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第二十九話

 ユウジの予想外の発言にハヤトはただただ茫然とするのだった。


---


「お、おい、今なんて?」

「なんだよ、聞こえなかったのか? レイケツは俺の本当の母親だって言ったんだよ」


 やっぱり聞き間違いではないらしい。

 レイケツがユウジの母親?


「またまたー、さっきの仕返しに今度は俺を笑わそうってことだな!?」

「いやいや、俺は本当のことしか言ってないぜ?」


 とても信じられない。

 ユウジのやつ、まだ怒ってて俺をからかってるのか?

 しかし、レイケツの顔を見るとうんうんと頷いている。


「う、嘘……だろ? マジなのか?」

「ああ、マジだ。そのことを知ってたのかと思ったらまさか付き合ってるだもんな。本当笑い死ぬかと思ったぜ。勘違いもほどほどにしとけよ」


 どうやら本当のことらしい。 


「俺、別に勘違いなんてそれ以外にしてねえだろ!」

「いやー、結構してると思うぞ? ま、そこがハヤトらしいっちゃハヤトらしいけどな!」


 はて、他に何か勘違いしてるようなことなんてあっただろうか?


「それよりも、どういうことだよ。ありえねーだろ。レイケツはまだ30代前半くらいだろう?」

「そうよ、まだ32よ! ふふ、驚いたでしょう? ユウジは私がまだ高校生のころに産んだ子なのよ」


 黙って微笑んでいたレイケツがついに口を開いた。

 確かに、顔もどことなく似てるといえば似てる。美男美女だし。

 言われてみれば性格も似ている。軽い感じや冗談をよく言ってくるあたりがそっくりだ。


「そもそもなんで隠したりしてるんだよ、別に隠すようなことじゃ……」

「まあ俺がこの高校に入ってなければ隠さなくてもよかったんだろうけどな」


 あーなるほどそういうことね。

 親子で同じ高校ってのはいろいろと問題があるんだろうな。


「でも別に隣のクラスの担任なんだし、そこまで気にしなくてもいいんじゃないか?」

「いいや、担任だぞ。しかも俺のことを一切知らないから隠すことになったというわけだ」

 

 あれ? うちの担任は……。


「ユウジの本当の父親って、まさかネッケツか?」

「そう、そのまさかだ」


 つまりはユウジはネッケツとレイケツの子ども?

 そしてネッケツはそのことを知らない?

 もうわけわからねえ。思考が全く追いつかん。 


「なるほど、ユウジが俺より成績がいいのはそういうことだったのか」

「ちょ、待て待て、別にやましいことは一切してないぞ?」


 そういえばユウジは頭悪そうに見えて成績はそこそこいいんだよなあ。

 まあ教師の息子なら当然か。


「冗談だ、冗談。ユウジは曲がったことが大嫌いだもんな」

「おう、俺はいつだって誠実なんだぜ!」


 それにしてもまだ腑に落ちないことがいろいろとある。


「ところで、屋上で何をするつもりだったんだ? てっきり付き合ってて逢瀬を重ねてるのかと……」

「ぷはは、なんだそりゃ。俺が財布忘れたから金を借りようと呼び出しただけだ。さっき学食にいただろ? 怒った振りして抜け出したんだよ」


 な、なんですと!?

 俺はユウジが怒ったってところからすでに勘違いしてたわけなのか。


「なんだよ、じゃあ怒ったのも演技かよ、俺は真面目に言い過ぎたと後悔してたってのに」

「まあ割と本気で怒ってたかもしれないけどな。おいおい、そんな顔すんなって。俺だってあんなこと言われりゃ傷つくってもんだぜえ?」


 ユウジはそういいながらも笑ってくれてる。

 俺に気を使って冗談っぽく言ってるが、あの時は本当に怒ってたのだろう。

 自分のことより他人を優先に考えてるユウジが、ものすごく大人に思えた。


「あとアカネが最初に秘密をバラしたってどういうことだ?」

「え、どこでそれを……? う、ううん……そうだな。アカネがつい口を滑らしちまったんだよ。それだとまたルシアちゃんと口論になるかもだろ? だから俺が話したことにしたってわけだ。ごめんな、ハヤト」


 本当にユウジがバラしたわけじゃなかったようだ。

 それなら謝らなくってもいいのに。本当にお人好しすぎだろ。

 よく考えてみれば、冗談はよく言ったりしてるが、その辺はわきまえているもんな。

 自分の本当の両親のことも、ずっと誰にも言わずに一年以上過ごしてきてるわけだし。


「ふふ、話し込んでるところ悪いんだけど、もう昼休みも終わっちゃうわよ? お昼も食べる時間無くなっちゃったわねえ」

「あ! しまった。つい話に夢中になりすぎて……」


 まだ聞きたいことはあったのだが、それはまた今度にしよう。

 こうして、俺たちは昼も食べずに教室に戻ることにしたのだった。

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