怪我の功名は進化先で
「─────!!」
ふと遠くから誰かの声がした。大声で誰かを呼んでいるようだが、考え事をしていて誰を呼んでいるかまでは気づかなかった。
「レンさーん!!」
もう一度聞いてハッキリとわかった。声の主はエニーで、どうやら私を呼んでいたらしい。バッと声のした方へ振り返ると、肩にフィルを乗せた彼女がパタパタと走ってきているようだった。
『きゅー!!』
ある程度の距離まで近づいた頃、林檎のような真っ赤で丸い瞳を開いたフィルがエニーの肩から離れ、私に飛びついてきた。
【フィルのステータスが表示できるようになりました。】
[デッドレコード]さん的には、これで仲間になった認識らしい。スバルやエニーの時然りすぐにステータスを覗けないのは少々不便にも思えるが、簡単に他人(他竜)のステータスが見えてしまうのも変な話だろう。
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名称.《フィル》
種族.《リトルワイバーン》
ランクE+
状態.《通常》
Hexagram.《6》
Lv.1/40
HP.20/20
MP.6/10
ATK.18
DEF.11
SPD.17
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──スキル──
物理スキル
《噛みつき》
《引っ掻き》
───────
魔法スキル
《炎痰》
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久し振りに見たなんとも可愛らしいステータスだ。とはいえ生まれたてといっても全ステータスが二桁に乗っているあたり腐ってもゾンビと同格ということか。
腐ってるのはゾンビの方だがな。
だがいくら優秀とはいえ、まだフィルDランクに乗っていないため、魔力を表すBMPが表示されていない。魔法スキルにある《炎痰》は恐らく私がゾンビだった時代にあった《吐瀉攻撃》と同じようなものだろう。
《炎痰》
〈炭が燃えたような黒い煙を吹き掛け、相手の視界を妨げるスキル。大抵実害はないものの、呼吸器が弱い者に対しては時に凶器と化す。〉
まあ、ドラゴンのブレスのベビー版みたいなものか。火球とかブレスは人間でいう唾とか痰とかそんなもんだろうし、スキルに対する違和感とかは特にない。
しかしHP……か。私自身アンデッドであり気にかけたことはあまりないが、スバルと同じようにフィルも生命活動をHPで担っている。どんな仕様かはまだ把握しきれていないが、一緒に行動する上で絶対に欠かせない要素でもある。
万が一長時間の行動で減っていくなんてことがあったりしたら、道順を考え直さなくてはならないかもしれない。
よし、次は私のステータスを見よう。スカベシアンの道連れラッシュに遭って生き延びただけあって、そこそこ上がっている自信はある。
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名称.《レン》
種族.《アインベル》
ランクC
状態.《通常》
Hexagram.《6》
ATK.96
DEF.105
BMP.110
SPD.91
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──スキル──
物理スキル
《噛みつき》
《ヘッドバット》
《カースクロウ》
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魔法スキル
《ポイズンマーカー》
《ハイダーク》
《バーチカルダーク》
《ダークネス》
《ダークスピア》
《シャドウビーコン》
《血のドーピング》
《吐血攻撃》
《デモニア》
《呪縛の風》
《デスペル》
《枯死の霧》
──────
固有スキル
《忍び足》
《気配感知》
《変色》
《暗視》
《邪眼》
《解呪》
《鎌の舞踏》
《魔力抑制》
──────
言語スキル
《セラ言語理解》
《セラ言語》
《呪術言語》
──────
称号
《吐瀉の姫》
《不動なる不死者》
《涅闇を歩くもの》
《呪いの使い手》
《疎まれし血筋》
《災厄の根元》
《呪僧》
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ステータス、スキル共に少しずつ充実しつつあり、既に一部の進化条件は満たしているようだ。物理スキルが圧倒的に少ないのは残念でならないが.そこはこれからの進化先に委ねていくことにしよう。
〔変化先を表示します。現在進化可能な変化先、または状況により強制変異する可能性のあるものについては強調表示します。〕
─────
《アインベル》ランクC
↓
〈ペイン=プリンセス〉ランクB+
〈枯死の沼のヌシ〉ランクB
〈ハーメルン〉ランクB
〈ダークロード〉ランクB-
《イビルアルラウネ》ランクB-
《アビスワーム》ランクC+
《デーモンプリースト》ランクC+
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流れで表示してもらったが、なんか進化先が増えてた。枯死の沼のヌシとデーモンプリースト。恐らくアンデッド由来のゲテモノ枠と、これまで進化先の強みになかった魔法主軸のモンスター枠って感じだな。
特にデーモンプリーストは名前からしてアインベルの正統進化って感じがする。
《デーモンプリースト》ランクC+
〈過去に大悪魔と契約した魔法使いの一族の成れの果て。
悪魔に魂を捧げた者は、末代まで家系に解かれることのない束縛と怨念を受ける。〉
〈悪魔の力を貰い受けたことで高い魔法攻撃力と回復魔法による再生力を誇る。〉
[進化条件.称号《呪僧》の習得、BMP.95以上]
うーん、やはりアインベルの進化先だけあってどこか不穏な説明文だな。魔法方面の強化を受けるのは嬉しいが、悪魔からの束縛を受けるというデメリットは痛い。かといってデーモンプリースト本体はBランクに乗らず、回復魔法もアンデッドである私にとっては不要の長物だ。
...多分必要に迫られなければ進化することはないだろう。優先度的には現在解放されていたイビルアルラウネより劣る。またこっちの方が奇しくも性分に合っているというのも事実なのだ。
それと今回分かったこととして、進化先を解放するにはやはりスキルや称号が必要になってくるらしい。今回のパターンのようにそもそも表示されない場合が殆どだが、中にはハーメルンのように予め候補にあるケースもあるようだ。
アインベルから沼のヌシに進化する……というのも変な話だが、とんでも爆弾を抱えたアンデッドから暑苦しい炎の神に進化するという予測事例もあったのだから今更そこは気にならない。
《枯死の沼のヌシ》ランクB
〈生きとし活けるものを蝕み、魔物に変えるとされる[枯死の沼]に棲息するモンスター。主の近くにいるだけで全ての生き物が呪いによって腐食し死に至るため、その全貌は明らかになっていない。〉
[進化条件.魔法スキル《枯死の霧》の習得、称号.《災厄の種》の習得、ATK170以上.DEF150以上.BMP130以上.]
……条件の凄く多いモンスターだな。かつての進化先候補だったアサシンスワンプの正統進化っぽいし、こいつに進化するならあっちのほうが都合が良いのだろう。
わざわざアインベルで目指すような苦行を強いることはないはずだ。うん。
それと進化条件である程度の実力は測ることができる。条件が多く、ステータスの高い魔物であればあるほど同格との戦闘で優位に立てる筈だ。
ハーメルンと枯死の沼のヌシは同じBランクだが、タイマン性能は恐らくヌシの方が高い。今私のスキルを受け継いでお互いを戦わせるにしても、アインベルのスキルにそれぞれの新スキルが上乗せされていく為、多用なスキルを経たトリッキーさもヌシの方に軍配が上がる。
現状格上のステータスをあまり知らない私から言えることは多くないが、進化先からある程度の傾向を見るのもひとつの判断材料になるはずだ。
そこで私の考えている進化先候補、B-ランクのダークロードとイビルアルラウネでは、総合的に見て恐らくダークロードの方が強い。
現状はダークロードに進化する方向で考えてはいるが、万が一窮地に立たされて間に合わなかった場合はイビルアルラウネに進化する方向で考えることにしよう。
他の進化先には正直言って惹かれない。




