破壊を振り撒くもの
《氷輪》を凌ぐために我武者羅に腕を振るって何度も弾き返すがそれも完全とはいえなかった。先程よりも血が滴り落ち、防ぎきれなかった氷柱が脇腹や肩をナイフのごとく斬りつけてくる。
……もうかれこれ三十くらいは防いだと思うが、まだ止む気配は見えない。MPお化けかよアイツ。あの一発一発にも当然MPは消費している訳で、流石に無限ともいかないはずなんだけどなぁ……ちょっと頭おかしいんじゃないのこの子。
『グアァァァァァァアノッ!!』
「……ッ!」
守りが甘くなってたらしく私の左胸を、それもかなり内側の部分に氷柱が突き刺さった。氷だからそのうち溶けるだろうが……霜焼けか低温火傷のような冷たさと焼けるような痛みが同時に襲ってくる。これまで殴られ斬られ蹴られと負ってきたダメージとは違う。熱を奪われる感覚に、身体が自然に麻痺していくのがわかった。早く溶かさないとヤバいな……幸い身体を温めるスキルはある。
「はあっ……痛いな……。」
《血のドーピング》で全身に血を巡らせ、急激に体温を上げていく。あまり使いたくはないスキルだったけどこういう場面で出し惜しみしては結局意味がない。それにこれまでは部分的に能力を無理矢理上げるのに使っていたが、今回はそんな無理をしていない。寧ろ本来の使い方はこうなのかもしれないな。
「……荒れろ《呪縛の風》。」
左手を《イピリア》に向けて、自分の冷静さを取り戻すのを兼ねて《呪縛の風》を放った。私の左掌から深翠色の歪な風が放たれる。別にスキルは口上しなくてもよかったのだが、あくまでも自分の景気付けのためだ。それに《呪縛の風》そのものに呪いやその類いのものは含まれていない。
『ア“ァ“ァ“ァ“ァ“ァ“ァ“ァ“オッ!!』
風に煽られた《イピリア》が不快感を募らせてがなるような鳴き声を上げた。ランク差がないからお互いに警戒して一悶着してるのだろう。不死の私が有利か人質を取れるアイツが有利か、それすらもよくわからないくらいだ。
(まあ……いつも通りやればいいか。)
考えるのも馬鹿らしくなってきたところで、エニーの《ティリア》によって回復した腕を振るい爪を掲げるようにしてヤツに突き立てた。半分脅しでもう半分は自分への覚悟のつもりだ。
自分の両腕から心臓のように脈動するどす黒い塊を生成し、跳躍すると同時に《イピリア》に向かって投げつけた。黒い塊はヤツの身体に命中すると同時に破裂し、血のような液体が付着する。狙い通りだ。
『グアァァァァァァアノッ!!』
《デモニア》の臓物が付着している不快感からか、ヤツが忌々しそうな唸り声で吠える。液体が不自然に浮いているように見えるため、正確な位置がバレバレなのだ。これでもう姿を見失ったりすることはないだろう。
あとは……そうだな。エニーには回復に専念させてもらおうか。《ハイドラ》で目印を剥がされても困るし、そもそも火力がヤツを相手取るのに足りてない。
そう踏み込んだ私が《イピリア》の方を睨み返すと、何かのスキルの兆候らしくヤツが光を吸収しているようだった。その姿はまさにソー○ービームかなにかだ。これは一ターン溜めてらっしゃる。
《サンライトシュート》
〈光と熱を吸収した魔力の塊を拡散して放つ魔法攻撃。〉
……スキル通知からは火と光の力が関係しているようだ。普通に考えればまあ納得っちゃ納得で、逆に草タイプ要素は皆無なんだ。内容からしてわかる。どうみてもソーラー○ームです。はい。
(とりあえず防いdあっつ!!?)
こちらの気も知らず、《イピリア》が光を溜めて作った玉から四方八方滅茶苦茶なレーザーが放たれた。要領はさっきの《氷輪》と変わらない……がその一発一発が相当の熱を持っており、防ぐだけで焼けるような痛みが右腕を襲う。
「……回復を!!」
「ひいいいぃっ!!《ティリア》!《ティリア》!《ティリア》ァァァっ!」
エニーが座りこんだ状態で必死に背中にしがみつき、私の腕に《ティリア》を撃ってくれている。だがそれも《サンライトシュート》の前にジリ貧どころかほぼ無意味と化していた。
《ティリア》の効果は基より回復効果のある鱗粉を身体に付着させることで発動するのだが、私の身体に付着した瞬間かその前にレーザーによって焼き尽くされてしまっている。
私としては無意味とわかった瞬間に無駄だと伝えたかったのだが、必死に撃ってくれている彼女を無下にするのも悪いのと、あたふたしていて話を聞いてくれる状態じゃないということで諦めた。悲しくも彼女は自分の回復魔法が届く前に焼かれているということに気づかぬまま、MPがなくなるまでこの状態のようだ。
『ピギャアァァァァァァァッ!』
逃げ遅れたか、こちらを観察していた《キノボリトカゲ》の悲鳴が響き渡る。この戦いが終わったら更に追撃をしようとでも考えてたのだろうが、《サンライトシュート》の乱発を前にそれどころじゃなくなったらしい。
「どどど……どうしよう!逃げようレンさん!」
「……こ、これはまずいな。」
ふと周囲を見渡すと、《サンライトシュート》が直撃した木々が燃え広がったのか、いつの間にか山火事が起きていたのだ。
スランプうううう……きっついですぅぅぅ……




