第四十話
ユズとの会話をルシアに聞かれてしまったハヤト。
ついに告白する決意をし、近くの公園へとやってきた。
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「ルシアにずっと、ずっと言いたかったことがある」
俺は、もう逃げない。
俺は、ルシアに告白するのだ。
今日こそ、ルシアに俺の気持ちを伝えるのだ。
こんな情けない俺のために、みんなが後押ししてくれた。
だから、俺はもう何も恐れない。
「俺、ルシアのことが好きだ」
俺は叫ぶこともなく静かに絞り出すような声でそう告げた。
声は上擦り、目は泳ぎ、足も震えている。
捨てられた子犬のような情けない姿での告白だった。
「ええ、私もハヤトのこと好きですよ」
ルシアは満面の笑みを浮かべてそう言ってきた。
俺は、ホッとしたのか安心したのか、一気に肩の力が抜けていく。
しかし、次の瞬間、ルシアの表情が急に強張った。
「でも、ハヤトとずっと一緒に暮らすことはできません」
ルシアは少しうつむきながらも、淡々とそう告げてきた。
俺は、何も言い返せなかった。
その言葉の真意がわからず戸惑っていたのだ。
「私は……私は異世界の王女です、元の世界に帰らないといけないのです」
そうだ、ルシアは異世界の王女様。
俺の手の届かない存在。
けれど――。
「ハヤトは私がいなくても、ユウジさんやアカネさん、他にもたくさんの仲間がいます。だから私も安心して異世界に帰れます」
「ちょ、ちょっと待ってくれよ! どうしたんだ急に。帰るって言っても今すぐってわけじゃないんだろ? そ、それに帰る方法だってわからないっていってたじゃないか!」
淡々と続けるルシアに俺もついに口を開いた。
まるで、まるでもう今すぐにでも帰ってしまうという口ぶりに俺は焦っていたのだ。
「いえ、今日帰らなければいけないんです。大分前からそう決まっていました。すみません、もっと早くにお伝えしなければならなかったのに、なかなか言い出すことができませんでした」
「う、嘘だろ!? なあ、そ、そんな。俺、ルシアとずっと、ずっと一緒に――」
ルシアとずっと一緒にいたい。
そう言いたかった。
けど、そんなことをいってルシアに困らせるわけにもいかない。
わかっていたことだ。
ルシアが異世界の王女であることも――。
いつか帰ってしまうかもしれないということも――。
それが今日だった。
ただそれだけのことだ。
ルシアには、自分の気持ちもちゃんと伝えることができた。
俺がルシアのことを好きだと、伝えたのだ。
悔いはない。
悔いはない、はずなんだ。
それなのに、どうしてこんなに悲しいんだろう?
なぜ、目頭が熱くなっているんだろう?
「ハヤト、短い間でしたがお世話になりました。お礼にこれを差し上げます」
ルシアから手渡されたのは、ルシアが持っていた魔力の込められた赤い魔法石。
俺は、何も言えないまま、その魔法石を握りしめルシアの顔を見つめていた。
「今までありがとう、そして、さようなら」
ルシアはそういって微笑んだ。
そして、後ろを向き歩き出した。
このままルシアは異世界に帰ってしまう。
俺は、これで良いのだろうか。
本当は帰ってほしくなんてない。
ずっと、ずっと一緒にいたい。
けど――。
「ルシアッ! ま、また会えるんだよな?」
俺は、なんとか自分の気持ちを押し殺してそう叫んだ。
ルシアの足がピタリと止まり振り返った。
「いえ、もうこの世界に来ることはありません。ハヤトはこの世界で、幸せになってください」
そ、そんな――。
なんで、どうして――?
俺のこと、好きだっていってくれたじゃないか!
あれは、嘘だったのか?
俺のことを嫌いになってしまったのか?
「そ、そんなこと言わないでくれよッ! 俺、ずっと、ずっと待ってるからさ!」
俺は、溢れ出してくる涙を必死に堪えて、精一杯に笑って見せた。
そんな俺を見てルシアはまた背中を向けて呟く。
「ごめんなさい、もう決まったこと、ですから――」
ルシアの表情はわからなかったが、なんだか泣いているように思えた。
それが何を意味しているのか、その時はまだ何もわからなかった――。
そして、そのままルシアは歩き始めた。
俺は、ルシアの姿が見えなくなるまで、ただ見つめることしかできなかった。




