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金欠事情

──


「うう……二人分となるとやっぱり倍以上に跳ね上がりますよねぇ。」


「あ、えと、なんなら悪いし野宿するよ。なんなら慣れてるし……」



結局宿に着いたは着いたのだが、エニーは自分の財布の心許なさに憂いているようだった。この世界の通貨も知らなければ金銭感覚も分からないので何とも言えないが、単純計算二人分の部屋を取るとなればシングルの倍になるんだろうか。


前はパーティーを組んで、仲間と野宿していたのを目にしたが、もしかしたらあまり宿に泊まることをしなかったのかもしれない。いや、彼女の持ち家もあったし流石にそれはないだろ……ん?もしかしてあの家って実は空屋……?



これ以上考えるのは止めるか。うん。



「ダメです!絶対にそれはダメですから!レンさんだって女の子なんですよ!!そこらへん自覚してるんですか!?」


「でもない袖は触れないじゃん。」


「う……でも今の持ち金でも二泊はギリギリ出来ますから!今まで傷ついた分しっかり休んでください!」



それでも二泊かあ、と私は白目を剥いたような遠目で彼女に苦笑いしてみせる。宿泊費だけじゃなくて食費が掛かるとか絶対考えてないんだろうし、私に至れり尽くせり色々してあげようと無理していることは言うまでもなく理解できた。気持ちは嬉しいけど彼女が色んな意味で窮地に陥っているのは言うまでもなく……この街にいる以上私も働くしかないよねえ。



「なんだいお嬢さん、訳ありかい?」


「ええ……お金がちょっともちそうになくて。」



「ちょっ……だから私の事はいいんだってば!!野宿なんて今更気にすることなん───ムグッ!?」


エニーの手が抗議しようとした私の口をビンタする勢いで容赦なく塞いだ。その様子を見ていた宿屋のおばさんがじっと私の身体をなめ回すように見る。顔や服装、指先から靴まで余すことなく観察した末、結論が出たらしく彼女が頷いた。



「ああ、こちらの若いのは魔物の娘だね。うちはよく魔物のお客さんも泊まりに来るからよくわかるよ。こちらの暮らしに慣れない彼女達も大体おんなじような事を言うし、そこまでなら予想通りではあったんだけど……」



宿屋のおばさんはそう区切ってエニーの方を見た。その表情は少なからず彼女に関心があるように見えたし、決して突き放すような冷たい目ではなかったと思う。



「まさかねぇ……普通の女の子が魔物を連れてくるなんて夢にも思わないものさねえ。それもかなりのべっぴんさんときたもんだ。」


「あ……ああ、ありがとうございます……?」



感心したような口振りで彼女が続ける。彼女を連れてきた息子の母親みたいな反応な気もするが、あまり気に留めないでおこう。建前だとわかっていても、言われて嫌な気分はせず私としてはかえって反応に困る。誉められるのは慣れていないんだよ。



「こんな可愛い娘を野宿させるなんてとんでもないね!宿屋として放っては置けないし見切りつくまで一部屋貸してあげるよ!」


「ええっ!?それは流石に申し訳ないですって……」


「え、本当ですか!?」



宿屋のおばさんの言葉に何故か私よりエニーが反応した。自分の求めていた理想の回答を投げ掛けてくれた相手に魚のように食い付く彼女の姿は、やれ他人と言いながらもちょっとばかり恥ずかしいものだった。


ああ……尻尾出しちゃったなあこの娘。と思いつつも私はおばさんに申し訳なさそうな視線を送ることしか出来ず何も言えない。



「ああ商売相手に嘘をつくなんて卑怯なこと、あたしは絶対にしないさね。こんな可愛い子達を娘のように置いておけるなんて、あたしは幸せもんだねえ。」



彼女はうんうんと一人頷き感傷に浸っていた。いい人なのは間違いないがどこか距離が近いようにも感じる。エニーの失礼な態度を気にも留めていなさそうだな。



「取り敢えず料金は後払いで、この街のちゃんとした暮らしってのを叩き込んであげるからね!あと魔物ちゃんにはギルドのメンバーを通じて色々覚えて貰うから覚悟しておきな!!」


活気に道溢れた声で笑うおばさんに釣られて私も苦笑いながら笑みが溢れる。彼女の根っからの性格の良さが顕著に現れていて、なんとも言えない心地よさと安心感を得た気がした。



「それじゃあ……宜しくお願いします。名前はレンといいます。」



ここで引きずるように断っても好意を無下にするだけだと恩恵に預かることにしたのだ。



「見た目もそうだけど変わった名前だね。あたしはメンリルだよ。このローセ唯一宿の看板さ!!」



「私はエニーといいます!宜しくお願いします!」



宿屋のおばさん、メンリルさんは私達の自己紹介に大きく頷いたあと、真っ白な歯を見せつけるように満面の絵顔をしてみせた。

(。・ω・。)投稿頻度と質が落ちてきてるぅ……

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