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番外編4

ユウジ視点での番外編となります。

ご注意ください。

 俺は恋人を作らない。

 そう決めていた。


 といっても高校を出るまで、という条件付きだ。

 その理由は、俺の両親だ。

 俺の親は、19歳、16歳という若さで俺を産んだ。

 その結果、俺を育てることが困難になり捨てたのだ。


 俺はそうならないためにも高校を卒業するまでは彼女を作らないと誓った。


 俺が本当の両親のことを知ったのは、高校に入学したときのことだ。

 それまでは育ての親を本当の両親だと思って生活していた。

 しかし、レイケツとの出会いが俺を一変させた。


 レイケツの俺を見る目がおかしい、と思って問いただしたらまさか自分の親だったなんてな。

 最初は俺のことを好きなのかと勘違いしてたくらいだ。

 そんな事実を受け入れることができなかった俺は、荒れた。これまでにないくらい荒れた。


 そして、育ての親も本当の両親も傷つけた。

 レイケツ、なんてあだ名を付けたのも俺自身だ。

 俺を捨てた冷血人間、いつしかその呼び名だけが浸透してしまったが。


 当時の俺は自分でもわからないぐらい荒れていてもう高校に通うのもやめようと思ったくらいだ。

 そんなときにハヤトと出会った。

 俺が一人ぼっちだったハヤトをストレス解消にからかってやろうとしたのがきっかけだった。

 

 ハヤトと話をすることで俺は一つ、また一つと心にかかった靄が取り除かれていった。

 一人で思い悩むよりも、バカな話をして楽しく過ごしたほうが良いことに気付いたのだ。

 俺は、いやなことを忘れるかのようにハヤトといつも一緒にいるようになった。

 それがとても居心地が良くて、いつしかレイケツに対する憎しみも薄れていった。


 一年くらい経ったある日、そんなハヤトが突然無断欠席するようになった。

 メールを送っても電話をしても全く返事がない。


 俺は心配になった。

 俺をまた一人にする気なのか?


 その時だった、突然知らない番号から電話がかかってきた。

 ハヤトの妹だった。着信履歴を見てかけてきたらしい。

 俺と同じように心配してる様子だ。


 俺はその時に初めてハヤトの妹と会話した。

 兄と同じく優しいやつで俺はいつしか恋をしていた。


 恋人は作らないと決めていたのに――。


 しばらくしてハヤトは帰ってきた。

 何があったのかは聞かなかった。

 ハヤトは何もいってはこなかった。

 俺も知られたくないことがある、だからハヤトもきっとそうなのだろう。


 でもそれで良かった。

 ハヤトが無事に戻ってきたのだから。


 人がいなくなることの辛さを知って、俺は人に優しくすると決めたのだ。

 その頃からレイケツと連絡を取るようになった。

 週に数回、レイケツに家で夕飯を食べることになった。

 レイケツが何故俺を捨てたかを知ったからだ。


 そしてそれから一ヶ月くらいたったある日。

 ハヤトが突然告白するという話を聞いた。ケータからだった。

 いつも奥手で女子と会話すらしようとしないハヤトが突然そんなことをするなんて驚いた。

 それと同時に、そんな大事なことを話してくれないことに少しばかり傷ついた。

 俺はハヤトのことを親友だと思っていたが、ハヤトのほうはそうでもないのかもしれない。


 俺は、どんなことがあろうとハヤトを応援すると心に決めた。


 しかし、翌日、ハヤトはものすごい可愛い子を連れて登校してきた。

 応援すると決めていたはずなのに、口から出るのは冷やかしの言葉ばかり。

 仲良さそうにしているその様子がすごくうらやましかった。

 いつしか俺も彼女が欲しいと強く思うようになっていた。


 ハヤトがその子を連れて職員室のほうへといったので、俺はレイケツにメールをした。

 俺は失った時間を取り戻すかのように、レイケツとのメールのやり取りをよくしていたのだ。


『大ニュース! ハヤトが彼女を連れて職員室のほうに向かった! 至急調査を頼む!』


 ハヤトのやつが俺を無視するような態度だったので、少しからかってやろうと思ったのだ。

 

 再び教室に戻ってきたハヤトを見つけ声をかける。

 彼女なのかと思ったが否定された、素直じゃないやつめ。

 なんか他人のことなのにニヤニヤが止まらない。


 ついつい、二人をからかってしまうようになった。


 その子はルシアっていうらしい。

 記憶喪失とかいってたが、おそらくハヤトの嘘だろう。

 ハヤトとはもう1年以上の付き合いだ、そのくらいお見通しである。

 きっと事情があるんだろうし、追及することはしなかった。


 もしかしたら、一ヵ月前のハヤトの失踪と何か関係しているのかもしれない。

 そんな気がした。


 そしてハヤトは、複数の女子から猛烈なアピールをされるようになった。

 本人は、好かれていると思ってないらしい。

 なんて鈍いやつなんだ。


 昼の時だって、ハヤトが鈍いせいでアカネとルシアが口論し始めるし、そりゃもう大変だった。

 俺は必死に二人を止めていたのにハヤトは黙って見守ってるし、困ったものだ。


 いつの間にかハヤトがモテるようになっていた。

 世間がようやくハヤトの良さを認識したといったところか。


 そんな矢先、昼休みを終えたのに、ハヤトもルシアも教室に戻ってこない。

 ハヤトは授業中寝ることはあってもサボったりはしないやつなので心配になる。

 そこでレイケツに時間があったら探してくれるようにメールで頼んだのだった。


『二人を見つけたわ。雨に濡れてるみたいだから東棟の一階の空き教室に着替えを届けに来なさい、今すぐ』


 しばらくしてメールが返ってきた。

 今すぐって授業中だぞ?

 ったく、しょうがねえなあ。


 雨の中大ゲンカでもしたのだろうか。

 二人は本当にずぶ濡れだった。

 そして、そのまま早退していった。


 二人のことが気になった俺は、ハヤトの妹にメールを送った。

 なんと二人一緒に住んでるというではないか。

 それはそれで心配だ。俺の親みたいなことにならなければいいんだが。


 それとなくハヤトの妹にも忠告すると、しばらくしてメールが返ってきた。

 しかし、意外にも二人はオンラインゲームをして遊んでるというのだ。

 何を考えているんだやつは。思わず笑いが堪えきれなくなった。


 心配する必要はないらしい。

 ハヤトは想像以上に奥手のようだ。


 ――翌日。


 ハヤトは風邪を引いたため学校を休んでいた。

 アカネが心配そうにしている。

 そして、どうしても見舞いに行くというのを断ることができなかった。

 ちょうどハヤトの妹にも会いたかったし。


 アカネとルシアがまた口論していたが、もう俺は放っておくことにした。

 当事者同士で頑張ってくれ。


「よー、初めまして! ハヤトの親友のユウジだ!」

「あ、初めまして。ユウジ先輩、いつも兄がお世話になってます」


 狙いはハヤトの妹だし。

 まあ、別に手を出すつもりはないが話くらいなら問題ないだろう。

 世間話を適当にして時間をつぶした。

 やっぱり兄妹なんだなあ、二人ともからかうと面白い。


 そして、日も暮れてきたのでアカネを呼びに行く。

 しかしアカネは帰ろうとしない。

 そんなときにルシアちゃんが異世界人であると言い出した。

 信じがたい話ではあったが、ハヤトは嘘をつくタイプではない。


 そして、魔法道具(マジックアイテム)なるものを見せられ俺のテンションは急上昇だ。

 謎は全て解けた!


 ハヤトが一週間無断欠席したことや、そのあと急に積極的になったことやルシアちゃんの正体。


 これらがようやく一本の線で結ばれた。

 なるほど、そういうことだったのか!

 

 しかし、翌日、事件は起こった。

 ハヤトに口止めされていたにも関わらずアカネは平然と言いふらしていた。


「おい、アカネ、なんであっさりバラしてんだよ!」


 俺は怒っていた。

 いくらなんでも秘密をバラすなんて酷すぎる。


「私がどうしようと私の勝手でしょ、放っておいてよ!」


 あー、わかった。

 アカネはハヤトのことが好きだもんな。

 きっと妬ましくてそうしたんだろう。

 ったくしょうがねえなあ。


「このことは俺がバラしたことにするから、お前はもう大人しくしとけ。ハヤトに嫌われるぞ?」


 そういうとアカネは黙り込んだ。

 やれやれ、世話が焼けるやつらだ。


 翌日、そのことが原因でハヤトとケンカすることになってしまう。

 そういえば、俺がバラしたことになってるんだったな。


 とはいえ、そんなことをハヤトが知る由もなく俺につっかかってくる。

 ハヤトがこんなに荒れるなんて珍しいな。

 俺は一年前の自分を見ているようだった。

 しかし、黙って聞いていたが段々と俺も腹が立ってきた。


 なんでだよ、俺だってハヤトのことを思って行動してるっつーのに。

 自分の言いたいことばっかり言いやがって。


「もうお前とは話もしたくねえ。どっかいけよ!」

「……! ああ、わかった。もう俺もお前のことなんて知らねえよ! 勝手にしろ!」


 その言葉で俺はカチンときた。

 つい、売り言葉に買い言葉で返してしまった。


 あーあー、人に優しくするって決めてたのに、何やってんだろうなあ。

 

 俺は、頭を冷やすために屋上にいった。

 そして、レイケツにメールを送っていた。

 ハヤトとケンカしてしまった、と。


 いちいちこんな報告するなんて冷静になって思い返せば恥ずかしい限りだ。

 でも少し俺は甘えていたのかもしれない。

 本当の母親に――。


 しばらくして、ハヤトから電話がかかってきた。

 ハヤトから掛けてくるなんて珍しい。

 しかも、謝りたいとか言っている。


 ずいぶん立ち直るのが早いんだな。

 俺はまだ心が折れてるままだってのに。


 ハヤトは強いんだな……。

 俺なんかよりずっと、ずっと強かったんだな……。


 俺が心配する必要なんて最初からなかったんだ。

 俺のほうが、俺のほうがずっと弱かったんだ。


 ハヤトを応援するなんていって、結局余計なお世話だったんだろうな。

 だから、あんなに怒ったんだろう。


 俺は、俺はいないほうが良いのかな……?

 俺は生まれてこなかったほうがよかったのかな……?


 そんな風に考えてたら、ハヤトが現れて急に土下座して謝ってきたもんだから驚いた。


「ごめん、ユウジ! さっきは言い過ぎた! 本当にごめん! まさかそこまで思い詰めるとは思ってなくて……」

「は? ぷ、くくく……、あははは! あははははは!」


 ハヤトが本気で謝っている。

 そのことがすごい照れくさくって、そして弱気になってた俺自身が情けなくって笑うしかなかった。

 泣きそうになってたなんて気付かれたくない一心で俺は笑い続けた。

 そうだ、笑ってれば苦しいことも嫌なことも全部忘れられる。

 ハヤトにはいつも教えられてばっかりだ。


「え、だって俺がユウジにひどいこといったから、飛び降りる気だったんじゃ……」

「なんだそりゃ? 俺がそんなことするように見えるかってんだ! ぷ、くくく、あーおかしい! 俺を笑い殺す気かよ!」


 あー、屋上にいたからそう思われてたのか。

 いやまあ、ハヤトが止めに来なかったら実際そうなってたかもしれない。

 何故かはよくわからないが、そのくらい落ち込んでいた。


「じゃ、じゃあなんで屋上なんかにいたんだよ!」

「あー、それはだな……」

「あら? ハヤトくんも来てたんだ?」


 落ち込んでた、なんていったらハヤトにまた気を使わせちゃうか、と言いよどんでいるとレイケツがやってきた。

 どいつもこいつも心配性なやつらだ。


 しかも、ハヤトは俺とレイケツが付き合ってるなんて言い出すからこれは本当におかしかった。

 もう息もできないくらい笑ったね。

 いやあ、そんな風に思われてたなんて。

 ハヤトもそそっかしいところあるんだな。


 俺は包み隠さず真実を告げた。

 ただ一点、屋上にいた真相だけはごまかした。

 ハヤトに心配をかけたくないというのもあったが、何より俺が情けないやつだって思われたくなかったからだ。


 俺はもっと、ハヤトのように強くなりたい――。

 そうすれば、いつの日かハヤトのように素敵な恋ができるような、そんな気がした。

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