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訪れた好機

『ギチイイイイイイイ!』


私のすぐ後ろで樹木がへし折る鈍い音と、不快感を募る《ジャイアントメルトピード》の耳障りな鳴き声(?)が響き渡る。


どうやら奴は目前に立ち塞がる木々を前に迂回などせず、武器の角で強引に壁(木)を突破しながら私に迫っているようだ。


(しつこいな全く!!)


ここまで仮定で話を進めているのも私が単純に振り向きたくないからであり、スキル通知が来ない以上これらも単なる憶測でしかないが。



『ギイイイイイイイ!』


大百足の鳴き声だけは相変わらず煩いほどよく聞こえる。……追われながら言うのもなんだが振り向きたくねえな。真後ろで凶器を見せつけてくる魔物がいるなんて考えたくもない。


元を辿れば同格を容易く仕留める馬鹿みたいな攻撃力を持った巨大な百足なんてものをpickしやがったガルゼンという奴が悪いんだ。帰ったら一回あの馬鹿をしばいてやろうかマジで。



『ジギャアァァァァァァァァァァ!』


「うるせぇぇぇぇぇ!!」



大百足の鳴き声に苛まれながらも暫く走っていたところ、そろそろ山道に入りつつあるのか徐々にデコボコした斜面が増えてきたように感じた。内心焦りつつも岩が刺さったかのように突きだしている不安定な足場を飛び越えている。


「よっ……と!」


だが一歩間違えれば足を挫いて時間を取られかねないし、人の身で山肌を登るというのは中々骨が折れるものだ。



だがこの程度の斜面など時間稼ぎにもならないのか、《ジャイアントメルトピード》は身体をひっくり返す要領で上へと高く伸ばし、山肌を登るこちらに対してかなりのスピードで着いてきているようだ。


おまけにその体勢のためか気色悪い腹とその両脇にくっつき蠢いている無数の脚を見せつけられることになった。空中でカサカサと空を泳ぐように蠢くその姿は何とも気持ち悪い。虫相手は暫くお腹一杯だよ……依頼にあった《閻魔コオロギ》とかもう知らんて。もう帰りたいんよ私は。



「お願いだから帰ってくれぇ!!《ダークスピア》!!」


私は内心泣きながらこちらに晒された大百足の腹目掛けて《ダークスピア》を放つ。背中が堅い奴って下とか内部とか脆いっていうじゃん?



──ああ、結局変わらなかったよ。弾かれはしなかったけど脚がもげることもなかったし、なんなら未だピンピンしてるよあの百足。見た感じ魔法防御なんてなさそうな見た目だけど、もしかしたら物理に頼ってきたツケが今来やがったんじゃねえか。


今まで散々戦ってきて感じたことだけど、元々 《アインベル》は呪縛を中心に状態異常魔法に特化したトリッキーな絡め手で、物理で殴っている私の戦闘スタイルとは真逆なんだこれが。


今まで格上相手に殴り合いで勝ってきたが、それも《ゾンビ》や《ゲノムシーカー》といったアンデッド部分を強く受け継いだスキルに物を言わせてきただけで、一般的な《アインベル》の戦い方とは大きく逸れているんだろう。


少なくとも《血のドーピング》で無理矢理格上に食らいついてどうこうみたいな種族ではなさそうだ。どうやら私が新しい境地を見いだしてしまったようだ。



『ギチチチチチチチチチチチチ!』


《ジャイアントメルトピード》が大きく首(?)を振りかぶって私を壁ごと貫こうとしてきたようだ。私はありったけの力を込めて真上に飛び、奴の背中を伝って背後へ避難しどうにか回避する。


大百足の角が岩を諸ともせず山肌に深々と突き刺さる。それでもなお引っこ抜く素振りを見せず、更にトンネルでも造る勢いで前進を続けている。


苔のような植物が群生する岩肌が高温に晒され、打たれた鉄のように真っ赤に染まっているのが遠目でもわかる。



抜けないのなら突き抜ければいいって……もしかしてコイツは脳味噌筋肉(のうきんあたま)かなにかなのかな?いつの間にか角に刺さってた鳥頭も何故かいなくなってるし、馬鹿なのは間違いない。そもそも虫に脳味噌なんてものがあるのかも甚だ疑問だけどさ。




とりあえず……後ろを取るようで申し訳ないけど、結局今がチャンス以外の何物でもないんだよな。それに私は一刻も早くこの虫ラッシュを終わらせたい。後ろに更に虫が控えてることなんて知らない。私の休息のためにくたばってくれたまえ。



魔法を放つ右腕にありったけの力を込め、《ハイダーク》の球体を生み出す。それも一つじゃない。《ハイダーク》の威力をもった無数の弾幕を浴びせるつもりでお見舞いしないとあの百足は沈まない。



[ 《バーチカルダーク》を習得しました。]

[ 《ダークネス》を習得しました。]



加えて周囲に気を配り、着実にそのエネルギーを味方につける。闇属性の力という厨二病感満載なものが纏われているのか、深く沈むような感覚に襲われる。



[ 《シャドウビーコン》を習得しました。]



そして手元で揺らめき、黒い光を放つそれを《ジャイアントメルトピード》へと思いきり叩きつける。凄まじい炸裂音と共に、大百足の堅い甲殻がバキリと砕けるような轟音で周囲の音が僅かに途切れたような気がした。




[称号.《災厄の根元》を習得しました。]

久々の投稿で酷く文章が拙くなってしまった……新作もよろしやす!!\(。・ω・。)/

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