覚悟の一転攻勢
かなり長く開けてしまってすみませぬ……スランプと課題に追われて(略)
『ザザシャアァァァ!』
こちらの殺気を読み取ったのか、《リザードフライ》が先陣切って飛び掛かってきた。噛みつこうと口を大きく開き、鋭い牙を見せつけてくる。獲物を怯ませるつもりなのだろうが、その手口は前のヤツで経験済みだ。
ヤツの喉奥目掛けて《ダークアロー》を放った。真っ直ぐ飛んだ黒い矢が《リザードフライ》の首を貫き、尾から抜けていった。
『ザッ……!!』
ヤツは体勢をふらつかせながらも墜落することなく飛んでいた。この一撃で沈まないのか……なんなら《ハイダーク》で爆発でもさせた方がよかったかな。
(うーん……やっぱり詰めが甘いよなあ。)
Dランクの集団相手に、思った以上に長引かせてしまっていたように感じていた。
どうやらこれまで同格以上との戦闘が多く、ごり押ししまくっていたためか格下相手にはどこか手を抜いてしまう悪い癖があったみたいだ。
自覚は全くしてなかったしそんなつもりは一切なかったはずなのだが、ランクが自分の中でひとつの判断材料になっていたというのは間違いない。格下だから多分負けないだろうという考えは一パーセントもないかと聞かれたら、馬鹿らしくイエスとは言えないだろうし、自分でも言い切りたくない。
その考えが戦いを長引かせている要因なのかもしれない。早いとこエニーを保護してやらないといけないのに、こんなところで足踏みしているようでは救えるものが手遅れになってしまうかもしれない。
僅かに唇を噛みしめて蜥蜴達を睨み付ける。私はもうこれ以上なにも失いたくはないんだ。自分が全部背負ってでも……友達を守ってみせる。
《鎌の舞踏》を習得しました。
[デッドレコード]のからスキル習得の通知が来ると同時に、自分の身体が少しだけ軽くなったように感じた。
恐らく新しいスキルの影響かなにかなのだろうが……舞踏ってダンスのことだよな。特別運動神経が良かった訳でもないしなんなら無縁だったくらいなのでかなり意外だった。
《鎌の舞踏》
〈身体能力を大きく向上させ、スキル発動中は身体の一部分が鎌のように鋭く変形する固有スキル。触れた相手を刈り取る呪われた舞踏。〉
スキル内容を見て《アインベル》にぴったりなスキルだと納得すると同時にちょっとツッコまずにはいられなかった。このスキルのお陰で身体が軽くなっているのは明らかだし、その点については一切問題はない。
だけどさ、変形ってなんだよ。あれか?もしかして私はロボットにでもなるのか?戦隊ものとかにでてくる合体ロボみたいななにかになるのか?私が鎌になるのか?鎌になって敵味方関係なく触れるヤツを切り刻むのか?要らないよそんな地雷みたいなクソスキル!!
あとこのスキルなんだけど……何故か知らないが固有スキルの枠に嵌まってたんですよ。要するにこのスキル、《忍び足》とか《気配感知》と同じ枠ってことなんですよね。あの……返品効きませんか?
触れただけで人を傷つける鮫肌とか鉄のトゲみたいな特性は望んでないんで、クーリングオフを所望したいのですが頂けませんかね?このままだとエニーどころか誰とも関われないぼっち確定ルートなんで……
『ザシャアァァァァッ!』
「オラァァァァッ!死ねえっ!!」
飛んできた《リザードフライ》にありったけの憎悪をぶつけるがごとく、右腕を大きく振りかぶってぶん殴った。顔面が酷く凹んで戻らなくなった状態でヤツは吹っ飛ばされ、数回バウンドした後木に衝突して動かなくなった。
「ふうっ……あと二体!」
《リザードフライ》を撃破して勢いづいた私は残る二匹をキッと鋭い目付きで睨む。最初からこうやっとけば良かったと少し後悔はしているが、防御寄りのステータスから徐々にバランス型強いては速攻アタッカーのような動きができるようになったのだろうと実感した。
『アーノッ!』
『ザシャア!!』
《間欠泉》
《ローリング》
こちらの《邪眼》を諸ともせず《クロザンショウ》が勢いよく転がってくる。おまけに回避されるのを嫌ってか丁寧に《間欠泉》で囲って壁まで造ってきやがった。
「……っ!!」
だが《間欠泉》が果たす役割はあくまでも壁だ。私を撥ね飛ばそうが大したダメージにはならないだろうし、恐らくさっきみたいに転がってくる《クロザンショウ》を飛ばしてぶつけてくるつもりだろう。
『ザザシャ!』
壁を飛び越えるが如く高くジャンプした私を転がった状態で追撃する《クロザンショウ》。空中での回避は出来ないが、それは相手だって同じ条件で戦ってる筈だ。
ここまでは予想通りだし、後は蜥蜴と不死者との根気比べといこうじゃない。
「《カースクロウ》っ!!」
『ザァァァッ!!』
私の右腕と《クロザンショウ》の皮膚がぶつかり合う。摩擦熱とぬめぬめした感触に不快感が募るが我慢する。ヤツの皮膚は滑りはすれども硬くはなく、鋭い爪によってまるでハムのようにスルスルと斬れていき、そのままお互い重力に従って着地した。
受け身もとれず地に伏す《クロザンショウ》の死骸に一瞥し、残るイグアナ野郎に目線を移した。
「……。」
『グアァァァァァァアノッ!!!』
私の視線を読み取った《イグアマリン》が激昂したのか、これまでになく殺気立った咆哮を上げて私を睨んでいた。
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