◎不夜城 逢魔刻 跳梁する悪意②
●和と令●の間には暗くて深い闇がある
君が黙ってくれぬなら俺は悪になる。
「物理はヤメテ!」
「うるせぇ! 1192〈良い国〉作ったのは●倉幕府じゃ!」
いやぁあー!
「●戸皇子は昔のお腐様達(一部)の憧れじゃ!」
ドカバコーン!
「知らんがな!」
…楽しんで頂ければ幸いです。
◎夜の子供と慮外者たちの宴
魔法使い共も夜勤決定、そして猫のターン?
誰も天使の無邪気な微笑みを信じない。
子供なんて皆小悪魔ということを兄弟から学習しているし?
東の辺境伯は子沢山、兄弟も8人、四番目の俺は上から下から兄弟の横暴に付き合わされたり付き合わせたりでいろいろやった口。
てか、兄弟同士遠慮や猫かぶりがなかっただけだが。
ツヴァイ殿下は一番下の弟に性格が似ているんじゃないかと思っている。
まあ 経験な。
そして確信した、天使は立派なハニトラ要員として育ったようだ。
ウチの腹黒8男と組ませたらとんでもないコンビが出来そう。
会わせてみたら面白そう。
にやーり。
アイン殿下が現実から目を逸らせてしょんぼりしている。
南の辺境伯にツヴァイ殿下を預けたことに後悔しているのだろうか…。
「……元気でいるなら何よりだ。」
殿下! あきらめたらそこで試合終了だ。
黒宰相がアイン殿下の台詞を聞いて小さく呻いて胃の辺りを抑えた。
第二王子を南の辺境伯に預けたのは宰相閣下。
「宰相、胃薬と併用して飲める痛み止めもあるけど、医務室に行った方がいいんじゃないか? 昼の時間なら治癒魔法師がいるはず」
心配そうなアイン殿下、でも多分原因は殿下の一言…。
そうだ! そんな時はこの東の辺境伯家の名品になりそこねたポーションを…。
「宰相、肉喰え肉、肉喰えばストレスなんて吹き飛ぶぞ」
のんきな南の辺境伯。
「だからあんたは自分ちに帰れ! シュヴェールトヴァール卿! この肉拝教の脳筋がぁ! 」
宰相、怒りのあまり暴走。
ジタンダ踏む勢いで南の辺境伯に突っかかっていく。
エリアスが脳筋な発言するから……。
「なんにゃ? 急病人? ヨナスに移動魔術で医務室まで遅らせようかにゃ?」
いつのまにか猫と魔術師、参戦。
何処から入ってきた! 不法侵入者どもめ。
「給湯室に抜け穴あるニャン」
そこはかとなく埃っぽいヨナス氏、疲れて腰をさすっいる。
「猫の抜け道だからガタイのデカい人間は大変だったかニャン」
もしかして換気口? 普通抜け穴とはいわない。
普通に入り口の扉から入ってくれ。
「大したことないので噂の移動魔術は結構!」
宰相はアイルにストップと手を伸ばして止める仕草をする。
なーんだとつまらなそうなアイル。
ところで何時からヨナス氏はお前の舎弟扱いになってるんだ?
ハシビロコウのような無表情でアイン殿下が椅子から降りてきて宰相の顔を足元から覗き込んでくる。
いいなあ(笑)
表情筋は動いていないが眼が宰相の眉間の皺を写しているのだろうか。
呑まれるように見つめ返す宰相。
愛は生まれてない。
昔初めて出会った時のガラスのような無機質な、何を見て何を感じているかわからなさが消えて、ちゃんと心配して宰相の眼をみて話をしているようだ。
アイン殿下、出会った頃より情緒が育ってきているようです。
重畳重畳。
「脳筋共とデリカシー忘却惣領と仕事してるのかわからない護衛騎士がちゃんとしてくれれば私は元気になりますよ」
宰相にしてはやわらかな笑みを浮かべてアイン殿下に頭を下げる。
俺らもっすか?
「そうか、でも過信せず胃薬と痛み止めは飲んだ方がいいぞ」
皆、殿下の言にほんわかしてるが一部意味が違うぞ?
しかしまあ…人多いなぁ。
此処はアイン殿下の私室。
貴族の子供の部屋としては広いが大人数の大人が集まってわやくちゃするスペースはないと気が付かないかな?
アイン殿下とツヴァイ殿下は応接セットのローテーブル脇にクッションを重ねて椅子のようにしてお茶のために中断していた仕事を始めるところ。
ツヴァイ殿下は数式が得意だと自主的に書類の計算を引き受けている。
…猫の手ならぬ7歳児童の手を借りる王城の文官……。
新しい仕事を運んできた文官が遠い目をして書類を置いていった。
いいのか? 国の仕事だぞ?
そしてそのテーブルの上には書類の番人のようなアイン殿下のバトルフィギアが鎮座況している。
うん、ツヴァイ殿下が置きなおしたな。
生アイン殿下とアイン殿下バトルフィギュアを眺めながらご満悦でツヴァイ殿下が書類をさくさく片している。
計算早い! 七歳児童。
金の散る瞳を持つ王族は皆、何か事務関係の…経理とか財務管理の異能を持つのだろうか。
社畜の血を受け継ぐ王家…。
なんか王族に対するロマンがすっ飛んでった。
経理の帳簿を楽しそうに処理していくツヴァイ殿下と眼が合う。
ふふふと笑う殿下。
「数式は美しいよ? 最適解に向かって淀みなく流れていく。」
くいっと片方の眉が上がった感じ。
「兄上程では無いのですが僕も書類仕事は習ったからお手伝いできます」
この子、中に高校生探偵とか入ってない?
くそぉ! 第三王子に爪の垢を飲ませたい。
高校生探偵は簿記や経理は出来るのかわらないが過労死したホストクラブの経理のおっさんは確実に入ってそうな気がする。
「答えに惑い淀み、計算間違いという深みに沈んでしまう悲しいものもあるが正しい解にたどり着く数式はその流れもゴールする様も美しい」
うっとりと楽譜の音符の流れを撫でるが如く優秀な文官ともいえど臆する数字の海をこともなく楽し気に泳いでゆく。
これはホントに七歳児童だろうか? 。
「これが終わったら報酬として僕にも兄上のバトルフィギアを作ってください! 」
「……」
書類を片づけたその手でアイン殿下のフィギュアを捧げ持ち、大量のキラキラを噴出している。
…うん、アイン殿下強火勢。
この子らに国の税金で生きてるなら国の為に働けとは言えないだろう。
国からの生活費は一切受け取っていないのだから。
「報酬は大事」誰かが呟く。
うんうん。
「それは知り合いのゴーレムマスターが試しに作った試作品にゃ」
魔装工兵科の錬金術師であるアイル氏がアイン殿下の横でゴロゴロしている。
不敬じゃねぇか? この猫。
ゴロゴロごろ。
アイン殿下の横で仕事の報告の順番待ちなんて、ゴロゴロ。
ちくしょう羨ましくなんかないぞ。
俺的にはアイン殿下をゴロゴロさせてあげたい。
殿下は書類に小さな紙を挟みそれにメモを書き込むと小さな金属の紙挟みでメモを止め、返却の箱に入れる動作を一通り終わらせるととアイルを見る。
「それはゴーレムなのか? 」
バトルフィギュアを指してアイルに確認する殿下。
「身代わりとか形代にはならないけど動くにゃん」
「フィギュアの首が取れたら殿下の首もゴロンとか…」
バルトが不穏な言葉を口にする。
え、っとツヴァイ殿下が慌てて両手でフィギュアを捧げた。
落として首コロしたらヤバイと本能で悟ったのはいいが、どうしていいかわからず上に持ち上げうろたえてる。
「大丈夫にゃん、そんな呪いはかかってないにゃん」
ツヴァイ殿下ほっとするがまだフィギュアを掲げたまま。
「簡単な動きなら動かせるにゃん」
「動くところ見たい! 」
ツヴァイ殿下入れ食いです、やるなアイル。
「今動かせるのは〈歩く〉〈座る・立つ〉〈剣を抜く〉の3つの動作ですね。」
と、白紙を一枚、器用に椅子の型に折る。
え? 折り紙でソファ作ったよ、この猫。
アイル、折った二人掛けソファに手をかざす。
「硬化」
折り目がピッとした紙のソファを剣を支えに立っているフィギュアの斜め後ろに置く。
「どうぞ殿下、お座り下さい」
フィギュアに丁寧に声をかける。
こくんとフィギュアの殿下が頷くとトコトコとソファに剣を立てかけて座った。
座ったよ、すっごい偉そうに足組んでふんぞり返ってるよ。
凄い不遜な顔、超生意気なクソガキに見えるフィギュア、誰これ?
正に乙女ゲー最高難易度攻略対象……。
アイン殿下、自分の顔で不遜な態度のフィギュアを見て書類構えたまま固まる。
絶対、脳内自分会議で反省会とかしていそう。
自分、こんなに偉そうなんだとか反省してそう…。
しかし俺も固まる。
前世で同じ姿を見た気がする。
背筋に汗が流れる。
微かな機械音のような音楽。
誰かの抑揚のない電子音の様な、囁き。
〈blanc〉
俺に対しての台詞ではなく、誰かに囁いた声を俺が拾った。
誰に?
アイン殿下のゴーレムに?
命令で動くだけの人形が俺の思考にコクリと頷く。
一瞬人形と目が合った様な気がした。
勘弁してくれ。
マジ思った。
瞬きの間に世界は戻る。
殿下が、宰相が、騎士仲間がいる日常に。
ツヴァイ殿下は何故かキラキラを振りまきながら自身もキラキラ倍増の瞳でフィギュアに見入っている。
ツヴァイ殿下のキラキラが振りまかれてるんですけど何すか? 神聖力?
キラキラに気を取られて猫が俺を観察しているのに気がつかなかった。
いつの間にか図書館司書猫が静かに窓際に座っていたが、誰にも気づかれず、そのまま庭に出ていった。
アイルがくしゃみを連発している。
「これ、神聖力だにゃん」
クシュンとくしゃみをしながらアイルが俺の疑問に答えてくれる。
猫が神聖力でアレルギー起こしてる?
「精力? 」
宰相とバリエが汚物を見るような眼で見て来る。
いや~~ちょっとした冗談っす。
つっ! アイン殿下まで俺を蔑む眼で……ご褒美?。
「ご褒美だと思ってないか? にゃん クシュン」
アイルが上から目線で攻めて来る。
すみません、ちょっと思いました。
「パワハラ親父がセクハラまで手を出したか」
殿下の視線が氷点下に。
やばい。
「大変申し訳ありませんでしたぁ、女子いないからこれくらいの冗談いいかなと…」
「いなくても良くないです」
アイン殿下、正論。
「だからモテないすよリーダーは」
黙れ、鉄砲玉 お前も眼鏡にしてやるぞ。
ツヴァイ殿下は殿下でフィギュアに夢中で神聖力をバラまいている。
カオスだ。
「商会とアイルの許可が出ればツヴァイにはそれをあげるから今度はツヴァイのバトルフィギュアを作って私にください」
アイン殿下、欲しかったんですね。
平常心のような無表情なのに口元がうずっとしている。
しかし、さっきの音が幻聴でなければ…。
そのフィギュアは尊称持ち。
俺と同じ、世界に打ち込まれた、使い捨ての人柱。
「僕のフィギュアを作るなら戦闘可能なゴーレムにしてください! 」
凄いやる気なツヴァイ殿下。
アイン殿下を守りたいのか。
「戦えるゴーレムの製作はゴーレムマスターに聞いてみないとわからないなぁ」
猫が顔洗ってる。
何故か慌てるアイン殿下。
「ツヴァイのフィギュアは戦えなくていい」
「側に置いておきたいだけだから」
うっ!?
殿下、それ、愛の告白?
ツヴァイ殿下が胸を押さえる。
「ツヴァイ?」
慌てて弟の背中をさすろうと手を伸ばすがツヴァイ殿下にガッチリ両手で握られる。
「僕も兄上の側にいたい」
あ、ツヴァイ殿下泣きそう。
両目が魔力封じの幅広リボンで隠されて分かりにくいが口元が泣き出す秒前に歪んでいる。
が、躊躇なく部屋の空気が変わる。
時制は兄弟の支え合も許さないと言うことか。
トイレに何かいる、違和感が凄いする。
護衛騎士、俺らも南のも秒を待たす配置に立つ。
一瞬での変わり様にツヴァイ殿下は固まり、アイン殿下は弟を背中に隠した。
いや、この中で一番守られなきゃいけないのはアイン殿下なんすよ?
バルトが扉横に身を潜めるように双剣に手をかけ、俺は扉前で拳を固める。
出て来た奴はぶっ飛ばす!
ガチャり。
扉が開く。
「来ちゃった」
「………」
殴って良いですね?
そこには早朝別れた殿下方の叔父上にあらせられるオペル公爵閣下がお出ましになられていた。
テヘペロ感満載で。
もう一度お聞きします。
殴って良いですよね? 殿下。
肉:アレはなんじゃ?
雷鼠:ヂュウーー!!
火の玉:銀のスライムに翼が生えちょる?
魔眼ちゃん:ありがたやー!
魔眼ちゃんが拝んでいる!
金のスライム一つか銀のスライム5個で乾き物の非常食セットプレゼントか!
おかんの妖精:何言うとんね!
猫:アレは次男坊特典スキル〈誰からも愛される次男坊〉!
魔眼ちゃん:…銀のスライムが幸せならイイよ
猫:そしてコレ↑が長男特有スキル〈お兄ちゃんなんだから弟の面倒みないと〉
……魔眼ちゃん! (;ω;)




