《血のドーピング》
一通り爆風と砂煙が止み、晴れていく視界の中でスバルの無事を確認することができた。
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名称.《スバル》
種族.《スネークバイトオウル》
Lv15
ランクD
状態.《平常》
HP65/65
MP37/55
Hexagram.《3》
ATK.37
DEF.30
BMP.42
SPD.61
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……無事というか無傷だよな。あとちょっとMPが減ってる辺り焦って魔法でも使ったか、とりあえずなんともなさそうでよかったよ。
「あともう少し時間を稼ぐだけね。流石にこれは分が悪いわ。」
ルーパは少々気だるそうな感じでそう呟いた。どういう風に動いてくるかを言ってくれるだけこちらが有利になるってことだ。早いうちに速攻で決めれば何てことはないな。
私はワイヤーを振るって牽制しようとしたルーパに突進する。この一瞬で仕留める───
「……なんてねっ!!私の射程圏内に入ったが最後!《クロスワイヤー》を喰らえっ!!」
(──ッ!?)
───突如鉄の糸のような細く堅い縄に掛けられたかのような感覚に私の脚が躓きそのまま倒れた。[デッドレコード]からの通知は何故か来ない。不意と意識外のワイヤーとナイフが心身を刺して引き裂くかのように、斬られた痛みと「何故」と問うことしかできなくなる程の強い衝撃が襲ってきた。
「理性と知恵がありそうだったからわざと煽動させて貰ったよ。やっぱり引っ掛かってくれて私としてはよかったな。因みに君どこの死霊傀儡師の子?」
ルーパがにひひと悪戯っぽく嗤ってそう言った。ちょっと人間としての理性を見せすぎたせいかこんな手を使って引っ掛けてくるとは思わなかったな……。
「クルルルッ!!」
スバルが意識を自分に向けようとルーパの周りを飛び回っていた。完全に意図を読まれ見切られたのか、ルーパはスバルのことを完全にスルーしていた。
「はいはい……後でちゃんと遊んであげるから引っ込んでなさいな。《フリューゲルスラッシュ》!!」
彼女の両手から再び風の刃が放たれる。さっきとは違い脚にはワイヤーが巻き付いていて上手く体勢が整えられない。肝心のワイヤーはいつの間にか木の枝に結ばれており、しっかりと役目を果たしているようだった。
例え切り刻まれようと早いとこ抜けないとヤバい。
私は自分の脚に巻き付くワイヤーを引きちぎろうと手に力を入れるが、嘘のように硬いその紐が取れる様子はない。
「グッ……!!」
真横から割り込むように風の刃が私を取り囲み、全身を切り裂いていく。どうせ防御したところでジリ貧になるのはわかってる。あとこのワイヤー自体が計算されて作られているためか、風の刃が当たっても切れる様子はない。
……やっぱり自分の腕で外さなければ駄目か。どうする私、当たるかもわからん《吐血攻撃》を期待することもできないし、この体勢じゃ《ダーク》も当たらない。
やっぱり……《血のドーピング》に頼るしかないか。デメリットが後々怖いけど、今の状況を打破するならこれしかない。
...私は自分の両手に思い切り力を入れてワイヤーを引っ張った。外れろ!早くっ……早く外れやがれクソがぁぁぁっ!!!
「なにっ……えっちょっまっ……きゃあああっ!?」
木の枝と私の脚を繋いでいたワイヤーの振動に耐えられなくなり、逆に枝が折れてしまったらしい。支えを失った枝が折れるのにしたがって彼女の身体も地面へと落とされることとなった。
「くっ……痛っ!!」
「グァァァァッ!!」
ワイヤーの拘束が解けた私は痛みを訴える身体を抑え、彼女の元へ全力疾走した。
「なっ……あぐっ!?」
脚を挫いて動きが鈍くなったルーパの首根っこを思い切り鷲掴みにした。さっきので慈悲を掛け尽くした私にとって、彼女を殺す以外の選択はとれない。ここでトラウマを植え付けて廃人にしようが私も浮かばれないし、中途半端に野放しにしてもより強くなって追ってくる。
今の私にとっては、色々な意味で彼女が障害なのだ。ここで経験値にするに限る。
「待って……待ってよ……許して……許してぇ……っ。」
既にさっきまでの威勢の良さは失せ、私に理性があることに一縷の望みをかけて訴えてきた。正直ここで許してもいいのだが……
「許し──────ァ!??」
私は《血のドーピング》で肥大化した右腕で、ルーパの顎を思い切り殴った。顔面を直接殴るようなことはしたくなかったし、頭と胴体を斬り分けるようなスプラッタな趣向はない。ただ脳天を破壊するなら顎が一番よかったというだけだ。
「アガ───」
脳をありったけの力で揺らされた彼女はじきに事切れるだろう。顎からなにから頭蓋骨が恐らく粉砕されて、脳のダメージでまともな活動ができない筈だ。
実を言うと勿論許しても良かった。だがさっき言ったようにあの子は人を怒らせ過ぎた。それは勿論逃げてる相手を追いかけるような真似をした挙げ句命乞いをするという惨めさと、彼女がウザ可愛かったという嫉妬と過去のあれこれだ。気にすることはない。
「クルルッ!!」
スバルが肩に乗り、「大丈夫か」と言いたそうに翼で私の顔を撫でる。私はスバルの頭と尻尾をそれぞれ撫でてやり、「大丈夫」と伝えてやった。




