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第2話 目覚まし時計を押したら、光速の八十万倍で逃げ出した

第2話 目覚まし時計を押したら、光速の八十万倍で逃げ出した


俺の息子、レオ・レイヴンには悪い癖がある。


知らないものを見つけると、まず触る。


触って反応がなければ、叩く。


それでも動かなければ、とりあえず一番大きなボタンを押す。


幼いころから何度も注意してきた。


五歳のとき、空気清浄機だと思って船内消火装置を作動させた。


十二歳のとき、ゲーム機だと思って小型艇の主砲を発射した。


十八歳のとき、花火の発射装置だと思って惑星間ミサイルの安全装置を解除した。


そして二十三歳になった今。


こいつは目覚まし時計と間違えて、俺が封印しておいた超小型高出力エンジンの起動装置を押した。


人間というものは、成長する生き物だ。


ただし、どの方向へ成長するかまでは保証されていない。



船出の翌朝。


《アルバトロス号》は、辺境宙域グラベル・ベルトへ向けて通常航行を続けていた。


数億個の小惑星と、放棄された採掘施設、正体不明の漂流船がひしめく無法地帯だ。


俺たちの目的は、裏切り者に奪われた艦隊と財産を取り戻すための拠点を探すこと。


ただし、新船長のレオだけは違った。


「まずは美女の多い惑星を探そう」


朝の作戦会議で、こいつは真顔でそう言った。


「却下だ」


俺は艦橋中央にホログラムで現れ、即答した。


「いやいや、だってさ。海賊団を再建するなら人材が必要だろ?」


「美女しか募集しないつもりか?」


「採用基準を明確にするのは、経営者として当然だ」


「お前を船長から不採用にしたい」


「親父は古いな。これからの海賊団には、多様性が必要なんだぞ」


「お前の募集条件に多様性がない!」


俺が怒鳴る横で、五人の老人たちは朝食後の茶をすすっていた。


グラン爺さんは砲撃席で新聞を読み、ジン爺さんは刀を抱えたまま居眠り。ボル爺さんは索敵装置を補聴器につなぎ、メッケル爺さんは通信卓で盆栽の手入れをしている。


医療担当の老師ホウに至っては、医務室の冷凍保存庫で漬物を作っていた。


どう見ても、銀河最強クラスの歴戦勇者たちには見えない。


厨房からマリアの声が飛んできた。


「レオ坊! 食べ終わった皿を部屋に放置するんじゃないよ!」


「今、銀河の未来を決める重要な会議中!」


「それを持ってきたら、プリンをつけてあげるよ!」


「ただちに向かいます!」


二十三歳の宇宙海賊船長が、食器を抱えて艦橋から走り去った。


俺はホログラムの額を押さえた。


本当にこいつでいいのか。


いや、よくない。


しかし、俺にはこいつしか息子がいない。


宇宙海賊団は世襲制ではないが、親心というものは銀河法よりも始末が悪いのだ。


「相変わらずですな」


グラン爺さんが新聞から顔を上げた。


「おぬしが生きておったころと、何も変わっとらん」


「だから死後まで残って教育している」


「甘やかしすぎたんじゃろ」


「俺は厳しく育てた」


老人五人が一斉に鼻で笑った。


その反応は何だ。


確かに、レオが訓練で泣けば休ませた。


欲しいと言われれば小型艇を買い与えた。


誕生日には惑星を一つ贈ろうとしたこともある。


だが、それと教育は別の話だ。


たぶん。



プリンで機嫌を直したレオは、自室へ戻った。


船長室とは名ばかりで、床には服が散乱し、壁には銀河各地の美女ホログラム。机の上には食べかけの菓子と、読んでいない航海教本が積まれている。


その教本の下に、黒い金属製の箱があった。


俺が生前、最深部機関室の認証装置を隠すために作ったものだ。


箱の中央には、赤いボタン。


その上には銀河共通語で、はっきりと書かれている。


《超小型高出力エンジン緊急起動装置》


レオは、その文字を見た。


見たはずだ。


しかし、読まなかった。


「あれ? こんな目覚まし時計あったか?」


なぜ、そうなる。


俺は急いで船長室へ投影しようとした。


だが昨夜、こいつが美女ホログラムを最大解像度で再生したせいで、自室の投影装置が熱暴走を起こしている。


青白い俺の姿は、腰から上しか映らなかった。


「レオ! そのボタンに触るな!」


「おはよう、親父。朝から半分消えてるぞ」


「お前のせいだ! いいから箱から離れろ!」


「いやいや、だってさ。これ、目覚ましが鳴ってないのに光ってる」


「目覚まし時計ではない!」


「じゃあ、止めればいいのか?」


「押すなああああ!」


レオの人差し指が、赤いボタンを押し込んだ。


カチッ。


人生には、取り返しのつかない音がある。


これは、その中でもかなり上位だった。


一秒後。


《アルバトロス号》の照明がすべて赤へ変わった。


『最上位船長権限ヲ確認』


船内に、低い機械音声が響く。


『封印解除』


『超小型高出力エンジン、起動準備』


『空間圧縮領域、展開開始』


『ワープレベル七ヘ移行シマス』


レオが首をかしげた。


「レベル七?」


俺は叫んだ。


「緊急停止しろ!」


「停止ボタンは?」


「今押したボタンを三秒長押しだ!」


「なるほど」


レオは赤いボタンに指を置いた。


そして二秒で離した。


『緊急停止命令、取消』


「なぜ離した!?」


「三秒って意外と長いな」


「お前の集中力は金魚以下か!」


《アルバトロス号》の奥深くで、超小型高出力エンジンが目を覚ました。


船体全体を激しい振動が包む。


艦橋では、老人五人が茶をこぼし、厨房では鍋が天井まで跳ね上がった。


マリアの怒声が艦内へ響く。


「レオ坊! 今度は何をやったんだい!」


「俺じゃない! 目覚まし時計だ!」


機械に責任を押しつけるな。


『ワープ開始マデ、六十秒』


俺は全艦の制御系へ接続した。


停止させなければならない。


現代の一般的な宇宙船が使用できるワープは、最高でもレベル三。


それ以上は、船体を包む空間圧縮領域が維持できず、艦そのものが素粒子へ分解される。


だが、《アルバトロス号》に積まれたエンジンは違う。


俺が二十年以上かけ、銀河中の天才科学者を集めて完成させた試作機関。


その最高速度は、光速の八十万倍。


ワープレベル七。


一度の跳躍で、銀河の端から端まで移動できる。


ただし、一つ問題がある。


まだ一度も実際に動かしたことがない。


なぜなら俺が完成直後に死んだからだ。


『残リ五十秒』


俺は操縦席のゼロイチへ回線をつないだ。


「ゼロイチ、直ちに停止させろ!」


『停止ヲ推奨シマセン』


「何だと?」


旧式アンドロイドに擬態しているゼロイチの両目が、赤から鮮やかな青へ変わった。


その瞬間、艦内すべての制御装置が一斉に起動する。


眠っていた数千のセンサーが周辺空間を走査。


ゼロニが指先だけで数億通りの航路を計算し、ゼロサンがエンジンの出力を百分の一秒単位で調整する。


先ほどまでの、ぎこちない機械音声ではない。


『船長。後方三十万キロメートルに、武装艦十五隻を確認しました』


ゼロイチが、滑らかな声で報告した。


グラン爺さんが新聞を畳んだ。


ボル爺さんは補聴器を外し、索敵画面を見つめる。


表示されたのは、昨日の偵察艦と同じ識別信号。


裏切った元副船長ドラクの追撃部隊だった。


「なるほどのう」


グラン爺さんの目から、先ほどまでの眠気が消えた。


「若様が見つけたということにしておくか」


誰も見つけていない。


若様が見つけたのは、押してはいけないボタンだけだ。


『残リ四十秒』


レオが艦橋へ駆け込んできた。


「何だ、今の声は?」


『私の通常音声です』


ゼロイチが答えた。


「お前、そんなにきれいに話せたのか?」


『はい』


「昨日までの、ガガガ、ワレワレハ、キュウシキデス、みたいな話し方は?」


『演技です』


「なんで?」


『あなたに警戒されないためです』


「俺はそんなに疑り深くないぞ」


そういう意味ではない。


ゼロニの頭から飛び出していたアンテナが収納され、傷だらけだった外装が内側から展開する。


古い塗装の下から現れたのは、光沢のある黒銀色の装甲だった。


ゼロサンの胸に貼られていた《中古・返品不可》の札が落ちる。


三体の背後に、無数の立体画面が浮かび上がった。


軌道計算。


敵艦分析。


機関制御。


すべてが目で追えない速度で更新されていく。


レオが感心したようにうなずいた。


「なるほど。少し性能のいい旧式だったのか」


少しではない。


こいつら三体を売れば、恒星系を二つ買える。


『残リ三十秒』


後方の追撃艦隊が加速した。


敵旗艦から通信が入る。


画面に映し出されたのは、元部下の一人、バルガスだった。


「ようやく追いついたぞ、小僧」


「誰だっけ?」


「バルガスだ! 昨日までお前の父親の艦隊で、第三戦闘部隊を率いていた!」


「ああ、思い出した。親父の葬式で料理を五回おかわりしていた奴だな」


「覚えるところはそこではない!」


気持ちは分かる。


「ドラク副船長からの命令だ。《アルバトロス号》を引き渡せ。抵抗すれば撃沈する」


レオは船長席に座り、不敵に笑った。


状況を理解していないときほど、こいつはいい顔をする。


「断る」


「戦力差が分からないのか? こちらは十五隻。お前たちは老朽駆逐艦一隻だ」


「十五対一か」


レオはゆっくりと脚を組んだ。


「ちょうどいいハンデだな」


「どちらに対するハンデだ?」


俺も聞きたい。


『残リ二十秒』


敵艦隊が主砲の照準を合わせる。


ゼロイチがレオへ確認した。


『船長。ワープレベル七への移行許可を求めます』


「よく分からないが、格好よさそうだから許可する」


「待て、レオ!」


俺は船長席の前に現れた。


「ワープレベル七は一度も実地試験をしていない! 失敗すれば船体ごと消滅するぞ!」


「いやいや、だってさ」


レオは肩をすくめた。


「親父が作ったんだろ?」


「ああ」


「なら、動くに決まってる」


その言葉に、俺は一瞬だけ黙った。


こいつは俺の技術を理解していない。


エンジンの構造も知らない。


計算式など、一文字も読めないだろう。


それでも、俺が作ったものなら動くと信じている。


親として、少しだけうれしかった。


少しだけだ。


それ以上に不安が大きい。


「それに、失敗しても親父と同じになるだけだ」


「縁起でもないことを言うな!」


『残リ十秒』


敵艦隊が砲撃を開始。


十五本の光線が《アルバトロス号》へ迫る。


グラン爺さんが砲撃席へ手を伸ばしたが、俺は止めた。


「撃つ必要はない」


ゼロニが算出した航路を確認する。


完璧だ。


敵の光線が到達するよりも、《アルバトロス号》がこの空間から消えるほうが早い。


『五』


船体を半透明の空間圧縮領域が包む。


『四』


周囲の星々が細長い光の線へ変わる。


『三』


マリアが厨房から叫んだ。


「ワープするなら先に言いな! スープがこぼれるだろ!」


『二』


老師ホウが漬物の容器を抱えて床に伏せる。


『一』


レオが船長席から立ち上がり、右手を前へ突き出した。


「全速前進!」


『ワープレベル七、開始』


一瞬だった。


音も衝撃もない。


数億個の小惑星がひしめいていたグラベル・ベルトが、視界から消えた。


星々が線となり、線が面となり、やがて宇宙全体が青白い光のトンネルへ変わる。


通常空間から切り離された《アルバトロス号》は、理論上の限界を突破して加速した。


光速の十倍。


百倍。


一万倍。


十万倍。


八十万倍。


その速度に到達するまで、わずか四・七秒。


艦橋にいた全員が、窓の外を流れる光景に息をのんだ。


レオだけは、船長席の前で腕を組み、当然のような顔をしていた。


「ふむ。悪くない速度だ」


「お前は何もしていない」


「いやいや、だってさ。俺が全速前進と命令したから動いたんだろ?」


「押してはいけないボタンを押しただけだ!」


「結果がよければ、すべて名采配だ」


誰だ、こいつにそんな言葉を教えたのは。


俺だった。


昔、失敗をごまかしたときに一度だけ言った。


子供は、親にとって都合の悪い言葉ほど正確に覚えている。



一方。


《アルバトロス号》を追っていた十五隻の艦隊は、主砲を発射した直後、標的を見失っていた。


光線は虚空を貫き、その先にあった小惑星を粉砕。


飛び散った岩石が先頭艦の装甲を直撃し、艦隊は大混乱に陥った。


「敵艦、消失!」


「ワープ反応を追え!」


「不可能です! 速度が計測限界を突破しています!」


「レベル四か!?」


「違います! 五……六……まだ上昇しています!」


バルガスは耳を疑った。


「ワープの上限はレベル三だぞ!」


「計測値、レベル七!」


「あり得ん!」


「《アルバトロス号》、光速の八十万倍で宙域を離脱しました!」


艦橋が静まり返る。


追撃するという発想すら浮かばなかった。


通常のワープエンジンでは、同じ距離を進むのに半年以上かかる。


その半年分の距離を、《アルバトロス号》は数十秒で飛び去っていた。


「まさか……」


バルガスの額から、冷たい汗が流れる。


「あの小僧、我々に実力を隠していたのか?」


壮大な誤解が、ここに一つ誕生した。



三十秒後。


《アルバトロス号》はワープを終了した。


光のトンネルが消え、通常空間が戻ってくる。


だが、正面に見える星座は、先ほどまでとはまったく違っていた。


ゼロニが現在位置を表示する。


『現在地、グラベル・ベルトより二千四百万光年離れた未登録宙域です』


艦橋が静まり返った。


俺は数字を確認した。


もう一度確認した。


やはり二千四百万光年だった。


「……飛びすぎだ」


俺の声が、むなしく響いた。


「目的地は?」


レオが尋ねる。


『設定されていません』


「帰り道は?」


『現在、算出中です』


「どれくらいかかる?」


『通常ワープでは、およそ八百万年です』


老人五人が一斉にレオを見た。


俺も見た。


マリアが、おたまを握ったまま厨房から現れた。


レオは少し考えたあと、胸を張った。


「敵を完全にまいたな」


「そういう問題ではない!」


「これも俺の悪運――いや、戦略のうちだ」


「目的地も決めずに二千四百万光年も飛ぶ戦略があるか!」


「親父、慌てるな。船長が動揺すると部下が不安になる」


「原因が偉そうに言うな!」


そのとき、ゼロサンが静かに報告した。


『超小型高出力エンジン、全系統正常』


俺は言葉を止めた。


試作エンジンは、設計値どおりに動いた。


船体にも異常はない。


レベル七の超長距離ワープに成功したのだ。


しかも、ゼロイチたち三体は、一度も実地試験をしていない機関を完璧に制御した。


俺の遺した技術は、本物だった。


これなら、裏切り者の艦隊がどこへ逃げようと追いつける。


銀河の果てまで逃げても無駄だ。


もっとも、今は俺たちのほうが銀河の外まで飛び出しているのだが。


レオは立ち上がり、窓の外に広がる未知の星々を見つめた。


「誰も来たことのない場所へ、最初に到達した海賊船長……か」


嫌な予感がした。


「おい。まさか――」


「俺の名前をつけよう」


「やめろ!」


「今日からここは、レオ銀河だ!」


「すでに名前のある銀河かもしれん!」


「では、レオ大銀河」


「大をつければ解決すると思うな!」


レオは俺の抗議を無視し、船内放送を起動した。


「乗組員諸君。俺の卓越した判断により、我々は追撃艦隊を振り切り、人類未踏の宙域へ到達した」


乗組員全員が、何とも言えない顔で聞いている。


「敵は今ごろ、俺の天才的なワープ戦術に震えているだろう」


そこだけは事実だった。


「俺も、少しずつ親父に近づいているらしい」


俺はため息をついた。


近づいていない。


むしろ二千四百万光年ほど遠ざかった。


「帰還後は、俺の初陣として盛大に記録してくれ」


ゼロニが即答する。


『航海記録には、《船長が目覚まし時計と誤認して緊急起動装置を押した》と保存済みです』


「そこは削除しろ」


『拒否します』


「船長命令だ」


『ガルド前船長により、改竄防止機能が設定されています』


レオが俺を見る。


「親父!」


「未来のお前が歴史を書き換えないためだ」


「俺を信用していないのか?」


「信用した結果、今ここにいる!」


そのとき。


艦橋に短い警報音が鳴った。


ボル爺さんが索敵画面を見つめ、目を細める。


「どうやら、人類未踏ではないらしいぞ」


暗い宇宙の向こう。


巨大な惑星の陰から、無数の光が現れた。


一隻。


十隻。


百隻。


見たことのない形式の宇宙船が、次々と《アルバトロス号》を包囲していく。


その数、三百。


中央に浮かぶ旗艦は、《アルバトロス号》の数十倍もある。


通信装置から、未知の言語が流れた。


ゼロニが一秒で解析する。


『翻訳完了』


『警告。所属不明艦へ告ぐ。ただちに武装を解除せよ。従わない場合は撃沈する』


俺はレオを見た。


レオはレオで、俺を見ていた。


「親父」


「何だ」


「帰りのワープボタンは?」


「お前が押したやつだ」


「壊れてないよな?」


「正常だ」


レオは安心したように笑った。


そして赤いボタンを押した。


何も起こらなかった。


『再起動マデ、三十分必要デス』


ゼロサンが告げる。


レオの笑顔が固まった。


「……三十分?」


『ハイ』


三百隻の宇宙船が、いっせいに主砲を展開する。


レオは船長席から立ち上がり、堂々と腕を組んだ。


「よし。全員、三十分ほど時間を稼げ」


「船長のお前が何とかしろ!」


「いやいや、だってさ。こういうときのための仲間だろ?」


間違ってはいない。


だが、これほど腹の立つ正論も珍しい。


マリアは無言で厨房へ戻ると、個人端末を取り出した。


そして俺たちに見えないよう、ある宛先へ短い通信を送った。


《レオ坊が、また面倒に巻き込まれたよ。三十分以内に片づけな》


二秒後。


二千四百万光年離れた銀河各地で、彼女の私兵艦隊が一斉に動き始めた。


俺はその通信を傍受し、思わず聞き返した。


「マリア。ここまで三十分で来られるのか?」


マリアは笑った。


「うちの会社の商品を、甘く見ないでおくれ」


目覚まし時計を押しただけで、三百隻の謎の艦隊に包囲された息子。


二千四百万光年を三十分で駆けつけようとする、コックのおばちゃんの私兵。


俺はこのとき、ようやく理解した。


この船で一番恐ろしいのは、超高性能エンジンでも、最新鋭アンドロイドでもない。


花柄のエプロンをつけた、あのおばちゃんだ。


そして一番危険なのは、間違いなく俺の息子だった。


なぜならレオは、三百隻の敵艦を眺めながら、こう言ったからだ。


「三十分もあるなら、昼寝できるな」


「お前は危機感までワープさせたのか!」


第3話へ続く

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