暇潰しに
─結局、私も疲れがたまっていたのかそのままぐっすり眠ってしまい、目が覚めた時には既に日が昇り初めていた。隣のケイトはまだ寝てるが、あれから泣き言一つ言わず寝れたのかと思えば彼もまた成長できたのだろうか。
さて……と、とりあえずもう少し明るくなったら一度街まで帰って身の安全を確保しなくてはならない。同格のCランク以上のモンスターと出会わない保証もないし、動けるうちにさっさと動いてしまった方が後々楽な気がする。
「……。」
でも折角寝てる彼を起こすのはちょっと気が引けるよな……。起こさなくちゃいけないのはわかってるけど、早朝だからか空もまだ暗く安全面にもよろしくない。自然に起きるのを待ってみて、もう少し明るくなったら起こす感じでいいかな、うん。
「……むにゃあ」
にしても肩を貸したのは良いがちょっと重いな。ケイトも普通に私とほぼ同年代(前世)かそれ以上の男だし、いくら私より背が低くて細身といってもそれなりに体重はあるんだよな。流石に背負ってた壺とか荷物はすぐ側に置いてくれてるけど。
私はケイトが起きるまでの暇潰しも兼ねて、彼の荷物の中にあった何処か見覚えのある赤い本を手に取った。それは表紙に謎の紋様が描かれた真っ赤な本で、生物図鑑やら六法全書ばりの大きさである。それ故非常に分厚くかなりの重量を誇っている。
《魔術書Lv2》希少度R
〈一般的に普及している魔術師御用達の書物であり、一般的な魔術の基礎にとどまらず《錬金術》《治金術》といった鉱石を用いた専門的な内容まで記されている。Lv1よりも幅広い内容を取り扱っている。〉
どうやらこの本はエニーが持っていた《魔術書》と同じものであり、それも更に上のレベルときた。説明文を見ると単純な魔術指南書でしかないのだが、考えてみると色々と危ない代物であるようにも思える。
というのもわざわざLv5まで区切られる理由や規制されている意味からしてレベルが高くなればなるほどとんでもない魔法……それこそ《死霊傀儡》や《蘇生》といった非人道的な禁忌魔法を取り扱う専門書みたいになるんじゃないかと勝手に想像している。
まず基本的な事はLv1の時点である程度書いてあるし、これを刷った側が何を思ってLv5まで段階を踏ませているのか意味がわからない。
「……。」
ひとまずそういった考えを置いて本をパラパラと捲ってみる。相変わらず何処の言葉かもよくわからない文字が綴られているだけだが、内容は不思議と頭に入るし必要なら[デッドレコード]さんの翻訳であらかたどうにでもなる。
一応《セラ言語理解》のスキルは持ってるから歪められてさえいなければ殆ど読めるんだけどね。歪められてさえいなければ。
【著者紹介《繝?繧「繝》】
そう、こんな風に何故か読めない言葉が時々あるもので、肝心の[デッドレコード]さんも翻訳を放棄してバグってしまう。
この……なんとかかんとかさん?は本を書いた外国人か何からしく、この文の後に続く言葉も無駄に引用されてるのか文字化けのオンパレードで読めなかったのだ。
言語系のスキルで文字化けを復元したのは《呪術言語》だからそれさえ習得すればどうにかなると思っていたが甘かったようだ。多分この文は《セラ言語》、《呪術言語》ではない別の言葉で書かれている。内容そのものは《セラ言語》で和訳されていて、出典が外国語みたいな感じか。
今までそれらしいスキルに会ったことはないが、前の進化先の一つにあった《ワルト=ガ》の進化条件に《ユラ言語》の会得があったはずだ。それにあの街で一度、私は《ワルト=ガ》の女の子と出逢っている。
あの時はあまりいい印象を与えられなかったけど、進化条件にあるだけあって《ユラ言語》を間違いなく習得してるだろうし、頼み込んで教えてもらうのもありかもしれないな。
そう考えながらページを捲っていくが、Lv1のものより専門的な内容が多く学の浅い私にはとても読めるものではなかったのである。というのもケイトが漁っているページの殆どは錬金術について書かれたもので、全く見たことないモンスターの絵やら図解が敷き詰められていてこれがよくわからない。
私はパタンと本を閉じ、読むのを諦めた。
「……ん、レンさん?」
「お、おはよ。」
そして今の音でどうやらケイトが目を覚ましたようだ。まだ早いとは思ったが、善は急げだの早起きがなんだの思い立ったらすぐうんたらということわざもあるし、これを好機に行動するとしよう。
100話目突破しました!!これを期に読んでくれる人が増えたら嬉しい……
\(。・ω・。)/




