一時の休息
・・・・
「ホロッ!!」
私はスバルの目覚ましに叩き起こされることとなった。どうやらあの後ずっと眠ったように気絶してたらしく、私のすぐ横に積み重なったスバルの餌の残りらしきものが時間の経過を感じさせる。
一つや二つではなく山のようにどっさりと積まれていたので、あまりの異様さにびっくりして仰け反ったくらいだ。
《クヌギネズミ》ランクF
〈深い森から岩山、人家まであらゆるところに生息するネズミ。その殆どは捕食者に食べられるが、とんでもない繁殖力によって数千年もの間絶滅を免れている。
とある学者が《クヌギネズミ》を模した計算を産み出した。〉
その内のひとつはどうやら《クヌギネズミ》の死骸らしい。説明文をみるとやっぱり普通のネズミって感じだな。あと計算式ってのはおそらくねずみ算……言い換えれば累乗のことかな。正直計算とかそういう概念あったんだ、と驚いている。
気を取り直してスバルの方を見ると、彼は絶賛食事中でしたはい。獲物となったモンスターの盾みたいな頭を回しながら柔らかい背中などの肉をついばん……ってあれ《ファンブルドッグ》じゃないか。物理防御が高いっていってたのに呆気なく喰われてるじゃないですかやだー!!
「ホロウ?」
スバルがこちらの視線に気が付いたのか、鷲掴みにしていた《ファンブルドッグ》の顔をこちらに向けた体勢で「食べる?」と聞くかのようにその死体を近づけてきた。
……いらないです。あんなニタニタと笑う訳わからんもの食べたら色んな意味で後悔しそう。どっかでは犬を食べる文化もあったと思うが、私としてはちっちゃくて可愛らしい子を飼いたいという意識の方が強い。それを食べるなんてとんでもない!まあその文化圏お住まいの人には申し訳ないがNGですね。
こちらの意図を読んだのか、スバルはふいっとそっぽ向いて《ファンブルドッグ》の肉を食んでいた。何故かそのお面だけはまるで意思があるかのようにこちらを向いている……非常に不気味だ。
と……とりあえずあれは放置してステータスチェックだな!よし!
────────
名称.《レン》
種族.《ゲノムシーカー》
ランクD+
状態.《通常》
Hexagram.《6》
ATK.63
DEF.78
BMP.44
SPD.56
────────
今回の戦闘で攻撃力を大きく上げられた気がする。今回は本当に死ぬかと思ったし、もう少し上がってもよかったんじゃない?と個人的に思うが……
やっぱり今回もかしこさ上がらなかったかあ。結構精神使う分物理で殴った方が手っ取り早いってのはあるんだけど、上がったかどうかすら怪しいレベルの変動でかなりショックを受けていた。
確かに今回脳筋だったもんね。仕方ないね!とりあえず上がんないもんはあれこれ言ってもしょうがないし次はスバルのステータスでも見せて貰うとするか。
───────
名称.《スバル》
種族.《スネークバイトオウル》
Lv18
ランクD
状態.《通常》
HP74/74
MP63/63
Hexagram.《3》
ATK.45
DEF.39
BMP.52
SPD.70
───────
やっぱりここ数日分の狩りと合わせてステータスがかなり上がってる。基本的に魔法攻撃での牽制が多い分安定してかしこさ……BMPを稼げるといった感じかな。私としては有用なスキルも多いし羨ましい限りだ。
私は肉を食べ終えて毛繕いしているスバルを見ながら、自分の右腕をぐるぐると回す。
……うん。怪我してた右腕はちゃんと動くし問題なさそうだ。スバルが《ティーリン》でも使って治してくれたのかは定かではないが、どっちにしろスバル無しではあの狼に勝てなかっただろうし感謝しておくとしよう。
「クルルッ!」
その感謝が伝わったのかスバルが私の肩に乗ってくれた。結構な澄まし顔してるけど、ツンだけじゃなく甘えがしっかりと両立してるからホント可愛いんだよなこいつ。クールキャラのツンデレみたいな感じで、本体は隠してても仕草とか尻尾のせいでデレが隠せてないのとか見るの最高……可愛い……!!
……さてと、暫く堪能させてもらったところでまたステータス稼ぎかな。素早さ特化のアタッカーである《メガロルフ》には苦戦させられたものの、まだそう遠くないところに同じC-ランクの《スカベシアン》含めた多くのモンスターが闊歩している筈だ。
私は周囲に[デッドレコード]を当て、索敵してもらうことにした。《気配感知》にはなにか引っ掛かってる訳じゃないが、素早く動くものを感知するスキルっぽいので本当の意味での索敵はこっちのほうが使える。
《キノボリトカゲ》ランクE
《キノボリトカゲ》ランクE
《キノボリトカゲ》ランクE
索敵の結果、三百六十度何処をさがしても《キノボリトカゲ》しかいませんでした、はい。と大きく溜め息をついた。
ほんと何処でもいるよなこいつ。前にもこんな光景見た気がするけど、木の幹全部こいつなんじゃないか?
そんなことを考えていた矢先、幸運か不幸か《気配感知》が反応した。それとほぼ同時かちょっと遅れて地面を走破する車のような爆音が響き渡った。
「「ギガガガガガガガガガガガ」」
そんな機械的な爆音を響かせながらこちらに突貫してくるそれは、黒のカラーリングが施されたモンスターと呼ぶには少々……いや結構無理のある姿をしていた。ミシンの糸を巻いて置いておくアレを、人を轢き殺せるくらいまで大きくしたような姿……ああどうみてもパンジャンドラムですね本当にありがとうございます!!!
《パンドラジャンホイール=ロビン》ランクC-
〈国々の間で密かに兵器として造られていた魔力で動く殺戮機械。《凍水》と《炎焔》、本来は打ち消し合う二つの気質を合成することに成功し、そのときに発生するガスを推進力とし、立ち塞がる障害を粉砕する。
また、極めて稀にまるで意思があるかのような挙動をすることがある。〉
これ逃げちゃってんじゃん……ちゃんと管理してよほんと洒落になってないからさあ。
てか色々ツッコミたいことはあるけどさぁ!!まず《パンドラジャンホイール》って誰が付けたんやマジでセンスの欠片も世界観もない!完膚なきまでに壊しちゃってるから!!
とりあえず止めなきゃヤバイよねこれ……?
《ローリング》
〈兵器獣系統の魔物が扱う物理攻撃。暴れまわり周囲のものを無差別に破壊する。〉
《パンドラジャンホイール》がその場で跳ね、物理法則を無視したんじゃないかと思えるあり得ない挙動で縦や横やなんや回転しまくっていた。
……まあ当然近くにいた私たちも巻き込まれる訳でして。当然こんな鉄の塊、当たったら致命傷ですよねふざけんなよマジで!!!
(イヤァァァァァァァァァァァッ!!)
私は恐らくこれまでに発したことのないであろう、甲高い悲鳴を上げてしまっていた。




