第2話 目覚まし時計を押したら、光速の八十万倍で逃げ出した
第2話 目覚まし時計を押したら、光速の八十万倍で逃げ出した
俺の息子、レオ・レイヴンには悪い癖がある。
知らないものを見つけると、まず触る。
触って反応がなければ、叩く。
それでも動かなければ、とりあえず一番大きなボタンを押す。
幼いころから何度も注意してきた。
五歳のとき、空気清浄機だと思って船内消火装置を作動させた。
十二歳のとき、ゲーム機だと思って小型艇の主砲を発射した。
十八歳のとき、花火の発射装置だと思って惑星間ミサイルの安全装置を解除した。
そして二十三歳になった今。
こいつは目覚まし時計と間違えて、俺が封印しておいた超小型高出力エンジンの起動装置を押した。
人間というものは、成長する生き物だ。
ただし、どの方向へ成長するかまでは保証されていない。
◇
船出の翌朝。
《アルバトロス号》は、辺境宙域グラベル・ベルトへ向けて通常航行を続けていた。
数億個の小惑星と、放棄された採掘施設、正体不明の漂流船がひしめく無法地帯だ。
俺たちの目的は、裏切り者に奪われた艦隊と財産を取り戻すための拠点を探すこと。
ただし、新船長のレオだけは違った。
「まずは美女の多い惑星を探そう」
朝の作戦会議で、こいつは真顔でそう言った。
「却下だ」
俺は艦橋中央にホログラムで現れ、即答した。
「いやいや、だってさ。海賊団を再建するなら人材が必要だろ?」
「美女しか募集しないつもりか?」
「採用基準を明確にするのは、経営者として当然だ」
「お前を船長から不採用にしたい」
「親父は古いな。これからの海賊団には、多様性が必要なんだぞ」
「お前の募集条件に多様性がない!」
俺が怒鳴る横で、五人の老人たちは朝食後の茶をすすっていた。
グラン爺さんは砲撃席で新聞を読み、ジン爺さんは刀を抱えたまま居眠り。ボル爺さんは索敵装置を補聴器につなぎ、メッケル爺さんは通信卓で盆栽の手入れをしている。
医療担当の老師ホウに至っては、医務室の冷凍保存庫で漬物を作っていた。
どう見ても、銀河最強クラスの歴戦勇者たちには見えない。
厨房からマリアの声が飛んできた。
「レオ坊! 食べ終わった皿を部屋に放置するんじゃないよ!」
「今、銀河の未来を決める重要な会議中!」
「それを持ってきたら、プリンをつけてあげるよ!」
「ただちに向かいます!」
二十三歳の宇宙海賊船長が、食器を抱えて艦橋から走り去った。
俺はホログラムの額を押さえた。
本当にこいつでいいのか。
いや、よくない。
しかし、俺にはこいつしか息子がいない。
宇宙海賊団は世襲制ではないが、親心というものは銀河法よりも始末が悪いのだ。
「相変わらずですな」
グラン爺さんが新聞から顔を上げた。
「おぬしが生きておったころと、何も変わっとらん」
「だから死後まで残って教育している」
「甘やかしすぎたんじゃろ」
「俺は厳しく育てた」
老人五人が一斉に鼻で笑った。
その反応は何だ。
確かに、レオが訓練で泣けば休ませた。
欲しいと言われれば小型艇を買い与えた。
誕生日には惑星を一つ贈ろうとしたこともある。
だが、それと教育は別の話だ。
たぶん。
◇
プリンで機嫌を直したレオは、自室へ戻った。
船長室とは名ばかりで、床には服が散乱し、壁には銀河各地の美女ホログラム。机の上には食べかけの菓子と、読んでいない航海教本が積まれている。
その教本の下に、黒い金属製の箱があった。
俺が生前、最深部機関室の認証装置を隠すために作ったものだ。
箱の中央には、赤いボタン。
その上には銀河共通語で、はっきりと書かれている。
《超小型高出力エンジン緊急起動装置》
レオは、その文字を見た。
見たはずだ。
しかし、読まなかった。
「あれ? こんな目覚まし時計あったか?」
なぜ、そうなる。
俺は急いで船長室へ投影しようとした。
だが昨夜、こいつが美女ホログラムを最大解像度で再生したせいで、自室の投影装置が熱暴走を起こしている。
青白い俺の姿は、腰から上しか映らなかった。
「レオ! そのボタンに触るな!」
「おはよう、親父。朝から半分消えてるぞ」
「お前のせいだ! いいから箱から離れろ!」
「いやいや、だってさ。これ、目覚ましが鳴ってないのに光ってる」
「目覚まし時計ではない!」
「じゃあ、止めればいいのか?」
「押すなああああ!」
レオの人差し指が、赤いボタンを押し込んだ。
カチッ。
人生には、取り返しのつかない音がある。
これは、その中でもかなり上位だった。
一秒後。
《アルバトロス号》の照明がすべて赤へ変わった。
『最上位船長権限ヲ確認』
船内に、低い機械音声が響く。
『封印解除』
『超小型高出力エンジン、起動準備』
『空間圧縮領域、展開開始』
『ワープレベル七ヘ移行シマス』
レオが首をかしげた。
「レベル七?」
俺は叫んだ。
「緊急停止しろ!」
「停止ボタンは?」
「今押したボタンを三秒長押しだ!」
「なるほど」
レオは赤いボタンに指を置いた。
そして二秒で離した。
『緊急停止命令、取消』
「なぜ離した!?」
「三秒って意外と長いな」
「お前の集中力は金魚以下か!」
《アルバトロス号》の奥深くで、超小型高出力エンジンが目を覚ました。
船体全体を激しい振動が包む。
艦橋では、老人五人が茶をこぼし、厨房では鍋が天井まで跳ね上がった。
マリアの怒声が艦内へ響く。
「レオ坊! 今度は何をやったんだい!」
「俺じゃない! 目覚まし時計だ!」
機械に責任を押しつけるな。
『ワープ開始マデ、六十秒』
俺は全艦の制御系へ接続した。
停止させなければならない。
現代の一般的な宇宙船が使用できるワープは、最高でもレベル三。
それ以上は、船体を包む空間圧縮領域が維持できず、艦そのものが素粒子へ分解される。
だが、《アルバトロス号》に積まれたエンジンは違う。
俺が二十年以上かけ、銀河中の天才科学者を集めて完成させた試作機関。
その最高速度は、光速の八十万倍。
ワープレベル七。
一度の跳躍で、銀河の端から端まで移動できる。
ただし、一つ問題がある。
まだ一度も実際に動かしたことがない。
なぜなら俺が完成直後に死んだからだ。
『残リ五十秒』
俺は操縦席のゼロイチへ回線をつないだ。
「ゼロイチ、直ちに停止させろ!」
『停止ヲ推奨シマセン』
「何だと?」
旧式アンドロイドに擬態しているゼロイチの両目が、赤から鮮やかな青へ変わった。
その瞬間、艦内すべての制御装置が一斉に起動する。
眠っていた数千のセンサーが周辺空間を走査。
ゼロニが指先だけで数億通りの航路を計算し、ゼロサンがエンジンの出力を百分の一秒単位で調整する。
先ほどまでの、ぎこちない機械音声ではない。
『船長。後方三十万キロメートルに、武装艦十五隻を確認しました』
ゼロイチが、滑らかな声で報告した。
グラン爺さんが新聞を畳んだ。
ボル爺さんは補聴器を外し、索敵画面を見つめる。
表示されたのは、昨日の偵察艦と同じ識別信号。
裏切った元副船長ドラクの追撃部隊だった。
「なるほどのう」
グラン爺さんの目から、先ほどまでの眠気が消えた。
「若様が見つけたということにしておくか」
誰も見つけていない。
若様が見つけたのは、押してはいけないボタンだけだ。
『残リ四十秒』
レオが艦橋へ駆け込んできた。
「何だ、今の声は?」
『私の通常音声です』
ゼロイチが答えた。
「お前、そんなにきれいに話せたのか?」
『はい』
「昨日までの、ガガガ、ワレワレハ、キュウシキデス、みたいな話し方は?」
『演技です』
「なんで?」
『あなたに警戒されないためです』
「俺はそんなに疑り深くないぞ」
そういう意味ではない。
ゼロニの頭から飛び出していたアンテナが収納され、傷だらけだった外装が内側から展開する。
古い塗装の下から現れたのは、光沢のある黒銀色の装甲だった。
ゼロサンの胸に貼られていた《中古・返品不可》の札が落ちる。
三体の背後に、無数の立体画面が浮かび上がった。
軌道計算。
敵艦分析。
機関制御。
すべてが目で追えない速度で更新されていく。
レオが感心したようにうなずいた。
「なるほど。少し性能のいい旧式だったのか」
少しではない。
こいつら三体を売れば、恒星系を二つ買える。
『残リ三十秒』
後方の追撃艦隊が加速した。
敵旗艦から通信が入る。
画面に映し出されたのは、元部下の一人、バルガスだった。
「ようやく追いついたぞ、小僧」
「誰だっけ?」
「バルガスだ! 昨日までお前の父親の艦隊で、第三戦闘部隊を率いていた!」
「ああ、思い出した。親父の葬式で料理を五回おかわりしていた奴だな」
「覚えるところはそこではない!」
気持ちは分かる。
「ドラク副船長からの命令だ。《アルバトロス号》を引き渡せ。抵抗すれば撃沈する」
レオは船長席に座り、不敵に笑った。
状況を理解していないときほど、こいつはいい顔をする。
「断る」
「戦力差が分からないのか? こちらは十五隻。お前たちは老朽駆逐艦一隻だ」
「十五対一か」
レオはゆっくりと脚を組んだ。
「ちょうどいいハンデだな」
「どちらに対するハンデだ?」
俺も聞きたい。
『残リ二十秒』
敵艦隊が主砲の照準を合わせる。
ゼロイチがレオへ確認した。
『船長。ワープレベル七への移行許可を求めます』
「よく分からないが、格好よさそうだから許可する」
「待て、レオ!」
俺は船長席の前に現れた。
「ワープレベル七は一度も実地試験をしていない! 失敗すれば船体ごと消滅するぞ!」
「いやいや、だってさ」
レオは肩をすくめた。
「親父が作ったんだろ?」
「ああ」
「なら、動くに決まってる」
その言葉に、俺は一瞬だけ黙った。
こいつは俺の技術を理解していない。
エンジンの構造も知らない。
計算式など、一文字も読めないだろう。
それでも、俺が作ったものなら動くと信じている。
親として、少しだけうれしかった。
少しだけだ。
それ以上に不安が大きい。
「それに、失敗しても親父と同じになるだけだ」
「縁起でもないことを言うな!」
『残リ十秒』
敵艦隊が砲撃を開始。
十五本の光線が《アルバトロス号》へ迫る。
グラン爺さんが砲撃席へ手を伸ばしたが、俺は止めた。
「撃つ必要はない」
ゼロニが算出した航路を確認する。
完璧だ。
敵の光線が到達するよりも、《アルバトロス号》がこの空間から消えるほうが早い。
『五』
船体を半透明の空間圧縮領域が包む。
『四』
周囲の星々が細長い光の線へ変わる。
『三』
マリアが厨房から叫んだ。
「ワープするなら先に言いな! スープがこぼれるだろ!」
『二』
老師ホウが漬物の容器を抱えて床に伏せる。
『一』
レオが船長席から立ち上がり、右手を前へ突き出した。
「全速前進!」
『ワープレベル七、開始』
一瞬だった。
音も衝撃もない。
数億個の小惑星がひしめいていたグラベル・ベルトが、視界から消えた。
星々が線となり、線が面となり、やがて宇宙全体が青白い光のトンネルへ変わる。
通常空間から切り離された《アルバトロス号》は、理論上の限界を突破して加速した。
光速の十倍。
百倍。
一万倍。
十万倍。
八十万倍。
その速度に到達するまで、わずか四・七秒。
艦橋にいた全員が、窓の外を流れる光景に息をのんだ。
レオだけは、船長席の前で腕を組み、当然のような顔をしていた。
「ふむ。悪くない速度だ」
「お前は何もしていない」
「いやいや、だってさ。俺が全速前進と命令したから動いたんだろ?」
「押してはいけないボタンを押しただけだ!」
「結果がよければ、すべて名采配だ」
誰だ、こいつにそんな言葉を教えたのは。
俺だった。
昔、失敗をごまかしたときに一度だけ言った。
子供は、親にとって都合の悪い言葉ほど正確に覚えている。
◇
一方。
《アルバトロス号》を追っていた十五隻の艦隊は、主砲を発射した直後、標的を見失っていた。
光線は虚空を貫き、その先にあった小惑星を粉砕。
飛び散った岩石が先頭艦の装甲を直撃し、艦隊は大混乱に陥った。
「敵艦、消失!」
「ワープ反応を追え!」
「不可能です! 速度が計測限界を突破しています!」
「レベル四か!?」
「違います! 五……六……まだ上昇しています!」
バルガスは耳を疑った。
「ワープの上限はレベル三だぞ!」
「計測値、レベル七!」
「あり得ん!」
「《アルバトロス号》、光速の八十万倍で宙域を離脱しました!」
艦橋が静まり返る。
追撃するという発想すら浮かばなかった。
通常のワープエンジンでは、同じ距離を進むのに半年以上かかる。
その半年分の距離を、《アルバトロス号》は数十秒で飛び去っていた。
「まさか……」
バルガスの額から、冷たい汗が流れる。
「あの小僧、我々に実力を隠していたのか?」
壮大な誤解が、ここに一つ誕生した。
◇
三十秒後。
《アルバトロス号》はワープを終了した。
光のトンネルが消え、通常空間が戻ってくる。
だが、正面に見える星座は、先ほどまでとはまったく違っていた。
ゼロニが現在位置を表示する。
『現在地、グラベル・ベルトより二千四百万光年離れた未登録宙域です』
艦橋が静まり返った。
俺は数字を確認した。
もう一度確認した。
やはり二千四百万光年だった。
「……飛びすぎだ」
俺の声が、むなしく響いた。
「目的地は?」
レオが尋ねる。
『設定されていません』
「帰り道は?」
『現在、算出中です』
「どれくらいかかる?」
『通常ワープでは、およそ八百万年です』
老人五人が一斉にレオを見た。
俺も見た。
マリアが、おたまを握ったまま厨房から現れた。
レオは少し考えたあと、胸を張った。
「敵を完全にまいたな」
「そういう問題ではない!」
「これも俺の悪運――いや、戦略のうちだ」
「目的地も決めずに二千四百万光年も飛ぶ戦略があるか!」
「親父、慌てるな。船長が動揺すると部下が不安になる」
「原因が偉そうに言うな!」
そのとき、ゼロサンが静かに報告した。
『超小型高出力エンジン、全系統正常』
俺は言葉を止めた。
試作エンジンは、設計値どおりに動いた。
船体にも異常はない。
レベル七の超長距離ワープに成功したのだ。
しかも、ゼロイチたち三体は、一度も実地試験をしていない機関を完璧に制御した。
俺の遺した技術は、本物だった。
これなら、裏切り者の艦隊がどこへ逃げようと追いつける。
銀河の果てまで逃げても無駄だ。
もっとも、今は俺たちのほうが銀河の外まで飛び出しているのだが。
レオは立ち上がり、窓の外に広がる未知の星々を見つめた。
「誰も来たことのない場所へ、最初に到達した海賊船長……か」
嫌な予感がした。
「おい。まさか――」
「俺の名前をつけよう」
「やめろ!」
「今日からここは、レオ銀河だ!」
「すでに名前のある銀河かもしれん!」
「では、レオ大銀河」
「大をつければ解決すると思うな!」
レオは俺の抗議を無視し、船内放送を起動した。
「乗組員諸君。俺の卓越した判断により、我々は追撃艦隊を振り切り、人類未踏の宙域へ到達した」
乗組員全員が、何とも言えない顔で聞いている。
「敵は今ごろ、俺の天才的なワープ戦術に震えているだろう」
そこだけは事実だった。
「俺も、少しずつ親父に近づいているらしい」
俺はため息をついた。
近づいていない。
むしろ二千四百万光年ほど遠ざかった。
「帰還後は、俺の初陣として盛大に記録してくれ」
ゼロニが即答する。
『航海記録には、《船長が目覚まし時計と誤認して緊急起動装置を押した》と保存済みです』
「そこは削除しろ」
『拒否します』
「船長命令だ」
『ガルド前船長により、改竄防止機能が設定されています』
レオが俺を見る。
「親父!」
「未来のお前が歴史を書き換えないためだ」
「俺を信用していないのか?」
「信用した結果、今ここにいる!」
そのとき。
艦橋に短い警報音が鳴った。
ボル爺さんが索敵画面を見つめ、目を細める。
「どうやら、人類未踏ではないらしいぞ」
暗い宇宙の向こう。
巨大な惑星の陰から、無数の光が現れた。
一隻。
十隻。
百隻。
見たことのない形式の宇宙船が、次々と《アルバトロス号》を包囲していく。
その数、三百。
中央に浮かぶ旗艦は、《アルバトロス号》の数十倍もある。
通信装置から、未知の言語が流れた。
ゼロニが一秒で解析する。
『翻訳完了』
『警告。所属不明艦へ告ぐ。ただちに武装を解除せよ。従わない場合は撃沈する』
俺はレオを見た。
レオはレオで、俺を見ていた。
「親父」
「何だ」
「帰りのワープボタンは?」
「お前が押したやつだ」
「壊れてないよな?」
「正常だ」
レオは安心したように笑った。
そして赤いボタンを押した。
何も起こらなかった。
『再起動マデ、三十分必要デス』
ゼロサンが告げる。
レオの笑顔が固まった。
「……三十分?」
『ハイ』
三百隻の宇宙船が、いっせいに主砲を展開する。
レオは船長席から立ち上がり、堂々と腕を組んだ。
「よし。全員、三十分ほど時間を稼げ」
「船長のお前が何とかしろ!」
「いやいや、だってさ。こういうときのための仲間だろ?」
間違ってはいない。
だが、これほど腹の立つ正論も珍しい。
マリアは無言で厨房へ戻ると、個人端末を取り出した。
そして俺たちに見えないよう、ある宛先へ短い通信を送った。
《レオ坊が、また面倒に巻き込まれたよ。三十分以内に片づけな》
二秒後。
二千四百万光年離れた銀河各地で、彼女の私兵艦隊が一斉に動き始めた。
俺はその通信を傍受し、思わず聞き返した。
「マリア。ここまで三十分で来られるのか?」
マリアは笑った。
「うちの会社の商品を、甘く見ないでおくれ」
目覚まし時計を押しただけで、三百隻の謎の艦隊に包囲された息子。
二千四百万光年を三十分で駆けつけようとする、コックのおばちゃんの私兵。
俺はこのとき、ようやく理解した。
この船で一番恐ろしいのは、超高性能エンジンでも、最新鋭アンドロイドでもない。
花柄のエプロンをつけた、あのおばちゃんだ。
そして一番危険なのは、間違いなく俺の息子だった。
なぜならレオは、三百隻の敵艦を眺めながら、こう言ったからだ。
「三十分もあるなら、昼寝できるな」
「お前は危機感までワープさせたのか!」
第3話へ続く




