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錬金術師ケイト

───


とは言え流石に街中で殺り合う訳にもいかず、ケイトの案内によってとある場所にたどり着いた。そこは街から少し外れたところにあるコロッセオのような建物で、その老朽化具合から近年ではあまり使われていないように感じる。


戦場となる内部は資料で見た決闘場そのもので、老朽化が進んでいるとはいえかなり広々として頑丈そうだ。



あらかた周囲を見渡した後、《アンカーゴーレム》を従えるケイトと向かい合う。話が通じないと思っていたが、意外とこういうところはキッチリしているんだなあ。



「僕の研究の為……絶対に勝って見せます。」



ケイトの独り言を無言で聞き流し、エニーにゴングを頼むために目配せする。すぐに反応した彼女が二人の様子に問題がないと見て、頷いたのが分かった。



「そ……それでは!始めっ!!」



エニーの合図と共に、まずは《アンカーゴーレム》から距離を取る。ケイトも遅れることなくゴーレムに飛び乗って指示を出しているようだった。そういやこれってケイトごとぶっ倒さないといけないのかな。



「先手必勝でいきます!」


『ゴオオオォ……』



《アースガンドレット》

〈《弩雷》の気質によって腕を硬化させ、防御力を大幅に上昇させる。また腕を使った攻撃のダメージを格段に上げる。〉


スキル通知と共に《アンカーゴーレム》の腕に土が付着したと思えば、それは一気に固まりそのまま不自然な形になってくっついた。スキルの内容見て分かったけど《弩雷》の弩って土のことかよ。ありゃあ明らか雷系のスキルじゃないし、まあ、うん、そういうことだよな……。



「そのまま接近してください!」


『オオオオオ……』



《アンカーゴーレム》が両腕を使った四足歩行でこちらに向かってくる。その動きは人間というよりゴリラに近い気がするが、それでも……いや、だからといった方がいいか中々に速い。



「──おっと!」



ノーモーションで飛んでくる振りかぶりを避け、勢いを利用しての《ダークスピア》を奴の貧弱な下半身に向かって放つ。岩で造られた身体はまあ硬く、私の体勢が不安定だったのもあってほんの少し脚を掠める程度だったが、それにしても効かなすぎな気がする。



『ゴオオオォン……』



《滅光線》

〈自身のエネルギーの大半を使って放つ必殺光線。必ず殺すとは言っていないが当たれば重症は避けられない。〉



ふと《アンカーゴーレム》の顔に当たる歪な空洞に光が籠る。その光は徐々に強くなっていき、岩肌の身体が熱せられたかのようなオレンジ色へと変わっていった。明らかに不穏な《滅光線》の準備なのだろうが、大事な命が掛かっているだけあって不用意に近づけない。



「発射!!」


『オオオオオオオオオオ!!!』



顔が吹き飛ぶくらいの勢いで《アンカーゴーレム》の顔から光線が放たれる。見た目は細いが、すぐ横に飛んで距離を取った筈の私が熱さを感じるほどに高温のレーザーが闘技場の壁を焼ききった。



……あんなもんがエニーに直撃でもしたら即死だぞ。あまり《滅光線》を撃たせないように立ち回らないといけないかもなぁ。



(それなら近づいて攻めるっきゃないな。)



《アンカーゴーレム》はそれなりに速いが脚回りはそれほど良くはない。腕と顔が肥大化した人間みたいな姿で、上半身に対して下半身は貧弱と呼べるほど細く大振りの攻撃が多い。



《ロックバレット》

〈魔力で生成した石礫(いしのつぶて)を相手に向けて飛ばす攻撃。〉



ズドン、と四つん這いになって姿勢を低くした《アンカーゴーレム》の背中から幾つもの石が勢いよく飛んでくる。《滅光線》でてっきり動きが止まってるかと思ったが、このくらいはやってのけるってか!!



「ぐっ……!」



右腕を盾に《ロックバレット》を凌ぐが、圧倒的な物量にやや押されて攻撃に中々踏み切れないでいる。手を使わない攻撃ならこの状況でも出来るが、接近は許してくれそうにない。



─スキル──

物理スキル

《噛みつき》

《ヘッドバット》

《カースクロウ》

──────

魔法スキル

《ポイズンマーカー》

《ハイダーク》

《血のドーピング》

《吐血攻撃》

《デモニア》

《呪縛の風》

《デスペル》

《ダークスピア》

─────


[デッドレコード]を開き、今のスキルでどう動くかを考える。この状況で出来るのって精々《吐血攻撃》くらいじゃないか?


まず《デモニア》と《ダークスピア》、《ハイダーク》は右腕頼りだからまず出来ないし、物理スキルは接近出来ない以上使えない。《呪縛の風》は全身を使うから防御から転じて使うにはちょっと難しい。



とすれば残るは《デスペル》になるのか。確かまだ使ったことはないが……どんな感じになるのか説明を頼む。


《デスペル》

〈周囲にありったけの憎悪を纏ったオーラをぶつける魔法。敵対するものすべてにあらゆる状態異常を無差別に振り撒くことで、自身に対する戦意を喪失させる。〉



オーラをぶつける……か。あのゴーレムに状態異常が効くかはさておいて、ケイトを黙らせることくらいは出来るだろうか。丁度石も止んだ所だ。ここぞとばかりに使わせて貰うとするか。



「ふう、《デスペル》!!」



私の黒い右腕から赤い筋が出来たと思えば、それは心臓のように不気味に脈打っている。特に状況はこれの他に変わった様子はないけど……振ればいいのか?それとも叩いてみるか?


私はしばらく考えた後、軽く腕を振ってみることにした。するとかつて《エイルドラゴン》を相手取った時に見た、黒い霧か煙がそこから吹き出した。



「なっ……なえっ!?えっ!!あああっ!!?」



風を纏った黒い霧に巻き込まれたケイトは必死に《アンカーゴーレム》にしがみつくも、その威力に耐えられなかったのかそのままゴーレムから落ちて地面に突っ伏すことになった。


《沈黙》

〈詠唱を必要とする魔法を発動することができなくなる。状態異常。会話も出来ない。〉


《昏睡》

〈短時間の意識不明に陥る状態異常。外傷が無ければ何事もなく回復する。〉



ああ……これが《デスペル》の効果か。今回私が黙れと思ったから《沈黙》が発動したのね。この前のボンボン貴族は火傷とか負ってたから、そんな重症にならずに済んで安堵している。

7/14.77話[メンバー衝突]に置いて加筆を行いました。

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