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勇者の意地

「る……ルーパさん!!?そんな……。」


「貴様ぁ……よくもルーパを!!」



さてと……まだ終わってないよな。やっとこさ追い付いたらしい勇者の残党が武器を片手に激昂していた。ルーパが亡き今迂闊に攻撃に踏み込めないだろうし、自分のステータスでも確認しておくかな。


────────

名称.《レン》

種族.《ゲノムシーカー》

ランクD+

状態.《通常》

Hexagram.《6》

ATK.50

DEF.66

BMP.42

SPD.48

────────


やっぱ全体的に大きく上がってる。同格以上とのチキンレースを強いられていたためか防御力の上がり幅がとんでもないことになっているな。ぶっちゃけHPが表記されていないのに防御力の話されても……って感じだけどね。ヌ○ニンがBとDの努力値をあげてるようなもんだし、はっきり言ってしまえば無駄の極みである。なんならもう痛いの勘弁して……まだ身体が痛いのぉ……。



「許せん……《フルスイング》!!」


グラッドが棘棍棒を大きく振りかぶった。どうやら力ずくで仕留めようとしてきたらしい。すぐに後ろに飛んで間合いから離れ、隙だらけな攻撃をあくまでも回避することに専念する。



「俺一人じゃ厳しい相手だ……ぼさっとするなエニー!!」


「え……あ……あ!?」


エニーの方は既に戦意喪失しているようだった。死体に慣れてないだけなのか、それとも仲間を殺されたショックが大きいか。


なんにせよ彼女の《ハイドラ》はもう喰らいたくなかったのでそのまま立ち尽くしてくれてるとありがたい。これでも(元)同族相手の無駄な殺生は避けたいところなんだよ?



「クソっ……当たっ……邪魔だぁあ!」



棘棍棒で殴りかかろうとしていたグラッドの動きが、スバルの《ソニックショット》に止められる。数的に不利な状況では空中からの牽制にも止まらざるを得ない。


特に魔法が使えないらしいグラッドでは、スバルへの有効打もなくルーパやエニーのようなブラフをかけるのも難しい為、彼にとってかなり厳しい状況であることは間違いない。


それでも諦めないあたり、腐っても勇者というかブチ切れちゃってるというか熱くなってるというか……



「アンデッドの分際で卑怯者に成り果ておってえ……貴様のような下衆はここで刺し違えてでも……!!」



グラッドが殺意に満ちた瞳で私を睨み付ける。年季の入ったやや穏やかにも見えるその顔が怒りに震えていた。本気の目だ。本気と書いてマジと読むあれだ。



「ここで勇者としての努めを果たさん!《狂剣士(バーサーク)》!!」



狂剣士(バーサーク)

〈魔力を全て全身に放出し、身体能力を向上させるスキル。一騎当千の凄まじい力を得るが、圧力に耐えられなくなった肉体は崩壊し、身体を制御する脳も破壊される。〉



ああ……《血のドーピング》と同じスキルか。どうやら彼は小細工無用でこちらを粉砕するつもりらしい。



「オ……オゴアァァァァァッ!!!!縺カ縺」谿コ縺!!縺カ縺」谿コ縺励※繧?k────!!!!」


彼の叫びは獣のように大きな地鳴りを起こしながら響き渡る。なにかに取り憑かれたかのようなノイズが混じった不明瞭な言葉で叫び、棘棍棒を両手に握って疾走する。



……小細工をしたところで止められないか。私は《血のドーピング》で両手両足を肥大化させると、彼を止めるために走った。《血のドーピング》は自分の血を適量使ってコントロールできるが、《狂剣士(バーサーク)》は自分が崩壊するまで止まらない。ここで私を倒したところでグラッドはもう戻ってこないのだ。


「がぁぁぁっ!!!」


振り下ろされた棘棍棒が地面に叩きつけられ、刀身と地面にヒビが入った。グラッドのあり得ない馬鹿力に耐久力が維持できなくなり、割れ始めているようだ。


私はその隙を突いて彼の腹を思い切り殴った。グラッドは大きく吹き飛ばされ背中を木に強打したはずが、何事もなかったようにピンピンしてやがる。化け物じゃねえか……どっちがアンデッドだか。



「オオオオオオオオオッア……ガ?」


……我武者羅に周囲にぶつけられていた棘棍棒が私を捉えきれずに、やがてアイスバーのように真っ二つに折れた。馬鹿力で振るってたみたいだが、武器が耐えられなくなったようだ。


「ガッ……がぁぁぁっ!?アガァァァァァァァァッ!?オオオオオオオオオッ!!?」


私は思い切り跳躍して彼に飛びつくと、揉みくちゃにした挙げ句首を強引にへし折った。あり得ない方向に曲がったまま彼の身体は気にせず明後日の方向に進んでいたが、正面の木に身体をぶつけると背中から倒れて動かなくなったようだ。



──死んだか。私はグラッドになんの感情も持たず、彼とルーパの死体を交互に眺めていた。

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