7話
初めてE国へ大臣とSP、報道陣が降り立った時。
その国の第一印象は、〈緑あふれるメルヘンな場所〉だった。
見る限り全ての家が庭付きで、近くには等間隔に芳香を放つ果樹が植えられている。住民は微笑みを絶やさない。街にはたくさんの絵が置いてある。褐色の頬に白いバーコードが付いている事だけが、彼らの目には異質に映った。
「街にはたくさん絵があって、素敵な国ですね。芸術が盛んなんですか?」
大臣がにこやかな表情で案内をしてくれている外交官に話しかけると、怪訝な表情をされた。
「え?……これは案内板です。ここが現在地になります」
「……話し言葉は似ていても、文字体系は全く異なるようですね」
日本人の目には、E国の文字は図形と崩し文字が混ざった美しい模様にしか見えず、案内板や店の看板は絵画のように見えていた。
E国上層部との会談は終始和やかに行われた。大臣が手土産を手渡すと、E国からは苗木と加工食品を手渡された。
「この苗木は我が国の国樹です。果実は食用としても、燃料としても利用できる、ありがたい存在なのです」
「ありがとうございます」
大臣は嬉しそうに破顔したが、内心算段していた。
(こちらの人間には良くない物質などが検出されたら恐ろしい。まずは検疫と。研究所へ分析依頼を入れなければならないな……)
(文字でやり取りできないのは困る。幼児用の音声図鑑を次回の手土産にしよう。甥っ子が持っていたのはひらがな表が付いていたはずだ)
大臣達の帰国後。首脳は1人で手土産を眺めながら、果実酒を煽っていた。
反物や、繊細な細工が施された伝統工芸品の品々……。
『日本……か。良いものを持っているようだな』
彼の唇の片方が吊り上がった。次に、上空から小型ロボットに撮影させた写真を眺めた。
(ちょうど、農耕地が欲しいと思っていたところだった。だが、滅ぼしてから利用するよりも、人材も利用する方が良さそうだ)
その手土産が後々、最悪の結果を防いだ救いの糸となった事を、大臣は知らない。




