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蜥蜴の応酬

ふう……と一息ついて辺りを見渡すも、状況は変わらず蜥蜴供に囲まれてる状態でなにも解決はしていなかった。相変わらずこちらの様子を伺う《キノボリトカゲ》がちょっと距離をとったくらいの変化しかない。



「も、もうMPが……あと撃てて二発ですぅ……!」



エニーが変わり映えしない状況に弱音を吐きつつあった。さっきの《コキューリス》相手の時点で相当MPを使ってしまったらしく余裕がないらしい。



『ザザア!!』


ふと木の枝に尻尾を巻き付けていた《キノボリトカゲ》が声を上げて身体を揺らす。ベリベリとなにかを剥くような音とともに、白いなにかが勢いよく現れた。



白かったはずのソイツの皮膚が急速に明るい黄緑色へと変化し、茫然と様子を眺めている私達をはっきりと睨み付けていた。



《サンクチュアリザード》ランクC-

〈自然溢れる土地に住まう非常に珍しい蜥蜴であり、聖域を侵す者には容赦しない。自然の力を借りて悪なる存在を撃退する。


森の観察者と言われる《キノボリトカゲ》が森の危機を感じるとこの姿に至ると言われている。〉



……名前が変わった!というか進化したのかコイツ!しかもランクも私に肉薄するC-ランクじゃねえかふざけやがってコイツ!コイツめ!



【外なる地の小娘よ。貴様は我らの聖域を意図して破壊しようとしている訳ではあるまいな?】



──突然、頭の中に声が響いた。[デッドレコード]の声ではなく、最初に聞いた謎の声でもない。だが耳ではなく頭を揺らされるような感覚に目眩がする。



(くっ……誰だお前は!)


【我だ。貴様の目の前にいる。】



その声と共に進化したての黄緑蜥蜴が尻尾を伸ばして垂れ下がってきた。こちらの心の声を読めるのか、不気味にも言動をしっかり合わせられるらしい。心を読むスキルでも持っているのか……?



【ここ数日の間、聖域の破壊が目立っていたので監視してみたが、破壊が見える度に必ずと言って良いほど貴様と出会ったのだ……小娘。これを偶然と片付けるほどこの森も優しくはないぞ?】



どうやら蜥蜴さんの話によると、ここ数日で環境破壊が目立っていてその場にいたのが私だったものだから、聖域を壊したのはお前じゃねえのと私に問うているらしい。


勿論心当たりがない訳じゃない。だが私だって生きるか死ぬかの瀬戸際で周りの木のことを気にかけられるほど余裕があるわけない。私だって生きるのに必死なのだから仕方ないところもあると認めてほしい。まあ死んでたんだけどさ。うん。


【矮小な人間どもが造った機械の襲撃、生態系を破壊する寄生植物の生育……あまつさえ温厚なはずの黒竜すら暴れたというではないか。】


……私は蜥蜴が言う事件についてハッキリと覚えている。一つ目は勝手に爆発した身元不明のパンジャンドラムのことで、二つ目は土竜を操っていた食虫植物のことだ。因みにその二つのことも《エイルドラゴン》のことだって知らないから!勝手に暴れて勝手に戦わされたこっちの身になってくださいよ……!!



【ふむ……あくまでもしらを切るつもりなのか。確かに状況を見て貴様は巻き込まれたとも言えるかもしれん。だがその全ての出来事に関与しておきながら全く無関係と言うのは無理があるんじゃないのか?貴様とて実際枝を折っているだろうに。】



枝……といわれてハッとした。確か盗賊女と戦って《血のドーピング》を使ったあの時だ。あいつを引きずり下ろすかなんかするために枝を折った記憶は確かにあった。



「それは……本当にすみません。記憶にあります。」


【ふむ……しっかりと過ちを認める潔さは評価するぞ《アインベル》。だが貴様の動き次第によっては抑えられた被害もあったかもしれぬぞ。】



動き次第でって……こっちだって生きるのに必死っていってるじゃんかよ。私だって自分から森を壊すような野蛮なことはしないし、全部事故で済ましてくれれば楽なんだけどな。



【……貴様の真意はわかった。言動に矛盾はないため私からは不問とする。】



《サンクチュアリザード》の言葉が何処か含むような言い回しをしていたことを察知し、僅かに身体か身震いする。猛烈に嫌な予感がするというのと、大概こういう予感は最悪な形で的中するものなのだ。私は知ってる。



『ザザア!!』

「カナカナカナカナカナカナ……」

『ザギィィィィッ!』

『イグアァァァァ!』

『ギシィィィィィ!』

『ザザシャアァァァァ!!!!』



周囲の《キノボリトカゲ》達の鳴き声が歪に、狂暴なものへと変わっていく。元々空を飛んでいた《リザードフライ》を中心とし、姿の変わった蜥蜴達が一斉に私達を睨み付ける。



【あくまでも自分は悪くないという姿勢を貫く貴様の態度に怒る声も多くてな。行動の責任はとってもらうぞ?小娘よ。】


《サンクチュアリザード》はそう言い残して木の枝を飛び移って姿を消した。現在私の目の前には《リザードフライ》の他に進化したと見れる五体の蜥蜴達がいる。


《リザードフライ》ランクD

《カナスネーク》ランクD-

《モリクササハギン》ランクD

《イグアマリン》ランクD+

《ディノスレーター》ランクD-

《クロザンショウ》ランクD



《キノボリトカゲ》の進化体はムラがあるといっても全てDランクであり、エニーを庇いながら戦うのはまず無理だ。彼女の《ハイドラ》をものともしない《クロザンショウ》がいる以上火力としても使えないし、彼女に合わせて一緒に逃げる暇もない。



「……特訓は終わり。すぐに戻って。」


「そんな……」


「いいからいけ!死にたいの!?」



私は僅かに彼女のローブを右腕で切り裂き、強引に蜥蜴達と距離を取らせた。多対一が逆境とくるか多勢に無勢とくるかはわからないけどこれまでだって死ぬ気できたんだ。歯向かったことを後悔させてやる。

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