矛と盾の獣
そんなことを考えていた私の《気配感知》が突如警鐘を鳴らすと共に、周囲の草木が激しく音を立てながら揺れた。
スバルには上空でスタンバイしてもらうことにして、とりあえず来るであろうモンスターの解説を頼む。
《メガロルフ》ランクC-
〈海のギャングの名を冠するモンスターの牙を持つ陸のギャング。大きな体格に似合わぬ俊敏さと狡猾さで獲物を追い詰め、堅牢な骨をも砕く鋭い牙で仕留める狼型モンスター。〉
《スカべシアン》ランクC-
〈光を反射する輝く盾のような面で正面からの攻撃を無力化する犬型モンスター。防御力のみならず多彩な妨害魔法を操る。
顔が汚れると、硬いものに擦り付けて顔を磨く。〉
なっ……C-ランクが二体!?これまで出会った最高ランクである《ビッグイモータル》と同格が来る……か。
それに争っている形跡が見られなかったため、恐らく奴らは二体で行動しているのだろう。あと説明文には何処か既視感がするがまだ確信はできない。姿を見ないことにはなにも……
「ガロロロロッ!」
「ベシッ!ベシベシッ!」
草むらをかき分けて黒い体毛をした人の背丈ほどある巨大な狼と、その狼より一回り小さいくらいの緑色の顔面が特徴的な大型犬が独特な鳴き声を発しながら現れた。
……姿を見て確信したが、《シャークファングウルフ》と《ファンブルドッグ》の進化体じゃないか。進化前の面影を残しつつもしっかり強くなってるのが伝わってくる。あれか、あの二匹が似てるって言ったからか?まさかほんとに対の存在だったのかよ……ああマジですかぁ。
《屈折光》
〈太陽光を反射し、標的の身体に当ててダメージを与える。〉
スキルの通知が響くと共にしゃがんだ私のすぐ上を光が駆け抜ける。このスキルは《スカベシアン》のものか……斜角を調節して攻撃を命中させやすくできるコントロール系のスキルなのだろう。
次いで斜角を調節しようと首を傾けてきた《スカベシアン》に《吐血攻撃》を浴びせる。反射的に当てられるのがこのスキルだからな。かなり便利だ。
「ベシベシッ!」
《スカベシアン》の顔が汚れた為か反射光線が止んだ。やはり顔が汚れるとこのスキルは使えなくなるようだ。牽制にも優秀なこのスキルを使われると色々面倒なので、封じられる時に封じてしまおう。
「ヴヴルルルルッ!!!」
怯んだ《スカベシアン》と私の間に割り込んでくる《メガロルフ》。純粋な速攻アタッカーみたいな性能であると思ったが、かなりトリッキーさにも秀でているようだ。
《イビルブレス》
〈毒や麻痺など、複数の状態異常を含んだ息吹を浴びせかける。〉
《メガロルフ》が口を大きく開いたと思えば、毒々しい色をした煙が私目掛けて放たれた。状態異常スキルらしいがアンデッドの私には効かないよ!!
「クルルルッ!」
「シャアッ!」
空中からスバルが《毒吐き》と《ソニックショット》を乱発して二匹を迎撃する。これで当たってくれればと思ったが、やはりそう上手くはいかないようであった。
まず《メガロルフ》は持ち前のスピードで悠々と回避し、《スカベシアン》は厚い盾のような顔の皮膚が攻撃を弾いているようだ。当の本体はピンピンしていやがるな……あの感じだと毒耐性とか持ってそうだ。
《狂い裂き》
〈力に任せて獲物に噛みつき、そこから何度も噛みつくことでその肉をズタズタに引き裂く攻撃。〉
警戒を怠るなと[デッドレコード]から次のスキルの予測がされる。複数体を相手にするときには誰のスキルかをこちらで推測して反応するしかないのが弱点だが、スキル的には《メガロルフ》かこれ。
《メガロルフ》の歪に開いた口が私の元いた場所に食らいついた。見掛けは相当な隙があるが、万が一当たったら抵抗の余地なく咬み殺される感じか……下手したら格上だろうが吹っ飛びそうなスキルだな。本当に物騒すぎるわ。
《サンドストーム》
〈周囲の砂を巻き込んで放つ突風攻撃。〉
……あぁもう次から次へと通知がうるさい!!今度は《スカベシアン》かと奴の方を向くと、黄土色の渦が周囲の地面や枝葉を巻き込み、どんどん大きくなっていくのが見えた。かなり小さいながらも、正真正銘竜巻が作られていたのだ。
さ、流石に冗談だよね?説明文では突風って書いてあったはずなんだけど、目の前にあるのはどうみても竜巻かハリケーンかサイクロンなんだよねえ……。
これも目を瞑るしかない……とはならないよね。突風と竜巻じゃ対処の仕方が変わってくるし、明らか生身で食らっちゃ駄目だよなあれ。飛ばされて死亡エンドだよあんなもん。そうとわかったら一先ずここは逃げ……
《ダークタワー》
〈涅闇の気質で作られた柱を地面から出現させて攻撃、または敵の進路妨害をする。複数出現させることも可能。〉
ここでスキル通知!《メガロルフ》があの竜巻から逃げられないように仕組みやがったらしいな。地面が盛り上がり、今にもなにかが現れそうだった。説明文を見る限りは柱って言ってたな。
流石にC-ランクの攻撃を直撃するのは避けたいが、だからといってあの《サンドストーム》だけはマジで喰らいたくない。この不利な現状、全弾避けるなんで贅沢もいってられないか。私は《ダークタワー》の出現位置にわざと踏みいった。
──刹那、私の足元の地面から柱が出現し、身体を強く打ち付けた挙げ句そのまま大きく撥ね飛ばした。
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