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遭難

まあぶっちゃけると、予想はしていた。いや元を辿ればこんな外れの方まで逃げてきた私が悪いわけであって、ケイトが完全に道を熟知していない可能性を考えられなかった私が悪いわけであって、そもそも帰り道を聞かなかった私が悪いわけであって、要するに私が悪いということだ(自己完結)。



「……。」



まあ、仕方ないな。転生したばかりの頃は普通に野宿してたし、野宿っていっても食事は要らないから単に寝るだけだし、こういうのに関しては個人的にそこまでの嫌悪感は抱いてない。



「ま……まさか野宿するつもりですか!?」



だが彼はそうではないらしい。冗談じゃないとばかりにケイトは私の様子を見てそう聞いてきた。その表情はかなり焦りが見えており、わざとらしく周囲を見渡している。結構奥深くまで走ってきたし、今日中の帰還は諦めた方がいい。



「もうすぐ日が暮れるよ。そんな状態で歩くよりも休んだ方がいい。」

「しょしょしょ……正気ですか!?」



体力的に満身創痍とまではいかずともこれ以上の消耗は避けたい手前、街に戻って休みたい気持ちはわかるが当てもなく暗がりを歩く方が危険だ。



「はあ……わかりました。」



状況が読めたらしいケイトが漸く折れ、その場に腰を下ろして溜め息を溢す。私が引っ張ってしまったせいとはいえ、ここまで露骨に嫌そうな素振りをされるとちょっとムカつくな。申し訳ないという気持ちがあるから黙ってはいるが、別行動で勝手に帰ってもらっても大丈夫だからね?


「仕方ないですね。貴女がそうしろというのなら、従いますよ。悔しいですが僕の実力が劣ってるのは事実ですし。」

【どうしよう……野宿なんてしたことないよ……。】


ケイトは強がってあくまでも着いて行くだけだと突っぱねてくるが、すぐさま本心が不安を訴えてきた。どうやら彼はこれまで野宿を経験したことがない箱入りの冒険者だったようで、どうしたらいいか分からないとばかりにその場で丸まった状態でただじっとしている。


「大体貴女が勝手な行動をするからこうなったんですよ!?全く、多少は責任を取って貰いたいものです。」

【真っ暗だし何も見えない……暗い……怖い……】



罵倒を重ねる表向きの発言と見事に反した彼の本心が気づいてくれと言わんばかりに呼び掛けてくる。こいつもあのボンボン魔法使いと同じ温室育ちで、サバイバルスキルについてはなんとあのエニー以下である。知識はあるんだろうがそれを実践でことごとく活かせない典型的なダメ男タイプだ。


あのエニーですら野宿は経験しているし、かなり危なっかしいものの自分よりも第一に他人を気遣えるよう奴だ。一人で蹲って泣き言を吐き散らかしているこいつよりは全然マシなのである。



私とて前世ではインドア派の人間だったものでキャンプとかそれらしいことは殆どしなかったが、それでも大まかに何をするべきかとか中途半端な無駄知識だけはある。


それに今の私は食事を取らずとも生きていけるし、なんなら《暗視》が発動しているお陰で体育座りしているケイトの姿も丸見えなのだ。


顔は見えないけど頭を膝の間に突っ込んで項垂れてるその姿は親に怒られいじけている小学生みたいでちょっと情けなく思える。



「……ちゃんと居ますよね?」

「…………居るよ。」


突然の生存確認に対し一瞬無視してやろうかと思ったが、後々何を言われるか分かったものでもないかという理性が働き返事をする。


「何ですかその間は。まさか無視してやろうなんて考えてませんよね。」

「ッナイヨー↑。ソンナコト考エテナンテナイヨー↓。」


あまりのご名答に思わず声が裏返りかけたが軌道修正はどうにか出来た筈だ。やり過ごせた気はしないけど、今すっごく心臓ドクドクしてる。今日一ヴァイブスの緊張感だわ(語彙力死亡)。


...にしてもこいつが時々見せるこの鋭い表情はなんなんだ。あまりの変わりように二重人格としか思えん。屑でヘタレだけど芯の太さはどっちの状態(?)でも変わってないから二重人格というよりもこっちが素だったりするのかな。


元々はハッキリ物をいう芯の通った屑だったけど、劣等感に苛まれ続けて殻に籠ってしまったのがこっち……ああ、それを二重人格っていうんだっけか?あれ、違ったかな。


暫く娯楽に触れてなかったからそこら辺の知識が飛んでたけど、二重人格あるあるの記憶喪失的なアレが見られなかったから恐らく二重人格ではないという結論で切り上げることにした。考えるだけ無駄だし何より面倒臭い。



【無視する気満々だったじゃないですか…………。】



彼は口にこそ出さなかったものの、どうやら私が一瞬無視しようとしたことには完璧に気づいているようだった。ヤベエ冷や汗止まらねえよこんなん。罪悪感がスゲエ(語彙力死亡)。


「ご……ごめん、一瞬それ考えてた。ちょっとした出来心でさ?あの、えっと……ごめん。」


「っ……!や、やっぱり僕を嵌めようとしてたんじゃないですか!!この鬼!悪魔!ひとでなし!モンスターめ!!」


素直に謝った結果、ほれみろと怒濤の悪口ラッシュを浴びせてくるケイト。ちゃんと返事はしたんだからそこまで責めることもないじゃないか、と悪態をつきながら。そして私はそもそも魔物であるということに心の中でツッコミを入れていた。

前回の後書きに不備があったので一部訂正しました。(´・ω・`)

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