吐瀉の姫
……こんな強烈なものを見てしまってからというもの、《ゲノムシーカー》の説明文を見ることをどうしても躊躇してしまうな。勿論今の進化先だけがゲテモノである可能性も否定はしない。だがこのタイミングでの進化先解放が不穏にしか思えないのだ。
まぁゲテモノだったら《グール》になるってことでいいやと決め打って解説をお願いしてもらうことにした。
《ゲノムシーカー》ランクD+
〈アンデッドであるが故か嗅覚が異様に発達し、優れた気配感知で獲物を逃がさない。周囲に溶け込む能力により隠密することを得意とする狩人である。〉
[進化条件.称号の入手、SPD40以上]
え……普通に良いじゃん。デメリットやそれらしいものが一切書いてない優良物件じゃん。ランクもD+で進化条件だって悪くない。前回含めて十近く稼いだし、走り回れば案外すぐ進化出来てしまいそうだ。
……決めた。《グール》は置いておいて《ゲノムシーカー》を目指すか。素早さが要求されてるってことはそれなりの速さが保証されているってことであって、強力な武器になる《気配感知》やこれから習得するであろう魔法。まだアンデッドの域から抜けないのは少し癪だが一番理想的な進化である。何を間違えても絶対汚物には染まらない。
・・・・・
「ピギャアー!!!ピギィー!」
「オロロロロロロロr!!!!」
……まあ使い勝手の良さを知ってしまったら無理ですよね。これも魔法が使えないEランクなのが悪い。現在は同じEランクのモンスターである《キノボリトカゲ》を中心になるべく走り回って素早さの向上に努めていた。
《キノボリトカゲ》ランクE
〈枯れ木の幹や枝に擬態して天敵から身を隠しながら餌となる昆虫を捕食する蜥蜴型モンスター。じっと周囲を観察する能力と忍耐力に優れ、近くに潜む獲物を探し当てることもできる。〉
《キノボリトカゲ》は[デッドレコード]の策敵にポンポン引っ掛かるので見つけやすい上に、すばしっこくて非好戦的な為素早さ稼ぎにもってこいの相手だ。《吐瀉攻撃》を浴びせて引きずり出し、延々追いかけっこを強いる私の姿は端から見れば悪魔かなにかであろう。
……本当にごめん《キノボリトカゲ》。進化したらすぐにでも《吐瀉攻撃》するのやめるから……by《吐瀉の姫》。
「ギィ……!!」
吐瀉物に脚をとられた《キノボリトカゲ》の頭を《引っ掻き》で切り裂きそのまま力ずくに〆ると動かなくなった。頭から尻尾まで一メートル五十センチくらいの長さだが、全体的に細いので苦ではない。この要領に気付いてから四匹目。その前の二匹で合計六匹だ。
[ステータスを表示します。]
────────
名称.《レン》
種族.《ゾンビ》
ランクE+
状態.《冷静》
Hexagram.《─》
ATK.30
DEF.30
SPD.29
───────
やはり最初は上がっていた素早さも、追いかける疲労が少なくなっていくのに比例して上がり幅も少なくなっているな。こんなんでも腕は使うからステータス自体は初期から比べて十くらい上がっている。《バンパンジー》との戦闘後と比べると五くらいかな。
そろそろ《キノボリトカゲ》狩りをしていても努力値稼ぎが辛くなってくる頃か。ここらへんレベリングに似てるよなほんと。Eランク狩りじゃ効率悪い。《バンパンジー》と同じD-かE+くらいの相手が欲しい。
周囲を見渡し[デッドレコード]を当て、策敵代わりにモンスターの能力を見せてもらうことにした。
《キノボリトカゲ》ランクE
《キノボリトカゲ》ランクE
《ペテンツリー》ランクF
《ヒュースシープ》ランクE
結果はダメだ格下しかいない。すっかりあいつらの〆方を覚えてしまったため狩ってもステータスは恐らく上がらない。てかどんだけいるんだよ《キノボリトカゲ》。木の幹全部ソレなんじゃねえか?
《ペテンツリー》ランクF
〈魔女の悪戯によってモンスターにされてしまった若木。戦闘力は無く、周囲にモンスターを呼び寄せることしかできない。時折やってくる小柄な生き物をパクリと食べる様子が稀に見られる。〉
唯一の新規モンスターはステータス稼ぎにも使えないときた。そろそろ移動する頃かなと思った時、[デッドレコード]が反応したのだ。
《プレデターマウス》ランクD-
〈甘い匂いを周囲に振り撒き、哀れにも釣られたものをなんでも喰らうと恐れられているモンスター。《プレデターマウス》に食べられたモンスターは陽の目を見ることなくゆっくりと消化される。〉
成る程ね……マウス系のモンスターか。素早さを稼ぐのに丁度いいかもしれないな。結構恐ろしい雑食性をお持ちなことで、苦戦を強いられることになりそうだ。




