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決着とその末


《シンバル・ファンファーレ》の轟音が耳に鳴り響いている。そのせいで本来脳内で話すはずの[デッドレコード]が機能しなくなった。今思えば《バンパンジー》は妨害特化のモンスターなのかもしれない。それを活かすための素早さを高め《首狩り》といった末恐ろしいスキルを得ることができたレベルの高い個体だったってことだ。


現に《首狩り》以外のスキルはどれも小賢しいものだったが、逆に言えば決定打に欠けるのだ。だから首を狩られなければ負けることはない。あとは面倒な《ソニックショット》を回避する手立てを考えればいいか。



それなら……と


私は全速力で奴から逃げだした。振り返ると「!?」と口を大きく開けて呆然としている猿の姿があった。意表を突かれたといった感じか……ざまあみやがれ。


実際奴のスキルは中~近距離で戦うものしか持っていない。《ソニックショット》も放ってからの軌道修正は難しいだろうし、正面から勝てないなら正面に立たないように逃げ回るしかない。幸いスタミナには自信あるんだよ。




……なんてったってアンデッドだからね。



・・・・・・


私は必死に山道を登り下りを繰り返し、奴から距離を取る。後ろを振り返ると、かなり焦った様子で木から木に飛び移る《バンパンジー》の姿が見えた。時々《ソニックショット》を放ったり《爆投撃》で進路妨害しているようだが、木を盾にしたり進路を敢えて変えることでなんとか回避する。



……これでも結構ギリギリだな。あまり下手に動くと急激に距離を詰められるため、なるべく最善を尽くす回避をしなくちゃいけない。首狩りの間合いからだけは絶対に離れなきゃならないんだ。


「オオオオ!!」


向こうも煽る気が無くなったのか、必死こいて気を惹こうとしていた。まるでアプローチだな……諦めて他に行ってくれないかなぁ。



パン!パァン!!と爆竹のような音が鮮明に聞こえるようになった。どうやら聴力が少しずつ戻りつつあるらしい。木から木へ飛び移る音、《バンパンジー》の鳴き声。それらの音を拾えるようになれば状況は有利になるはずだ。



まさか逃げ続けるだけでここまで有利に働くなんてな。どっちらかというと妨害特化のカウンター系モンスターという方が近いかも。自分に意識を向けさせたら勝ちみたいなタイプかもしれない。



今の私が底知らずのアンデッドだからここまで上手いことやれてるが、同ランクの一般的なモンスターでコイツを仕留めるのは苦労するだろうな。体力だって無限じゃないし、妨害され続けたら精神的にも辛いはずだ。


そういった弱味に遺憾なく付け込めるコイツは自然界でも強者にあたるだろう。



だが今回ばかりは相手が悪かったな。そっちから近づかなくちゃならないという仕組みを逆手に取れればそこまで難しい相手でもないってわけだ。こいつがD-ランクなのも煽るだけ煽りつつも格上に食らいつく手段が限られているからだろう。妨害に優れていながら得意不得意がはっきりしており、その有利不利凄く左右されやすいモンスターといった方が分かりやすいか。


「オッオッオッオ」


両手から手裏剣のごとく《ソニックショット》が飛んでくる。多分喰らったらかなりのダメージになるのは目に見えてわかるので、必死に地面に転げ落ちながら回避してみせる。



「オアアッ!!」


次いで追撃するかのように飛びかかってくる《バンパンジー》。あのまま首狩りの間合いに持ってくるつもりなのだろうが……



お前今、一番の隙を晒してるぞ。



「ヴォエエエエエエエエエエ!!!」


木から完全に離れたところで《吐瀉攻撃》を浴びせた。顔から汚物にまみれていくその姿に同情しつつも、容赦なく浴びせ続ける。



なにも考えるなよ私。



「アァァァァァァァァッ!?」


赤黒い吐瀉物にまみれて怯む《バンパンジー》。体勢を整えようとしても地面がつるつると滑り、思うように立ち上がれていなかったようだ。……ここがチャンスだな。



「ヴァァァァァァァア!!」



雄叫びを上げながら《頭突き》を仕掛ける私の中に女子として威厳は欠片も残ってなかった。私の頭は奴の顔面に命中し、そのまま互いにもみちくゃになり倒れる。血にまみれたフィールドで猿の上に跨がり、ありったけの力でぶん殴る。



「オッオッオッオ……」


徐々に《バンパンジー》の意識が朦朧とし、暫く殴り続けたところ、やがて聞こえなくなった。目は白目を剥き、ぐったりと力なく仰向けになって倒れた。



……どうやら終わったようだ。


かなり苦戦を強いられたが、格上(一応)を倒すことが出来て満足である。それにしても疲れた……今どのくらいステータス上がってるんだ??


────────

名称.《レン》

種族.《ゾンビ》

ランクE+

状態.《疲労》

Hexagram.《─》

ATK.25

DEF.30

SPD.21

───────



[デッドレコード]に表示されたステータスを眺めると、防御力と素早さがこの一戦で滅茶苦茶上がった気がする。攻撃力は据え置きか。だがそれでも戦闘を重ねるだけでここまで上がるとは思ってなかったため結構嬉しい。ここにきて《グール》への進化がはっきりと見えてきた。後は殺し回れば《肉の胸像》の進化も出来るようになるだろう。




[称号《吐瀉の姫》を入手しました。]



………。



…………。



………………。



物凄く嫌な称号を手に入れた気がしたんだけど?とりあえず説明してもらおうか?



《吐瀉の姫》

〈理性なきアンデッドに与えられる称号。《吐瀉攻撃》を抵抗なく撃てるものの総称であり、状態異常の耐性も上がる。〉


やだ、状態異常耐性とか嬉しいッッッッッッッッてなるかあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!バーカ![デッドレコード]のバーカ!私だって出来ればこんなもんに頼りたくないって思ってた矢先になんてことをしてくれたんだこの野郎っ……!!



[新たな進化先が解放されました。表示しますか?]

 

あーここに来てそのアナウンスは嫌な予感しかしねぇけど……まぁもしかしたらってこともあるし多少はね?進化先が広がるってのは良いことには違いないし……もう表示してくれ。



〔変化先を表示します。状況により強制変異する可能性のあるものについては強調表示します。〕



────────

現在

〈ゾンビ〉ランクE+

〈アイアンコール=フィーチャー〉ランクB-

〈アトミックゾンビ〉ランクC

臓物の死者(デモニ・アンデッド)〉ランクC-

〈肉の胸像〉ランクD+

〈ゲノムシーカー〉ランクD+

〈グール〉ランクD-


───────



あーなんかふたつくらい進化先が増えてるーわーすごーい……(白目)

物凄く嫌な予感はしてるけど、とりあえずあのふたつ解説頼むわ。


《アイアンコール=フィーチャー》ランクB-

〈かつて信仰に背いた大罪人を裁いた拷問器具に魂が宿ったもの。屈辱にまみれさせる為に中にありったけの汚物を敷き詰めて罪を告白させるはずが、大罪人は汚物にまみれ息が出来ずに死んでしまった。


過去の怨念に縛られながらも、同胞を使役する魔法に長けている。〉


[進化条件《吐瀉の姫》・《鉄の処女を冠する者》の習得。DEF180以上]




……いやいや。いやいやいやいやいやいや!!なにいきなり強烈なもん出してるの!?馬鹿なの?死ぬの?ノータリンなの?昔の人って神に絶対忠信って感じだし、それに背いた罪人を裁くのはもっともなんだけど……わざわざ汚すことはないんじゃない?と呆れつつも、こんな進化するもんかと心に決めていた。


なんと言おうがゲテモノ枠であり、《肉の胸像》が百倍可愛く見える程の説明文である。絶対嫌だ。汚物に常にまみれながら暮らさなきゃいけないなんてやだ。



絶対嫌だからね!

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