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卵泥棒

《パンドラジャンホイール》の残骸が火の粉を雨のように散らしながら地面にガシャガシャと音を立てて落ちる。特にその火が燃え移ったりということはなく、放火事件みたいにならなくてよかったと心底安心している。


しかしこの世界にはあんな兵器みたいなやつがいるんだな……今回は自爆してくれて助かったけど、逃げられる確信がなかっただけかなり心臓に悪い体験をした気がした。


───────

名称.《スバル》

種族.《スネークバイトオウル》

Lv18

ランクD

状態.《通常》

HP74/74

MP47/63

Hexagram.《3》

ATK.45

DEF.39

BMP.52

SPD.70

───────


スバルのステータスも見る限りMPが削られてるだけでダメージは貰ってないみたいで本当によかったよ。


「クルルッ!」


スバルは「心配ない」と言いたげに私の頭の上に乗って翼を休める。HPは問題なさそうだがそれとは別に疲労してるのだろうと特に気にはしなかった。



────



「くそっ!!こんなところでアンデッドに鉢合わせるとか正気かよ!」


「正気もなにもあんたがトロいからでしょうが!」



あれから暫く森を歩いていると、かなり焦った様子の二人組と鉢合わせた。二人とも見た目年齢は二十代とかなり若そうに見える。


男はエニーのものよりも分厚い漆黒のローブを纏い髪の毛を含めた顔全体をフードで隠しており、その手には骨の装飾が施された杖を持っている。かなり動きづらそうな格好でありながら、まるでなにかから逃げるように焦っているようだった。


もう一人の女は盗賊のような身軽そうな服に身を包んでおり、腰にはギラギラと光る銀色のナイフを収納していた。


彼女の服装は茶色で統一されており、所々が網状に縫われた服装でありへそ、腋、太股という三大フェチを露出し、全面に押し出したようなあまりに無防備な格好である。私こんな服装できない恥ずか死する。


おまけに髪色も茶色なもんで、忍者みたいに木に扮してそうだなという勝手な先入観を植え付けられる。



そんな彼女だが、その両手には武器ではなく黒い楕円形の何かを抱えていた。形からして卵かなにか……なのか?




「ガラァァァァァァァァァァァァ!!!」


なんと二人組の後ろから、咆哮と共に漆黒のドラゴンが現れたのだ。肉食恐竜のように前足が退化した姿をしていて、エラのようなものが伸びた後頭部とシャープな顔つきが特徴のドラゴンだった。大きさもこれまで見たモンスターとは比べ物にならないサイズであり、周囲の木々と並ぶ程の体長を誇っている。



ヤツの翠色の瞳がギョロギョロと周囲を見渡している。あれは間違いなく正気じゃない。全てをぶち壊す気でいるヤツの目だ。


明らかこれまで見てきたヤツよりとんでもないモンスターが現れやがったな。とりあえず解説を頼みたい。



《エイルドラゴン》ランクC+

〈暗闇を好み、視力が衰えている代わりに聴力と嗅覚に優れた漆黒のドラゴン。邪悪な見た目に反して非常に温厚かつ無害であるが、産卵期には一転して凶暴になる。


《エイルドラゴン》の卵は美味であり、食用のみならずあらゆる方面で非常に価値のあるものであるが、それを取った瞬間全てをねじ伏せようと黒竜は暴れ狂い、永遠に盗人を追い詰めるために地を駆ける。〉




やはり格上……それもC+ランクかよ。様子からしてかなり怒っているのは言うまでもないが、その理由は恐らく盗賊の女が持っている楕円形の物、あれが卵なのだろう。ホント余計なことをしやがってという感じである。


C+ランク……前々から危惧してた《アビスワーム》と同格のモンスターか。サイズからくる威圧感がひしひしと伝わってくる。私は彼らと並走しながら《エイルドラゴン》の様子を伺うことにした。



《デスクロウ》

〈生命を破壊する癪気を纏った爪で相手を切り裂く物理攻撃。魔力の低いものを即死させることがある。〉


《エイルドラゴン》の爪が怪しく輝いたかと思えば、魔力を纏って伸びたそれで前方を切り裂きはじめた。鉤爪の形をした巨大な衝撃波が逃げる彼らを襲う。アレに当たっただけで即死する可能性があるのか……人間相手じゃ追加効果云々より衝撃波で沈みそうだけどね。



「ガラァァァァァァァァァァァァァ!!!ガァァァァァァァッ!!」


卵を取り返さんと咆哮を上げて暴れまわる《エイルドラゴン》。ヤツの咆哮と地団駄が小さいながら地鳴りを起こしていた。



無害設定何処行ったんだよ……これもうただの化け物じゃねえか。


「も……もうダメだカトレア……!疲れた……!!」


「弱音吐いてないで逃げるのよナギア!!アンデッドに喰い殺されるか《エイルドラゴン》に全身ズタズタにでもされたいの!?」


黒ローブの男、ナギアが息を荒げて自身の限界を訴えた。我が身可愛さが残って駄々をこねたり、他者の脚を引っ張ろうとするなどかなり自分勝手さが目立つ。



「これを持ち帰らないと二人まとめて首を撥ね飛ばされるってわかってんの!?そんなに疲れたってんなら勝手に休んでなさいよ雑魚が!!」


「そこまで言うことないだろ!!僕が死んだら今世紀最大の事件になるんだぞ!!僕のパパに掛かればお前ら冒険者なんか……!!」



聞けば聞くほど黒ローブの男の自分勝手さが伝わってくる。

話の節々を聞き取る限り、どうやら黒ローブのナギアが盗賊のカトレアを雇って《エイルドラゴン》の卵を持ち帰って仲間達に自慢しようとしたらしい。勿論雇われ盗賊であるカトレアに拒否権などあるはずもなく、ナギアはナギアで何故か自分の首を賭けに出してしまったのだとか。



……それでもって貴族の息子であるナギアの死=カトレアの死を意味することは言うまでもない。ようするにこの事件はお坊ちゃんの若気の至りが引き起こしたってことだ。マジで死んどけあいつ。



「……そういえばこの近くに村があるんだよな?」


「《マッピング》で見た限りは一つあるわ。かなり小さな村だけど、それがどうしたの?」



カトレアの言葉を聞いたナギアの表情がハッと変わった。良くいえば子供が悪戯を思い付いたような、いい歳した大人が下衆な笑みを浮かべる……そんな表情だった。物凄く嫌な予感がする。



「だったらその村に押し付けちゃえばいいんじゃね?」

感想またまた一件いただきましたありがとうございます!

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― 新着の感想 ―
[一言] 追いかけるドラゴン、並走して必死で逃げる人間二人とアンデッド。実にシュールな状況ですね。 映画のポスターになりそう。
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