第9話 玄関先の父
第9話 玄関先の父
お母さんの葬式から、
数日が経った。
「お前に瑠璃は渡さん!」
学校から帰ってくると、
玄関からおじいちゃんの怒鳴り声が聞こえた。
私は足を止めた。
なに?
そっと、
玄関を覗き込む。
玄関のドアが開いている。
出入り口の前に立っている、
お父さんの背中が見えた。
お父さんは、
家の中には入っていない。
その向こうに、
おじいちゃんとおばあちゃんがいる。
「ですが、お義父さん」
「『お義父さん』と呼ぶな!」
中から、
おじいちゃんが叫んだ。
……。
なんで、
こんなに怒ってるの?
私は近づいて、
お父さんの背中をつついた。
お父さんが振り返る。
私の顔を見た。
「瑠璃……」
「どうしたの?」
「ああ……あとで話す」
「ふーん」
お父さんは、
もう一度家の中を見た。
「黒川さん、また来ます」
おじいちゃんに会釈する。
「もう来るな!」
おじいちゃんが怒鳴った。
お父さんは、
何も言い返さなかった。
「じゃあな、瑠璃」
「うん。またね」
お父さんは、
そのまま歩いていった。
私は後ろ姿を見送った。
なんだったんだろう。
家の中を見る。
おじいちゃんと目が合った。
さっきまで怒鳴っていたおじいちゃんが、
少し、
ばつの悪そうな顔をした。
私は玄関に入る。
靴を脱ぎながら聞いた。
「どうしたの?」
おじいちゃんの横にいた、
おばあちゃんが言った。
「着替えてきなさい」
「うん」
私は二階に上がった。




