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私の姿と進化先


それから暫く泣き続け、落ち着いたところでエニーから服を返してもらった。傷だらけでボロボロだった筈の服が新品同然に縫われていて驚いたくらいだ。


謎の文字のような刺繍が施されており、赤一色が血を連想させる魔術師の厚手のローブ。膝の上辺りまでを覆うそれは少々厚手でありながら機能性は百点だといえるだろう。


《アインベル》の正式衣装としては遜色なく、これを着たままでも右腕の攻撃と防御に支障はなさそうなくらいしっかりと作られている。露出した部分はしっかりタイツで覆われていて、防寒具としてもちゃんと機能しそうだ。



(お……これが私の姿か。)



部屋に立て掛けてある鏡で全身を見ると、私の見た目年齢は転生前とそれほど変わりはなかった。むしろ転生前の鋭い目付きはしっかり受け継がれているみたいだ。


前世との違いといえば雪のような白髪(はくはつ)が背まで伸び、瞳が血のように真っ赤であることくらいか。あとは少し肌が色白く、人間と言い張るには生気が足りない肌の白さであるということ。白人というのもちょっと違って石膏か人形みたいな白さに近く、アルビノってわけでもない。本当に見た目が人離れしているんだ……めっちゃ言葉にしづらいんだけどさ。



(それでこの右腕だもんなあ……違和感しかないよ。)


自分の白肌にこの黒い右腕である。ローブを着用しているときならまだしも、脱いだときに違和感が浮き彫りになるであろうことはいうまでもない。



「やっぱり女の子ですもんね……ふふっ。」



私の様子を見ていたエニーがそう言ってクスクスと笑った。初め見た時は見た目年齢からして私より年下に見えたのだが、今の振る舞いはとても大人っぽく見える。私が元々アンデッドだったから、何も知らない子供か妹を持ったような気分になっているのだろうか。



「~~♪」


「……。」



今はエニーが陽気に鼻歌を歌いながら私の髪を櫛で整えてくれている。渡してさえくれれば自分でも出来るのだが、彼女の機嫌を損ねたくないという気持ちと、悪意がないから為すがままにされよう……と諦めることにしたのだ。



それでもちょっと暇だったので、これからの進化先を見ておくことにしようかな。



〔変化先を表示します。状況により強制変異する可能性のあるものについては強調表示します。〕


─────

《アインベル》ランクC

〈ペイン=プリンセス〉ランクB+

〈ハーメルン〉ランクB

〈ダークロード〉ランクB-

〈イビルアルラウネ〉ランクB-

《アビスワーム》ランクC+

─────


今回の進化先は各々が全く違った系列を想像させるためか、それなりに広い選択肢があるように見える。手っ取り早くBランク最上位になれるが、成長が打ち止めされる《ペイン=プリンセス》を筆頭にBランクの進化先が多い。因みに《アビスワーム》なんてもんは私の眼中にないよ、うん。



……それじゃいつもの通り解説を宜しく頼もうかな。



《ペイン=プリンセス》ランクB+

〈人々に苦痛と絶望を与えては愉悦に浸っていたとされる魔界の王女。更なる力と美貌を求めては、人魔問わず残虐な刑罰を与え続けていた。彼女曰くこの世で最も美しい表情は絶望である。〉



[進化条件.《絶望の霧》の習得、ATK200以上、BMP180以上]



……初っぱなから説明文の凶悪さに思わずすくんでしまった。あまり《ペイン=プリンセス》のステータスが語られてはいなかったものの、進化条件の攻撃力の数値とランクからして、コイツもれっきとした魔物であることを実感できる。


そしてなによりも、コイツには進化先のロックを表す《=》がついている。恐らくだがまだ進化を残している可能性が高いということだ。


私はこんなえげつない所業の果てにある進化先がロクな訳がないとこれ以上考えるのをやめた。まあラスボスになるんだったら《ペイン=プリンセス》を選んでみてもいいかもね(遠い目)。



《ハーメルン》ランクB

〈格下の魔物を意のままに操る笛を持ち歩き、辺境の街や村を破壊しに回っているとされる魔族。’笛吹く夜は国ひとつ’とも言われ逸話としても恐れられている。〉



[進化条件.BMP120以上、SPD90以上、《口笛(ホイッスル)》の習得]



これはまた凶悪なものをぶちこんできやがったな……進化条件のステータスそのものは《ペイン=プリンセス》に大きく劣り、Bランクとしてはかなり低い部類の筈だ。だが《ハーメルン》の真価は素のステータスなどではなく、笛吹男の呼び名がある通りの洗脳スキルにある。


こいつが文字通りB-ランク以下のあらゆる魔物を操れると仮定すれば、《エイルドラゴン》や《アビスワーム》などの災害紛いのモンスターを手中に収めることができるも同然だ。


《ハーメルン》もまた、魔王か参謀レベルのことを仕出かす高いランクのモンスターなのだと実感させられる。今はまだ決心がつかないかな。魔物を操れるってのは悪くないんだけどちょっと気が引ける。



《ダークロード》ランクB-

〈涅闇の気質に触れ続けて変化した騎士の成れの果て。自在に形を変えることの出来る武器を用いて縦横無尽の攻撃を繰り出す。物理攻撃のみならず、魔法も高いレベルでこなすことが出来る。〉



[進化条件.ATK120以上、DEF100以上、BMP100以上、SPD90以上]



ステータス的に目立った弱点がない、バランスタイプの進化先だな。だが言ってしまえばそれだけだ。勿論このステータスとランクがあれば殆ど問題もないだろうし、変形自在な武器があるというのは心強いに違いない。


だがそれだけなのだ。Bランクにあたる《ゾンビキマイラ》や《ペイン=プリンセス》のようなステータスの高さを感じさせないし、《ハーメルン》や《枯死の沼のヌシ》のようなスキルのトリッキーさもない。ステータスを均等にあげる指標にはなるかなというレベルだ。



今よりかはマシになるだろうし成り行きによってはこいつに進化するかもね。



《イビルアルラウネ》ランクB-

〈数多の呪いを蜜にして禍々しく育った人花。蜜を吸うほど花弁は大きく立派になるとされ、その姿は古来より人々を魅了してきた。身体のあらゆるところに呪いが凝縮されているため、触るのは勿論見るのも御法度である。〉



[進化条件.《邪眼》の習得.BMP100以上]



あっ……なるほどこれが呪い枠ってやつか。《ダークロード》や《ハーメルン》では語られなかった呪いを全面に押し出した進化先な気がする。まさか《アインベル》が植物みたいになるの?花になるの?え、ちょっとまって理解が追い付かないです助けてください。



……気持ちを落ち着かせて進化先と向き合い直す。正直なところどれを選んでも人類の敵ルートは避けられない気がするが、それでも《アビスワーム》以外はまだ人の身体を保ってそうだ。もしかしたらそれで選ぶしかないかもしれない。

評価とブックマーク30突破ありがとうございます!!(。・ω・。)b

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