8話
研究所では、研究員が検疫が終わって持ち込まれた加工食品の分析に取り掛かろうとしていた。
ドラフト内で缶の蓋を開けると、強烈な異臭が漏れ出した。
「くさっ!?何これ!」
慌ててドラフトの扉を閉めても、異臭は室内に広がっていく。
「うわっ、無理!耐えられない!!」
においに敏感な研究員の1人がドアを開け、部屋から飛び出した。
「換気しろ、換気!」
「窓開けます!」
他の研究員達も慌てて換気に走った。すると、廊下を通りかかった職員が叫んだ。
「何これ、酒くさっ!?」
「小沢さん、助けてー!」
彼らは別室にいた、鼻炎持ちの研究員・小沢に助けを求めた。揮発成分を測定してもらったところ、強力なアルコール成分が検出された。
彼は結果を見て、言い淀みながら仲間に伝えた。
「もし一口でも食べたら、みんな潰れて病院行きじゃないですか……。本当に食べ物なんですか?これ」
彼らはE国の食品は地球人には危険だと報告した。E国からの食品の輸入は、現実的ではない。議員達は頭を抱えた。
4ヶ月後に各国の首脳をE国に招いて晩餐会を開く事が、報告を聞く前日に決定されていたからだ……。
若木の方は隔離された環境で、植木鉢で育てられていた。晩餐会の1週間前に、その木は芳香の強い果実をいくつもつけた。それから数日経つと果実は大きくなり、マンゴーのような大きさになった。最初は緑色だったのに濃い紫色になり、まるで一粒のブドウのような見た目に変化していた。
果実がついた段階でE国へ連絡をすると、その見た目が採り時だと返答が返ってきていたため、研究員達は恐る恐る採取した。研究室で、防塵マスクをつけた研究員が果実を半分に切ると、赤く艶々とした果肉が現れ、甘いにおいが室内に漂った。
(これ、晩餐会までに解析が終わらない気がする……)
彼らは出席予定の議員に、果物は口にしないよう、拝み倒すように頼み込んだ。飲み物は地球側の交渉により、あえて水のみ。食べ物は地球側から一品ずつ持ち寄った、ビュッフェ形式としていた。各国の参加予定者は国会一のうわばみ議員を選出していたものの、心配で仕方なかったのだ。会場近くには、各国の医療チームも念のため待機させていたほどだ。
そして、晩餐会の日がやってきた。




