《勇者》
非常に信じがたいことではあるのだが、どうやらあの人影は勇者のものらしいのだ。何度も嘘だと思っていたのだが、近づいて解説してもらっても《勇者》で押し通されるのだから多分勇者なのだろう。
というか説明文悪いこと押し出しすぎじゃね?勇者って一種の顔パスみたいなもんだからなんも言われないんだろうけど、普通に不法侵入に窃盗に器物損壊やらかしてるような強盗か空き巣まがいだからね……。そう考えると[デッドレコード]の言ってることはわかるんだけど解説にしては主観が混じりすぎてるような気がする。偏見良くない!良くないよ!
「¡Yo también gané mucho dinero hoy!」
「Es importante tener una buena cara en la aristocracia.」
……不用意に近づかなくてよかった。どうやら勇者とやらは複数人でパーティを組んでいるらしく、様子からして野宿するところなのだろう。勇者ともなれば宿で一泊というのが一般的に根付いた考え方なのだろうが、かなりの手練れなのだろうか……寧ろこの状況を楽しんでいるようにも見える。
取り敢えず情報は多い方がいいな。武器とか他の奴らのデータを頼める……ここから見えるか?
《棘付き棍棒》希少度N+
〈[ATK補正+15]振り下ろしてダメージを与えるだけのシンプルな構造をした殴打武器。リーチが短くこれ一本で旅をするのは心許ないが、剣や大槌など多岐にわたる武器の指南にはうってつけ。〉
《アサシンズワイヤー》希少度R-
〈[ATK補正+13]持ち手にワイヤーがくっついた銀のナイフ。従来の近距離のみならず中距離からの攻撃が可能であり、更にはその刃を自身の元に手繰り寄せることもできる。〉
……どうやらもう一人は盗賊らしい。武器がまさに盗賊か暗殺者のそれだ。攻撃力は棍棒に劣るがかなりトリッキーさに富んでいる。
「¡Aunque sea un hombre valiente, debería ser más humilde!」
おっと……どうやらもう一人いたらしい。二人の声と比べると覇気がない女の子のもので、二人の振る舞いをあまりよく思ってない感じが伺える。他には勝ち気な感じの女の子と、それなりに歳食ったであろういかにも酒好きそうな男の声だ。
《宝杖ウインドミル》希少度R
〈[ATK補正+5]六芒星の参の加護を受けた宝石を使った杖。風魔法を操作する気質の力を高め、幾ばか回復魔法の効力も高くなる。〉
《魔術書Lv1》希少度N+
〈魔術を操る基礎が記された書のLv1。この本を持つだけで六属性の基本的な魔法、《ファイア》《ウォータ》《ウィンド》《サンダ》《フィライト》《ダーク》を習得することができる。
出来るかは本人の素質に左右される。〉
ふむふむなるほど……気弱な新米魔術師って感じか。三人のもつ武器からして思ったが、さてはあまり強くないな?例外がないというわけじゃないが、普通手練れの冒険者ならL装備に身を包む~とかしないんかね?流石に棘棍棒やLv1魔術書を持つようなことはしないと思うんだけど……。
取り敢えず《魔術書》は欲しいな。レベルは低くとも魔法を使える書物という価値のあるものであることは間違いないし、それに加えてこの世界の文字に触れられるいい機会になりそうだ。流石にこんな身でも人の言語を知らないとなるとなにかと不都合極まりない。
そしてなによりも《ワルト=ガ》の進化条件がユラ言語とやらの習得である。他がゲテモノな分この進化先を目指すしかないだろうし、そのために必要な道だ。
となれば……寝込みを襲う感じで奪えばいいのかな?考え方は圧倒的蛮族でしかないんだが、とりあえず借りるだけだ。言語習得したらすぐ返すからし、危害を加えるつもりもない。見つかったら戦闘は避けられないだろうが、私にはそれを避けられる確信があった。
《忍び足》
〈音もなく忍び寄ることができるスキル。盗みを働く者ならば必須。〉
死角から見つからずに動けるこの固有スキル。《ゲノムシーカー》になってから会得していたもので、ある意味これは《ゾンビ》との差別点であろう。あとは確実に成功させるために寝静まるのを待つだけだ。




