《協力者》
【本来はもっと後で話しかけるつもりだったのだがな。それにしても順調に変化を重ねているようで、我自身のことのように嬉しく思うよ。】
《謎の声》が久しぶりに会った友達の母親みたいな事を口走る。ヤツがこれまで干渉してこなかったあたりそんな世話を焼くような人格をしているとは思えないが、久しぶりの再会と私の成長ぶりに驚いているのだろうか。
まあ【もっと後で話しかけるつもりだった】と言うに、ヤツからすればCランクなどとるに足らないと判断されているんだろうな。それでもいいと踏み切る何かがあるのか、それとも単純に働いて欲しいのだろうか。
【働く、か……まあ遠からずそうしてもらうといったところだな。】
当初から思っていたけどやっぱりこいつも私の考えが読めているようだ。脳内に直接言葉を叩き込んでくるヤツってこちらの思考を汲み取った上で話してくるから余計にタチが悪いんだよなぁ。
「黙っていても全部筒抜けですよ」と言われていい気分になるわけがない。寧ろ黙秘権を行使しがちな私からすれば時に地獄の所業と化す。
ヤツが私に何をしてほしいのかが見えてこないし、発言からして私がもっと高いランクに進化してから話しかけてくるつもりだったことは理解できる。だが、それだけなのだ。
理解できるだけで何をすればいいのかがいまひとつ想像できない。ランクの高いモンスター、イコール兵力と考えるなら何処かの戦争に駆り出されでもするのだろうか。
【ああ、この街に我の協力者が居るものでな。実際に我の腹心として働くであろう貴様と一度顔を会わせておくのも悪くないと思ったのだ。】
……成る程ね。私は《協力者》とやらに会いに行けばいいと。ヤツの協力者と聞いてあまりいい気はしないが、姿もなにも分からない《謎の声》の事を知る機会にもなるし、そういう点ではアリな選択かもしれない。
だがヤツ本人が《協力者》との接触を勧めてくるあたり、ソイツは少なからず《謎の声》から信頼されているということを意味する。それは《謎の声》の目的に沿った行動理念を持つランクの高い人、もしくはモンスターである可能性が高いということは想像に難くない。
とすれば少なくとも格上のB-ランク……発言を汲み取ってそれ以上と過程するとB.B+……最悪Aランクに乗る可能性だって否定はできない。この世界のAランクなどそうポンポン出てきてほしくないんだけどな……見たことはないが多分単体で世界を滅ぼせるレベルになるんだろう。
それが出来てしまう相手になど、ヤツの推薦とはいえ気軽に会いに行こうとは思えないけどなあ。最悪その場で答えを出せと言われた挙げ句、意にそぐわなければぬっ殺されるなんてこともあり得るからね。こういう事はなるべく慎重に決めないと。
【まあ我も色々と準備があるのでな……貴様一人にそう時間も掛けられぬ。一先ずは協力者とのコンタクトを確認しだいまた話すことにしよう。】
《謎の声》はそう話に区切りをつけたのを最後に聞こえなくなった。ブチっと切られた電話のような耳鳴りが残る感覚がする。個人的にはまだまだ聞きたいことが結構あったんだけどなぁ……。
協力するにもヤツのやり遂げたいことが見えてこないから何とも言えないし、今回の話ではその協力者の姿や名前はおろか、特徴になる要素すら話してくれなかった。
実質ノーヒントで探せとかちょっと鬼すぎやしませんかね……?
「……レンさん?」
「ふえ─────!?」
突如意識外からエニーが話しかけてきた。あまりにも急すぎてすっとんきょうな声を上げたわこの野郎。彼女の様子からしてさっきの会話が聞かれていたなんて事はなさそうだが、それがかえって彼女を不安にしてしまったのかもしれない。
まあエニーに聞こえてたら聞こえてたで大分問題なんだけどね。取り敢えずその《協力者》には一度会っておきたいかな。最悪遠目でチラッとみてヤバそうだったら即退散という流れでいいかもしれない。
「ずっとぼうっとしてたものですから……宿までもう少しなので、考え事はそちらでしませんか?」
「あ、うん。そうするよ。」
私はエニーに適当な相槌をして、これからどうするかを考えていた。
一先ず協力するしないに関わらず、この世界の状況や目的についてある程度知っておきたいというのがひとつの理由なのだが……流石に会話の通じない化け物を寄越してくるなんて事はないよね?
なんにせよ、いるとわかっているならこの街に留まって協力者を探すのが一番良いだろう。時間が掛かったとしても長く過ごせばこの街の風習とか色んな文化に触れられるのは間違いない。
……と明日からの動きについて頭でシミュレーションしながら私はエニーの後をついていった。
(。・ω・。)もぐふぅ……




