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灼熱の大百足

「いくらなんでもっ……滅茶苦茶じゃねえかこんなの!!」


「《ジャイアントメルトピード》は絶対に撤退しない生き物ですから……正直こうなるのもわかってました。」


「なら早く言ええええええっ!!」



後ろから猛スピードで迫ってくる灼熱大百足から逃げる私達。同格相手だから撤退する時間くらい稼いでくれるだろうと期待した私がバカだったわ。


体格差は小柄故の俊敏さでカバーするとはよく言われているが、《ジャイアントメルトピード》は一切の小細工を力で捩じ伏せてくる完全なパワータイプであり、引き際を間違えれば同格以上の相手でも致命傷になりかねない。ワンランク上の私でも攻撃を受ければ一溜まりもないだろう。



『ヂヂヂヂヂヂヂ!!!』


「うわあっ!!」


大百足の数えきれない脚に取られたのか、ケイトがその場で転んだ。そこを逃さず《ジャイアントメルトピード》が自慢の角を前に押し出し、ケイトへ突進する。



「《ダークスピア》ッ!!」

『ヂヂィィィィィィィィィィィィィィ!!』


私はすぐさま《ダークスピア》を大百足に向かって振るった。向き直りながらの牽制の為、そこまでの威力は見込めないがケイトを起こすくらいの時間なら稼げる筈だ。大体こういう脳筋な奴は魔法攻撃に対する防御は薄いと相場は決まっているのだ。


「ぼさっとするな!」

「ひえええっ!!はいぃ!!」


必死に立ち上がるケイトを急かしつつ大百足の様子を窺うが、一瞬動き止めただけですぐに追いかける体勢へ変わる。


──スキル通知はこない。要するにあの太陽の如く輝く角だけがあいつの武器であり、それ以外は特に気にすることはないということだ。リスクを考えれば最悪二手に分かれて逃げたっていい。


その際は私が追われる役を引き継がなきゃいけないけどね。身体能力の低い魔法使いのケイトが請け負うには、こいつはあまりに危険すぎる。



「はあっ……はあっ……」



それにケイトも録な休息を取れていなかったのか既に息があがってしまっているようだ。原因は少なからず私にあるとはいえ、これじゃあエニーを背負っているのと殆ど大差ない状況だな。


ったく……結局私がやるしかないじゃんか。



「レンさん!?」


「ちょっと離れてろ!!」



私はその場でピタッと止まった後、巻き込まれぬようすぐさま高くジャンプして、宙返りの体勢で大百足の上を取る。突拍子のない行動でケイトが驚いていたが意に介さずこちらのやることに集中した。



「《ハイダーク》!!」



手元で黒い玉を生成し、奴の頭部目掛けて思い切り叩きつけた。《ハイダーク》は大百足の頭にぶつかると同時に弾け、煙を伴った爆発を起こした。



『ギチェェェェェェェ!!!』



手応えはあったが効き目があったかは怪しいな……爆発の衝撃にぐらつきこそしたが、気を取り直したかのように無数の脚をくねらせて再び疾走を始めたのだ。一応角を巻き込むつもりで叩き込んだ筈だが、角は無事どころか録なダメージになってなさそうだ。


煩わしそうな声こそ上げてはいるが構わずケイトと私を同時に追っている。せめてケイトを逃がせればとも思ったがあいつの目線は今、確実に彼にも向けられている。



「……《デモニア》!!」


頭が駄目なら次は脚だ!いや、百足だから何処に撃ってもそうそう変わらないから結局頭になるけど、次に手元で肥やした臓物の爆弾を投げつけて様子を確かめてみる。


このスキルには《呪縛》による様々な状態異常が見込めるから、《ハイダーク》とは全く違った結果が期待できるはずだ。その場で眠ってでもいてくれたら解決するんだけど……



『ギィィィィィィ……』


臓物爆弾が大百足の目前で爆発を起こし、ヤツの身体の一部が黒ずんだ血の色に染まった。止まることこそ無かったものの、《ハイダーク》を撃った時とは全く別の反応を見せているのを何となく察せる。


忌々しそうに全身からギチギチという不快音を鳴らしながら、その目線も私の方へ移っているようだ。



「……こっちだクソ百足!!」

『アギィィィィ!!!』



どうやら挑発が功を奏したらしく、道を大きく外れた動きをした私の真後ろを《ジャイアントメルトピード》が追いかける。ケイトからなんとか引き離せたようで安心したが、ゴキブリに次いでこの百足という虫ラッシュは結構精神に堪える事態だ。


一応モンスターだし触れないことはないけど、見ていていい気分は全くもってしないな。寧ろこういうパワーでゴリ押してくる奴は状態異常を絡めた妨害系の(アインベル)からすれば戦いたくない部類に入る。


《ハイダーク》も《ダークスピア》も大したダメージにならなかったのに、今更思うが勝ち目とかあるんだろうか?


大した妨害スキルも習得してないし、これまで幾度となくやって来た物理戦法もあいつの角と固い外殻のせいで効き目なくてこっちが不利なんだよな。


おまけにあの鉄屑ゴキブリにすら効き目無かった攻撃が果たして格上の百足に入るのか……



『ギチェェェェェェェ!!!!』


今になって囮になったことを後悔した私の後ろを、角を前に押し出した大百足が容赦なく追いかけてくる。引き受けてしまったものは仕方ないと割り切って、ひとまずどう戦おうかを考えることにした。

第93部のタイトルに不備があった為編集致しました。真面目に1日丸々放置してしまった……


こんな私の小説でもいいと思ってくれた方は評価やブックマークをしてくれたら嬉しいです。

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