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ミミクリーバンズ

───

その後、鬱蒼と茂る森を掻き分けどうにか街まで辿り着くことが出来た私達。幸いこれ以上の深手を負うこともなく、ギリギリではあったものの無事だった。


途中で意識を失った為あまり覚えてはいないが、暫く絶対安静という条件のもとメンリルさんにまたお世話になることになった。別に動けないわけじゃないんだけど、身体中傷だらけだったし無理もないかと諦めて説教を受けていた。


それから暫く宿で休息を経て、漸くメンリルさんから許可を貰い無事退院、メンリルさんからは「次同じことがあったらもっと怒る」と脅迫紛いに釘を刺されて思わず青ざめたが。



そんな訳で現在は観光がてら街を歩いている。隣にケイト(ガイド)を連れて、ガルゼン達に現状を報告する前段階でもあった。



「あまり時間も取れませんでしたし、いい機会だと思って楽しんでください。」

「時間取れなかった理由、ケイトも入ってるからな。」


私の苦言に「うっ」と言葉を詰まらせるケイト。実際あの面倒なやり取りさえなければもっと観光を楽しめたのは事実である。彼にもそれなり事情があったことは理解しているが、まあそれとこれとは話が違う訳で。



「うう……あっ!そうだレンさん、この街オススメの食べ物があるんで、ほらほら行きましょ!奢りますよ!」

「え、ちょ、食べ物には興味な────ああっ!?」


ケイトが焦った様子で、病み上がりの私の手を強引に掴んで連れ去っていく。この世界に来てからというもの、録に物を口にしてこなかった私。

元々食事を必要としないアンデッドであるのと同時に、時代逆行した食べ物に興味があるわけでもない。それに異世界で食事を取るとあまりよくないとされているし……なんだっけ、ヨモツヘグイだっけ?そういう慣わしもあって食事は避けてきたつもりだったのだが。



「ほら着きましたよ!」


そう言ってケイトに連れられたのは、どうやらパン……の屋台だった。普通のパンとも違うようで、かといってホットドッグでもない。横長ハンバーガーみたいなバンズで上下サンドされた謎の食べ物だ。中に入っているモノは窺えない。



「……なにこれ?」

「ミミクリーバンズです!」




ミミクリーバンズ……??パンを直接バンズと呼ぶ料理名は中々聞かないが、この世界では案外普通の呼び方だったりするんだろうか。あまり良い印象は受けない名前だが、折角オススメされているというなら食べないのは申し訳ないか。



「お嬢ちゃん、この街名物ミミクリーバンズは初めてかい?」


私の様子を見た屋台の叔父さんが声を掛けてくる。こうやって声をかけてくれるのは有り難い、名前からして不穏なイメージしかないしどんなものか一度聞いて起きたい。



「語るより食うが早い。ミミクリーバンズに言葉など不要だ。」


え、なにその感情論───!!毒キノコを前に食ってみろって言ってるもんじゃないですか無茶苦茶な!!


「すみません、ミミクリーバンズ一つ、僕の奢りで。」

「あいよ、毎度あり!」


ケイトが叔父さんからミミクリーバンズを受けとり、間髪いれずに私に手渡してくる。早く食べてほしいようで、ほれほれと口許にまで迫ってくるのが恐怖でならない。



……怖いけど、一応[デッドレコード]さんに説明を頼むか。食べ物の説明とか初めてして貰うけども。


【ミミクリーバンズ】N

《冒険者の街、ローセで主流となっているパン状の食べ物。

中身が完全にランダムとなっていて、何が入っているかは食べてみるまでわからない。


語源は文字通りミミックであり、宝箱がモチーフになっている。

冒険者の通過儀礼として、よくミミクリーバンズを食べさせられる珍事が発生している。》



説明は頼んだが……概ね予想通りといったところかな。売り物な以上毒ってことはないだろうけど、中身を探るのは[デッドレコード]さん的にはナシらしい。


仕方ない。ここは覚悟を決めて食べるしかねえか。


渋々ケイトからミミクリーバンズを受け取り、覚悟を決めてかぶり付く。



……ふむふむ。比較的硬めなパンの食感に、隙間から割り込むようにジャリジャリと砂のようなものが……ん?これ、食べ物か?



砂のようなものっていうか、なんか、砂だこれ。


赤櫟砂(レッダーサンド)】N

《赤の大地からかき集められた砂。不定形で脆い為加工に向かず、足で踏めば用意に崩れて土になってしまう。



間違っても食用ではない。》




オエエエッ!!?砂!?まさかの異物混入ナンデ!?うっわ口の中がやべぇ!なんか乾いてきた!!おっぶ気持ちわるっ!!


「ゲェェェッ!!うっ……て、テメェ……」

「運が無かったみたいですねレンさん……。」


ケイトは私の様子を苦笑いで見つめているだけだ。運が悪いにも程がある……というかこんなの商品として成り立っちゃいけないだろ。現世ならクレーム不可避だわこんなの。記者会見とか開いて謝罪を求めるレベルだぞこれ。

それにご丁寧に食用ではないと記されたものをわざわざ活用しなくていいっての、なにをもってパンに詰めたのか小一時間問いただしてやりたい(殺意)。



「お、二人とも戻ってたかー!」

「あ、あらあら。ミミクリーバンズにやられたのね……」


その後私達を見つけたガルゼンとマリーナさんと合流したが、転げ回りながら砂利と必死に戦っている私の姿を見て苦笑いしているだけだった。



(ああ……殺してえ。)


総合400pt突破ありがとうございます!

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