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似つかわしくない自分


『グオオオオオオオオオオオオ!』


「《呪縛の風》っ……」


細長い身体をくねらせながら突進よろしくブレスを吐いてくる《アンドロマ》に対し、こちらは敢えて攻めの姿勢をせず[デッドレコード]の通知のアドバンテージを活かすために目線を逸らさず、ただひたすら洞察する。



《ジュバの吐息》

〈癪気を含む息を吐き、対象に纏わりついて呪縛を付与する。〉


《腐食の息》

〈生命を侮辱する邪竜が吐く息。晒された植物は枯れ、生物は死に絶え鉄は錆びる。練度を上げれば種が栄えていた事実をひっくり返すほど強力になる。〉



《呪縛の風》を纏ってブレス系統のスキルや周囲の火の粉から身を守る。前者二つのスキルはアンデッドの身である私には効かないとも思ったが、あんな不穏なものを喰らってやる度胸や余裕もない。普通に《呪縛の風》で吹き飛ばしてやった。



「《ハイダーク》っ!」


『グオオオオオン!!!』


《バーチカルダーク》

〈複数の《ダーク》を纏めて放つ上級の魔法。〉



スキル通知と共に《アンドロマ》の周囲を取り囲むように複数の《ダーク》が現れた。威力重視の《ハイダーク》と物量特化の《バーチカルダーク》というわけか。



私は《ハイダーク》を手元に残し、咆哮と共に放たれた複数の《ダーク》を防ぐ盾に使った。消耗も幾らか少なく済むし、これなら何度こられても多分防ぎきれる。おまけに私はMPがほぼ無限であり、力押しの泥仕合ならばこちらに分があるといっても過言ではない。



これまでずっとアンデッドだと言っているうちに、自分の中であるひとつの仮説が立ったのだ。



その仮説というのは、自分が不死者アンデッドであることにより、自身は文字通り不死であるということ。それに付随してHPとMPが[デッドレコード]に表示されていないのと言われれば納得できる。圧倒的不死身、頭さえ無事なら何度でも蘇る。聞こえは悪いがきっとそういうことだろう。



(それでも痛いのは勘弁なんだけどね……。)



左手を添えるようにして、激痛に痙攣する右腕を(さす)った。ステータスの中でも防御力がダントツで高い私ではあるが、それが全くの無意味であるとでも言いたげに余裕で通してくるお相手。正直言って辛い。防御力ってんだからもっと防いでくれよ……




バトルマンガとかだとこういう展開はよくありがちだけど、その道程もなにも決して楽なもんじゃないんだなあとここに来て痛感することになるとは。もう帰りたい。出来ることならマイホームに帰りたいよ。夢だったオチはまだですか……?




『グオオオオオオオオオオオオッ!!!』



私の懇願を打ち消すように咆哮する《アンドロマ》。この咆哮で一気に現実に引き戻された感覚がした。衝撃によってぐわんと一度大きく頭を揺さぶられるような不快感、凶器の如く耳をつんざく轟音。じっとこちらを見据えるヤツの目まで、今となっては私に対する殺意や溢れ出る狂気を無理やり蛇の形に凝縮したような姿にも見える。



自分の正義のために悪を貫く……か。



なにはともあれ私はまだ死にたくはないし、ぐだぐだと長引かせようものならエニーの安否も分からなくなる。これ以上友達は失いたくないと決めた以上、ここであれこれ考えちゃ駄目なのはわかってる。わかってるはずなんだ。



だけど……格上を前にする時はいつも「絶対に無理だ」とか「逃げるのが優先」とかほざいては無駄に粘着して、安定を取ろうとして毎回痛い目を見ている。



実際その甘い考えがスバルを殺したことに違いはなく、それについては何度後悔しても悔い足りない。それと同時に自分の非力さを酷く実感した瞬間でもあったのだ。




……あんな出来事は私の前で二度起きてほしくない。



絵に描いたような展開もチートも覚醒も見込めないダメダメな私だけど、友達を守りたいという気持ちには偽りがないと言い切れる。ここに来てから人間やモンスターに敵視され続けた自分を、恩人だといって慕って助けてくれたエニー。さっきは邪魔だと撥ね除けてしまったが……彼女はもう一度受け入れてくれるだろうか。



『グオオオオオオオオオオ!!』



咆哮と共に再び複数の《ダーク》が放たれる。




受け入れてくれるか、なんて考えるだけ無駄だったな。私は自分の不甲斐なさとくだらなさに溜め息をついて《ダーク》を弾ききり、してやったりと《アンドロマ》へと向かい合った。


その自分の顔はきっと見るに耐えないほど不細工で、涙混じりで、主人公と呼ぶにはあまりにも醜いものだったかもしれない。



……それでもどこか、何故だかそんな自分が笑っているように感じたのだ。



私は自分のなかに湧き出る感情を剥き出しにして、感覚を失わないように全速力で走った。

(_。・ω・。)_文章力がないーたしゅけてー……



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