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人智を超えた機械獣


──周囲のものを破壊しながら《パンドラジャンホイール》が暴れ回る。こんなのに迂闊に近づいたら骨折れるわ物理的に。


その暴れ回る姿は本当に災厄そのもので、名前にパンドラと付くのも納得している自分がいた。周囲の木々を真っ二つに折り、逃げ惑う《キノボリトカゲ》を踏み潰し、岩石だろうが地面だろうがお構いなしにヒビを入れて割っていく……もうこれラスボスでしょ。


なに?これがC-ランクって馬鹿なの?頭パーなの?インフレしてんの?基本的に-と+でやってることの規模がガラッと変わってくるため、C-ランクでこれならC+ランクの《アビスワーム》なんかに進化しちゃったらホントどうなるんだか。



……ふと進化先のことを思い出す。そういえば今のステータスをもう少し上げれば、C-より格上に進化することができたはずだった。《パンドラジャンホイール》の挙動に注意しながら自分の進化先をちらりと覗く。



《アサシンスワンプ》ランクC


〈屍の沼に生息するモンスターであり、水場にやってきた獲物を引きずり込んで溺死させる悪魔のようなアンデッド。溜め池に擬態することができ、雨上がりにはアサシンスワンプの注意報がでる地域も存在する。乾燥すると干からびる。〉


《進化条件 ATK65以上.SPD50以上》


やっぱりあとちょっと上げれば進化できる……か。ステータスを全部八十に揃えるのもかなり厳しいと感じていた頃だ。説明文的にはちょっとアレだが、私の進化先にある人類の敵みたいなやつ(アンデッドパーティ)よりかは間違いなく何倍もマシだ。


因みにあとは水っぽいべちゃべちゃしたやつと文字化けしたやつで、その中だったらそれなりに安定してる部類だろうよ。



《フレイムバレット》

〈炎の弾丸を周囲に飛ばしてダメージを与える《炎焔》の魔法。〉



スキルの通知と同時に《パンドラジャンホイール》の周囲から炎を纏った銃弾のようなものがショットガンの如く撒き散らされた。その数はもはや暴力であり、私には避けるなんて出来っこなかった。至るところが焼けたような痛みに襲われる。



「ホロッ!!」


「シャガァァァ!!」


スバルは空中からいつもの牽制をやってくれていたが、この鉄の塊みたいなやつはあまりにも頑強で全くもって効いてる様子がなかった。というか感情が見えないからわからんな!!


《ヘビースタンプ》

〈自重による踏み潰し攻撃を行い、対象にダメージを与える。また近くの対象物に《衝撃波》による無差別的なダメージを与える。〉




──その通知を理解した瞬間、鉄の塊が独りでにジャンプした。


……嘘でしょ。鉄の塊が一人で空を飛ぶはずがないんだ。それは古来から空を飛ぶことを夢見たなんちゃら兄弟の世代まで叶えられることはなかっっっっっっぐはぁ!!



まさかジャンプするとは思わず度肝を抜かれたが、直撃さえしなければ《衝撃波》を警戒する程度でいいな……とその《衝撃波》に吹き飛ばされながら思った。これまでの戦闘に比べれば大したダメージじゃない。地面から脚が離れる感覚に震えてるだけでこれはただの武者震いだ武者震い。



「ガガガガガガガガ」



《パンドラジャンホイール》は地面に落ちるとそのままの勢いを維持するかのごとく《ローリング》し始めた。こんなの災害じゃないか……ホント悪趣味なもん造りやがって畜生がよぉ!!!



残念だが……私もスバルが本気を出したとしてもこの機械は止められないだろう。こいつは《メガロルフ》や《ビッグイモータル》と比べられるような存在じゃない。ただ敵を粉砕するためだけに人間が作った正真正銘兵器なのだ。


意思をもって敵を踏み潰し、破壊するためにたくさんの兵装を積んだヤツだ。ランクすら足りてないのにこんな暴力的な機械にそもそも勝てるわけがなかったのだ。



「グシャア!!」(退くぞスバル!)


「ホロッ!!」


私はスバルに退く合図をし、《パンドラジャンホイール》の側面から森に入って逃げた。正面からではアイツに分があるし、舗装されてない獣道を走った方が逃げられるという考えだ。



「ガガガガガガガガガガガガガガガガ」


《パンドラジャンホイール》の鳴き声ともとれる音がする。どうやら周囲の木々や岩を粉砕しながらこちらを追ってきているようだが、振り向いている時間はない。今はなるべく距離をとり、高さのある安地を探さねばなるまい。



火車鼠(かしゃねずみ)

〈鼠花火のようにぐるぐると不規則に浮き、最後には大爆発する。天性の魔兵器技師.《ロビン》の造った兵器に搭載され、鉄の塊が空を飛び爆発すると恐れられる由縁になったスキル。〉



私はスキルの通知を聞き、一瞬頭がおかしくなったのかと思った。後ろを向くと歪な煙を撒き散らしながら空を飛ぶ《パンドラジャンホイール》の姿があった。その姿はどう見ても鼠花火である。



……これが爆発するとか冗談でしょ?と思いながら空を飛ぶ《パンドラジャンホイール》を見ていると、その身体が徐々に白く光ってきているのが見えた。





───マジかよ。



私の考えうる最悪のシナリオを実現させたこいつは、空中で満足げに爆発四散した。

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