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煽り猿


・・・・


気を取り直して次の狩りにいこうかと辺りを見渡すと、一瞬だが木の上に何かがいたのがわかった。向こう側もこちらの視線は察知しているようで、すぐに隠れてしまったためにその姿の全容は見えない。


《バンパンジー》ランクD-

〈周囲に騒音を撒き散らす悪戯癖のある猿型モンスター。柔軟な身体と高い身体能力を持ち、常に標的の近くで聞くに耐えない騒音を鳴らし続ける。標的の怒りを買うと逃げ出す。〉



だが一度視界に映ってしまえば[デッドレコード]さんの目は誤魔化せない。この通りランクと名前と習性は筒抜けなのである。


……だが格上か。能動的に攻めてくる相手じゃないのは説明文を見ても察することができるが、一言でいうなら……




……まじウザイ。


スピードの活かし方を完璧に間違っている気がする。前世でどんな辱しめを受ければそんな卑屈なモンスターになれるのか逆に知りたい。



「アオオオオオオオ!!オッオッオッオ~♪」


パンパンパンと手を叩きながら20mくらい先に生えた若木の枝の上でこちらを見据える〈バンパンジー〉。前世でマウント取ってくる音ゲーオタクに見えてきて仕方ない。てかあんな轟音……身体の何処から鳴るんだよ。



「パアン!!オオオ~♪オッオッオッオ~♪カチカチカチカチ~♪」


気の抜けた鳴き声と爆音のごとく響く音に私のイライラはストレスマッハである。あんなのが格上とか妬ましいなほんと。


《バンパンジー》は何処かで見たことあるような橙色の毛皮を持つテナガザルのような姿をしていた。身長 (?)は百五十センチ程で、小柄な女性的なフォルムが身軽さを感じさせている。よく言えば面白い、悪く言えば小馬鹿にした道化師のような顔で煽るその姿には何処か感情を揺さぶられるような魅力がある。



魅力といっても人を馬鹿にする才能というものだが。



《爆投撃》

〈爆破性のある爆弾を生成し、爆発範囲内の敵味方に無差別に小ダメージを与える。〉


[デッドレコード]が音声つきで《バンパンジー》のスキルを読み取っていた。ふーん……なんか毬栗みたいな形をしたものをばら蒔いていると思っていたがれっきとしたスキルだったわけだ……って静観してる場合じゃねえ!



パアン!!と弾ける爆発音と共に周囲に爆竹でも投げられたかのような煙が立ち込める。

……ほんの少しだが肉を持ってかれたな。よくよく考えればDランクに片足突っ込んでるような奴だ。スキルのひとつひとつが即死級だと思わないと間違いなくやられる。



形振り構っていられない……か。




「ヴォエエエエエエエ!!!」


自分を捨て去って《吐瀉攻撃》で牽制してみたものの、普通に木から降りてくれただけで当たってなかった。攻撃のバリエーションが無さすぎるよ私!こんなんで勝ち目あるのか……?



「オアア~♪オッオッオッオ~♪パン!パン!パパパン!」


パンパンパパパン!じゃねえんだよ!!こいつはここで殺さなくちゃ私のプライドが維持できねぇ。既にないとか言われても私聞かないからね。形振り構ってられないのはとうにわかってるし、降りてきた今……ここで仕留める!!



《引っ掻き》!!《噛みつき》《引っ掻き》!!


「オッオッオッオ~♪」


私の斬撃も噛みつきも空を切る。想像よりマジで速ぇ……。陸地にいるってのに、まるで気にしない様子で縦横無尽に身体をしならせながら攻撃をかわす。



ふと《バンパンジー》の体勢がぐるりと変わって、こちらを僅かながら睨んでいる気がした。



《首狩り》

〈相手の隙を突いて放つ一撃必殺。ピンポイントで放つ正確さか、強引な力業を持つものでなくては失敗する。下克上の代名詞。〉



不味い!!一撃必殺だ!


……《首狩り》の動作前に反応できたお陰でなんとか回避することができた。一撃必殺持ってるとか想像以上だわマジで。こいつは敵対した相手の力量を見極めることが出来ている。煽りまくって集中力を削いだあと、一撃必殺で仕留めるというスタイルでここまで生き延びてきてるんだろうな。


実際攻撃に転じていたはずの私があの《首狩り》に反応できるはずがなかった。死んでいてもおかしくなかったけど今回はほんと[デッドレコード]さまさまであろう。



だが戦況は一切良くなっていない。あいつが戦闘中ずっと《首狩り》で仕留めにくる可能性があるのだ。その度に回避か防御を強いられてしまうため、どうしても素早さとスキルをのバリエーションで劣る私にとっては非常に分が悪い相手である。



「……オアァ。」


《ソニックショット》

〈吹き荒れる風を相手に放つ低級の風属性魔法。〉



《バンパンジー》の手から螺○手裏剣みたいに風が吹きあれたと思えば、それを衝撃波の如く飛ばしてきた。あいつ……魔法まで使えるのかよ!!そういやDランクだったなふざけんなよぉぉぉぉ!!



《跳蹴》

〈流れるように跳躍し、その勢いで相手を蹴る物理攻撃。〉


次に[デッドレコード]からの解説がきたと思えば、おまけにといわんばかりにしなやかな身体で人外みたいな動きをしながら、しゃがみから立ち上がった私の顎に蹴りを入れやがった……っ!!


くそっ……わかってても対処できねぇくらい速い。これがDランクか!!《鮫牙狼(シャークファングウルフ)》が可愛く見えるなマジで。



だけど負けていられるかっ!!着地のタイミングで喰らわせる!!《吐瀉攻撃》!!!



「グシャァァァァア!!」


「オッ!!」


ちっ駄目だ!あれじゃ手に掠ったくらいだよな。片手で着地したかと思えば、その手をバネにして《吐瀉攻撃》から逃れやがった!!なんちゅう腕力と身軽さなんだ……



《シンバル・ファンファーレ》

〈大きな音を鳴らすことで相手の聴力を奪う。〉



なっ……妨害まで出来るのかこいつ!!早いところ耳を塞ga……



ガシャーーーン!と鈍くも激しいシンバルが何処からか鳴り響いた。

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