《道連れパーリナイ》
ドン、と地面を大きく揺らすような轟音が響く。不思議な力で空を飛んでいるファンブルドッグが毒々しいオーラを纏い、ロケットのごとく私目掛けて突進しているのである。
目を疑う信じられない光景だが、地面に突き刺さったり私の右腕に容赦なくぶつかってくる衝撃から、決して夢ではないことを痛感させられる羽目になった。
ファンブルドッグの身体の重さが何倍にも大きく感じられる。きっと《道連れ》が影響してるのだろうが、ぶつかった箇所を内側から抉るような痛みが襲ってくるのだ。
あ、あの、聞きたいんですけど《道連れ》ってこんなヤバいスキルなんですか……?ひとつひとつはそこまで効果のない死にスキルのように見えるけど、単純に数の暴力というものの恐ろしさが片鱗を覗かせているのである。
……これは流石に防げない。シデトカゲといいこいつといい、いくら小さくても侮ってはいけないんだな。うん。
『ブr』ベチャッ
『タr』ベチャッ
軌道が逸れたファンブルドッグ達は、身体が地面に激突すると同時に跡形もなく爆発四散していく。血を吹き散らしながらも変わらずニタニタと笑う顔がこの上なく不気味だ。ああもうワンちゃん嫌いになりそう、ちょっとトラウマになりそうだわ。
顔面の端に風穴が開いていたり、骨が覗いていたりとかなりショッキングである。
「レ、レンさrおわっ!?」
「引っ込め馬鹿!」
ファンブルドッグがいなくなったことで何事かと顔を出してきたケイトをすぐさまタックルして退かす。明らか常人か喰らって無事で済むスキルじゃないし、こっちとしても居られるだけ邪魔だ。
【殺す!】
【我らが仇!】
【殺せ!】
ファンブルドッグのものだろうか、断末魔にも似た本能の断片らしき罵倒を浴びている。身に覚えのない何かを被されてる気がしなくもないけれど、敵対してる以上そこまで気にすることじゃあない。
【死ね!】
【死ね!】
【死ね!】
(……凌げ私!!)
──寧ろここで気を強く持たなければ、《道連れ》に持っていかれるだけだ。物理的な損傷に対しては、現状打つ手がない状況だしな。
【殺せ!】
【まだか!?】
【考えるな、突撃!】
死に際に飛んでくる断末魔のようなものが物騒極まりないんですが、止まってくれませんかねえ。あ、無理ですかそうですか。
そうこう考え事をしてる間にも、当然ファンブルドッグが雨のように降ってくる。《道連れ》というだけあって凄まじい殺意が感じられるが、こちらを捉えて離さんとばかりの執念は無いように思えた。
正直《道連れ》……というスキルがどんなものかハッキリしてないが、かつて戦った偽善蜥蜴が死に際に放った呪詛のようなものに近いと思ってる。
というのも身体の内側が焼けつくような、普通の火傷とは違う深々とした痛みを感じるのだ。とは言え猛スピードでタックルを入れられてる訳だから、当然物理的な痛みだってあるのだが。
──本当に受け止めて大丈夫なものか、不安になる何かがあるのだ。
「っ……!!」
でもそんな不安を抱えてたって仕方ない。結局受け止めなきゃいけないんなら、真っ向から受けて立つのが私流のやり方だから。
魔法が強いだのアインベルだからだの、そんなの関係ない。今一番必要なのは、この《道連れ》を受けきるだけの耐久力とガッツだけだ。
「……くっ!!」
放物線を描きまっすぐ飛んできたファンブルドッグを右腕で受け止める。その重さと痛みに思わず声が漏れる。
正直なところキツい。腕に熱がこもり骨が軋むのを感じる。何故これを止めようとしたかをエニーに問い詰められそうなくらいだ。
【止まったぞ、殺せ!】
【殺せ殺せ!】
【潰せ!】
次から次へとファンブルドッグが飛んでくるが、完全に《道連れ》を止めた私には避けるという選択肢などない。全部受け止めてやる覚悟で既にボロボロの腕に力を入れた。
1匹、2匹、3匹とボウリングの球のごとく重量を乗せて次々にぶつかってくる。衝撃にがたつく身体を支えるのが精一杯で、ぶつかり合う度に何度も吹っ飛びそうになる。
「き……きつ……」
痛い、骨が悲鳴を上げているのがわかる。皹が入ったか、休む暇もなく飛んでくる岩頭を受け止め、弾こうとするが腕が鈍くなっていくようだ。
……それに足腰にもかなり負担が来てる。単純に10キロ近くあるであろう大型犬にどつかれてるのだから当然と言えば当然か。
「そ、逸れ───」
【死ねっ!】
突如軌道が逸れた一匹が腕をすり抜けて右膝に衝突した。なんとか吹き飛びこそしなかったものの、かなりの激痛に片膝をつく羽目になった。
「痛っ……。」
「レンさん!?」
すぐ後ろから、様子を窺っていたらしいケイトが駆け寄ってくる。ケイトが《道連れ》に対する耐性など持っているわけがない、もう一人庇える状況でもないから引っ込んでいて欲しいんだが……。
「前に出るなケイト!死ぬぞ!?」
「……その言葉そのまま返しますよ!」
ケイトが私とファンブルドッグ達の前に立った。盾役でもなければ地力で私に劣る彼が《道連れ》を受けきるのはほぼ不可能だ、今すぐに戻ってくれ───
───これ以上誰も失いたくないんだ!
【《枯死の霧》を習得しました。】
評価5/5のほう頂きました、ありがとうございます!(。・ω・。)




