにあったキャッチ。
悪役令嬢じゃないよ? ヒロイン、ダヨ。
作りました フィギュア。
結構売れたゲームのキャラでしたから。
各攻略対象ごとにファンが付いていて2・5次元舞台にもミュージカルもアニメも出たならフィギュアも出るでしょう。
第一王子のアイン ドンナー ノイエクラッセの1/16フィギュアとか。
ツヴァイ レーゲン ノイエクラッセ第二王子とか、雄っぱい最強第一王子の護衛騎士のホーク ゲイガン ミネルバ卿とか作りましたとも。
そのためにゲームの攻略本やら読みこんで徹夜でゲーム本体やりこみました。
あれ? もしかしてそれで過労死?
そして今生、〈ノイエクラッセの薔薇姫〉では 俺、第一王子がバトルモードで悪役ルートに回った時、手下になるゴーレムマスター予定。
弱いです すぐ死にます 勘弁してください。
だからアイン殿下のいる王都には近寄りたくありません。
ゲーム始まったら巻き込まれたくないので。
逃げていいですよね?
ガッチリ拘束されているけど。
後ろのヒト! 人の腰抱えて鼻息荒くしないでください!
「なんで第一王子が会いたいってことになったんですか? あのヒト夜の王子とか闇の子供とか言われる怖いヒトなんでしょう? 」
恐る恐る言ってみる。
きょとんとするアイル。
猫耳キュルキュルしててハチワレの髪。
子供サイズの可愛い容姿だが。
騙されてはいけない。
こいつは冒険者時代「えげつな魔導士」とか「ショタジジ」とか言われて恐れられていたんだぞ、もう一人「踊るランク詐欺」とか「暴食の狂戦士」とか言われる奴の相方だったんだぞ。
嫁に不意打ち喰らわせて救出してもらう?
でも嫁の正体バレたらまずい。
と…あれ? なんか面白二つ名だな、普通で聞くと。
「第一王子、ハシビロコンドールみたいな顔してるけど大人しい子供だヨ?」
ハシビロコンドールってじっとしてるからと油断してると、いきなり嘴で頭噛んで来る鳥だよな? 恐いじゃないか!
「前に作ってたアイン殿下のバトルフィギュアを気に入ったから今度は弟の第二王子のフィギュアを作ってほしいんだって」
あ、死亡フラグその2。
第二王子バトルルートでは魅了をかけられて、グヘヘとヒロイン襲おうとして殺されます(笑)
最低野郎役予定じゃん、俺。
「王城に仕事場用意するから来て欲しいって依頼だヨ? 破格のギャラ出るヨ? 」
凄いいい笑顔でにっこり誘ってくるアイル。
俺の魔力じゃ魔法師団のこいつらと戦うのは無理。
ますますギンギン詰めてくる魔導師たち。
「王都の上下水道普及率が50%なので行きたくないです」
本当の話。
因みに東部辺境伯領は90%、領の端っこの小さい過疎村でも上下水道完備 凄、流石乙女ゲームの世界?
「王城は水洗トイレもシャワーもアルよ? 」
城はな、もしかして仕事が終わるまで監禁?
乙女ゲームの強制力?
やめて! ニコニコしながら俺のカバンを物質に取らないでください。
「こちらで住居も用意するヨ、イイ部屋、蛇口ひねるとお湯出る風呂、水洗トイレ完備だヨ、サービスでメイドさんも付けるよ?」
地下牢ってオチだったら遠慮したい。
「喉乾いたねぇ、お茶出ないの?」
人の事拉致ろうとしてるくせに接待を要求されている。
酷い!
お茶くらい入れるからこの黒ローブの拘束部隊から解放してください。
サイドテーブルの上にある使用人を呼ぶベルを勝手に振るアイル。
それは主人が振らないと使用人呼べない……。
即、ガチャりと扉が開いた。
「御用でしょうか? ご主人様」
来ちゃった!
いやぁああ! 来ないでぇ!
流石オレノヨメ…だけど来ないでぇ!
ベルを聞きつけて入って来た猫耳美少女に、にんまりするアイル。
ワルイ顔!
赤茶っぽい髪に白の混じったショートボブの髪、金に青のオッドアイの猫目、胸を強調するようにウエスト部分を絞るタイプのメイド服に猫耳、長い尻尾、エプロンドレスに足首までのスカート。
ドアをくぐり、一言発した途端不自然に動きを止める 瞬きもなし。
時間停止ではない、歩くたび腰で揺れていたリボン結びの先が重量に倣いパサりと落ちる。
本体、完全機能停止。
とととと静止した侍女に走り寄るアイル。
が、侍女は微動だにしない。
「いやーゴーレムマスターの作るゴーレム、凄いよね」
動かない侍女の手を取ってにぎにぎするアイル。
手の甲をさわさわさすっも動かない。
「オレノヨメに何すっと!」
セクハラされた時用の防犯機能付けたはずなのに反応しない侍女。
「ヒトガタゴーレム・オレノヨメシリーズだっけ? コレも連れていけるよ?」
にんまりアイル。
バレてる。
俺が人間そっくりの動くゴーレム作ったのバレた。
シリーズで作った名前まで知ってる!
家族にしか話してない……。
あ
「お父上が仕事場で自慢してたよ、俺の後継天才だって」
阿保親父いぃ!
どんな顔していいかわからん。
娘自慢だけじゃなかったー! 口止めしておけばよかった…恥ずかしい…。
オレノヨメプロトタイプ。
護衛機能もセクハラ防止防犯機能も付けた俺の渾身のゴーレム! 猫にセクハラされているけど!
「錬金工兵部隊に売ってくれないかなこのコ、錬金工兵部隊のゴーレムは動いても演習の的位にしか使えないんだよ、俺も可愛いコにお茶入れて欲しい、このコの技術売らない?」
何言ってる、猫。
「売りません! 」
ふざけんなよ俺の嫁だって!
外皮から従来のヒトガタゴーレムと違い、人の柔らかさ、ぬくもりを再現した特注品。
動きのバリエーションとかお茶の入れ方とか学習させるのが大変だったんだぞ!
「[ゴーレムマスター]のスキルで作成した魔法とは少し違う技術が使用されています。魔法師が作るゴーレムとは根本が違うので制作技術を伝えても同じものが出来るか不明です」
わかってるくせに聞くか この猫は!
「面白いネェ やっぱ王都来てアイン殿下に会って欲しい」
アイン殿下に会ってどうすんだ?
俺に可否の権利があるのか? ないだろ。
拘束されっぱなしだし。
後ろでぜーぜーしてる謎のふっくらさんを剥がしてほしい怖い(切実)。
それと
「嫁の機能停止解除してください どうやったんですか?」
今まで嫁の機能を止めた奴なんていなかったのに。
ケットシー族チュシャネコ科人猫目猫人、人と違う魔法大系を使うらしい。
妖精や幻獣が使う魔法と同じ。
人間にはいまいち原理が理解不能。
マジ、お願いします ウチの嫁に酷いことしないでほしい。
「王都、行く?」
拒否権なし、なのに聞くか。
「……」
「オレノヨメプロトタイプ…3体連れて行っていいなら…」
「三体もあったノ? 」
わざとらしく驚くアイル。
はいはい。
本当は6体、犬タイプ、ドラゴンタイプ、猫タイプとヒト型。
ヒトガタの3体は両親と妹の護衛に付けよう。
王都に行ったら、絶対ろくでもないことになる。
乙女ゲーム〈ノイエクラッセの薔薇姫〉が始まるなら…
……1年後にこの国は内戦状態になる。
バトルモード突入だ。
第三王子と第一王子で王位争奪戦になり、国が分かたれ、その期に乗じた某国が進行し、この国の一部が戦場になる。
そんなんなったらゴーレムなんて軍事利用待ったなしだよな。
兵糧の要らない、疲れない、眠らない兵隊。
戦いを制する為の利用価値。
家族仲は悪くない、いい家族だと思う。
両親妹、仲良く雑談や冗談を言いながら朝食取れる程度には。
まあ、父親は妹溺愛ですけど……。
俺も妹溺愛ですけど……。
だからヤバい可能性があるなら保険大事。
いざという時は俺の代わりに家族を守ってくれと念を込める。
OKの返事がそれぞれのヨメから帰ってくる。
うん、通信良好。
前に学園入学の下見と偽って領都から王都、あちこちに通信電波中継用の魔道具を作って埋めておいた。
オレノヨメプロトタイプ 電脳にあたる、各個体に埋め込んだ思考記録媒体用の魔石を秘密の場所にある特大魔石の記録媒体に通信で接続、(ついでに俺との通信接続)保存しながら相互通信機能でお互いの経験を学習、それに基づき思考、状況判断するように作った。
だから頼むよオレノヨメ。
俺が乙女ゲームの悪役で死んでも殺人兵器になんてならないでくれ。
「………」
意味わかってないのかな、返事なし。
「なんか悲壮感漂っているけど、殿下達のフィギュアを作る間だけだからスグに帰れるヨ」
アイルがニヤニヤしながら俺の肩をバンバン叩く。
俺の杞憂だったらいいんだ。
杞憂だったら…。
親父に付けたオレノヨメに念話で伝言を頼むと旅行用品とフィギュア作成用の道具の入ったカバンを持った。
三人の魔導師はそれぞれオレノヨメシリーズのゴーレムと手をつなぎ、(ドラゴンタイプ担当のふっくら魔導師(俺の後ろに張り付いていた奴!)が妙に嬉しそうに手を繋いでいる)オレノヨメに邪な気を抱くなよ!。
黄昏から夜になる一瞬の逢魔刻、俺とアイルと他、オレノヨメ達がノイエクラッセノイエクラッセの王城に移動魔法で飛ぶ。
奇しくも夜の王子、闇の子供と言われるアイン殿下の暗躍する刻限。
俺: 「ヒトガタゴーレム・オレノヨメシリーズ」です!
家族にゴーレムをお披露目した
父:凄いな、息子!(父、嬉しそう)
父専用オレノヨメ、サービスでお胸の大きいコに担当をお願いしました
戦闘スタイルはステゴロタイプ
母: オレノヨメ……。
母にはヅカ系のクールビューティー侍女、男装もイケるオレノヨメを。
戦闘スタイルは剣
俺:家族護衛用に作りました! 一人づつ連れ歩いて下さい!
妹:兄上、生涯独身確定ダネ! 子爵家は私が婿貰うわ(良い笑顔でサムズアップ)
妹のお付きのオレノヨメは可愛い系で攻めて見ました。
男装可。
戦闘スタイルは魔法。
父は天を仰ぎ、母は地に伏せた。
妹よ! 余計なこと言うな!




