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《吐瀉攻撃》


まあ……あまりガタガタ言ってても仕方ないし、そろそろ本格的にファンタジー生活を始めるとするかぁ。


言うても私はモンスターだから王道RPGのように街を歩いたりすることはないんだが、折角の不死者の身体で焦ってもしょうがない。まったりのんびり経験値稼ぎすればいいじゃないか。



・・・


「グシャアァァァァア!!」


「プギィィィィィッ!?」


それから目につく相手のランクを見ながら、戦える相手と戦闘をすることにした。今戦っているのは《ヒュースシープ》というEランクの赤い体毛を持つ羊型モンスターである。鳴き声がどうにも豚みたいだが、説明文を見て色々と納得だった。


《ヒュースシープ》ランクE

〈一般的な家畜として知られる《ミートピグ》の鳴き声を真似ることで相手を誘い、弱そうな相手なら狩るという狡猾な思考を持つ羊型モンスター。見掛けに寄らず肉食であり、豚飼いの子供が《ヒュースシープ》に惨殺されて食べられるという事件があった。


楽に狩れないと思ったら《ミートピグ》の鳴き声を真似て撹乱し、隙を見て逃げるとこまでワンセットという、悪知恵の働くモンスターとしてほんの一部の村では恐れられている。〉



人畜無害そうなモンスターの鳴き声を演じ、近づいてきた相手をコロネのような角で刺して殺す……説明文だけ見ると中々えげつないモンスターである。


……とはいっても格上相手には逃げるしかないのも事実で、《ミートピグ》を探すついでに狩られないかと心配になる。



「ブッ……ブギッ……!!」



《引っ掻き》を三、四発当てたつもりだが中々しぶといなこの羊。ちょっとはあの狼も見習えや……そういやあいつ斧の一撃で沈んでたもんなぁ。スピード重視の狼と耐久重視の羊って感じかな。狼と羊でランクに+0.5くらいの差があるはずなんだけど。



[ 《ヒュースシープ》の推定ステータスの計算中……推定レベルは14です。]


勝手に[デッドレコード]に情報が貯まっていくのも見ていて楽しいな。そんであいつのレベルは十四もあるのかよ……この前の狼はレベル二とかだったのに、ここに来てほぼ格上みたいな相手が来やがったらしい。



「プギャアッ!!」


「グアッ!!」



私の《引っ掻き》と奴の《突進》がぶつかり合う。私の身体が押し負けたかのように吹っ飛ばされて宙を舞い、背中から倒れた。結構痛いじゃないの……。あと体力どのくらい残ってんのかな。まだまだやれるけど、この状態で連戦させられるのは勘弁と言いたいくらいには効いた。



《ヒュースシープ》の突進を何度も食らっているようでは私が持たない。幸い相手もEランクのため、遠距離攻撃を深く気にすることはないはずだ。遠距離攻撃でアドバンテージをとれれば確かに盤面は有利にできる。




……出来るにはできるんだけど。


私は自分のスキル欄にある、《吐瀉攻撃》をじっと見る。


《吐瀉攻撃》

〈肉体を持ち、理性のない不死者(アンデッド)モンスターが放つ遠距離攻撃。ダメージそのものは大きくないが、内容物によっては酷い状態異常を付与することがある。人によっては精神的なダメージの方が大きい場合がある。〉



あ……はい。やっぱそうですよね。怯ませるための牽制には使えそうだな、あはは……じゃなくてさぁ!!え、なにこれしかないの!?遠距離攻撃これしかないの!?こんなの使ったら人間としての尊厳なくなるよ!?使われる方のことばかりだろうけど、使おうとしてる側も結構辛いんだよ!?



「ブギィィィィ!!!」



[《吐瀉攻撃》による牽制成功率.100%]


こちらの気も知らず突っ込んでくる《ヒュースシープ》と、こちらの尊厳を奪おうとしてくる[デッドレコード]。これを使ってしまったら、私は人間として、女の子としての威厳を完全に失うことになる。



……考えるな私。これはただのスキルなんだ。相手を牽制して怯ませるためのれっきとしたスキル。そう。スキル。技能。技術。戦略。オーケー?よしオーケーだ。



「ヴォエエエエエエエエエエッ!!!」



私は《ヒュースシープ》目掛けて、ありったけのモノを吐き出した。目は瞑る。何も考えるな。耳を塞げ。遠い目をしろ。私はゲボってない私はゲボってないまだ人間なんやで……死んでるけど。



「プギャアァァァァァァァァァァァァッ!?」



ある程度出しきったところで目を開けると、明らか色合いのおかしい血の混じった液体に穢された《ヒュースシープ》の姿があった。奴は動揺している。何も考えてなさそうな生物があそこまで狼狽えるのを見たことがなかった。見ててもあまりいい気分じゃないし早いところ終わらせよう。私は奴の正面目掛けて思い切り駆ける。 




そのまま奴の顔面に《頭突き》を喰らわせた。


「ブガッ……ゴゴッ……」


頭蓋骨が粉砕されるようなグシャリという鈍い音と共に、《ヒュースシープ》の身体がその場に倒れる。汚物まみれのその身体は明らか冒涜心に満ち溢れており、これからちゃんと分解されるのかと謎の方面で不安が過った。



「……」



気晴らしにステータスを見せてくれ。



────────

名称.《レン》

種族.《ゾンビ》

ランクE+

状態.《絶望》

Hexagram.《─》

ATK.22

DEF.24

SPD.13

───────


これ……ステータスちょっと上がってるよな。防御に至っては突進を受けたからか上がり幅が凄い。素早さが殆ど上がってないのは残念というしかないが、まだ一発目だしどんどん稼いでいってやるよ。



……あと絶望っていうのやめて?単に白目なだけだし。私まだ女の子だもん。

評価5/5ありがとうございます!

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