第十九話
帰宅して着替えを済ませた二人。
それから一時間くらいが経過していた。
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「ええ、いきなりこんなの無理ですよー!」
「大丈夫、俺がしっかりとリードするから。最初はみんな不慣れなもんさ、徐々に慣れていくよ」
部屋で二人きりとなった俺はルシアとあることをしていた。
年頃の男女が部屋でやることといえば……。
そうオンラインゲームである。
最初は真面目に話をするつもりで部屋に招いたのだが、どうしてこんなことになってしまったのか。
ルシアが昨日ユズのいっていた「オンラインゲーム」に興味を持ったのがきっかけだった。
沈黙して気まずくなるのを避けるためにやりはじめたのだが、ルシアは意外に楽しんでいた。
「もっと肩の力を抜いてリラックスするんだ、そうそういい感じ」
「こ、こうですか……? 私、こういうの初めてなので……」
異世界にはオンラインゲームなんてものは存在していないらしくルシアの操作はたどたどしい。
慣れない操作のせいかものすごく肩に力が入っている。
物心ついたころからゲームをしてる俺からしたらものすごく面白い光景だった。
「初めてにしては上手だよ、あ、左手だけじゃなく右手ももっと使わないと。それから下向いてないでもっと前をよく見て!」
「そ、そんなあ。もっと優しく教えてくれないとわからないですよお!」
ルシアは画面とキーボードとを交互に見るように慌ただしくプレイしている。
そんなに難しいゲームではないんだが、初めてだとやはり大変なのだろうか。
必死にやっているその姿はなんとも微笑ましい。
「よーし、練習はこのくらいでいいだろう。そろそろ本番いくぞ」
「えー、待ってください。まだ心の準備が……」
練習モードを終えて通常ステージに切り替えた。
習うより慣れろっていうし、こういうのは実際にやってみるに限る。
「なーに、大丈夫だって! 実際やってみれば案外いけるもんだぜ?」
「いやあ、無理です無理ですー、やめてえええ!」
慌ただしく操作しているルシアは、モンスターに襲われてかなりテンパっている様子だった。
と、そこで部屋の扉が急に開いた。
「お兄ちゃん、何やってん――あ、あれ?」
ユズがまた勢いよく部屋に飛び込んできた。
いつの間にか帰ってきてたらしい。
「どうしたユズ。もう帰ってたのか」
「え、あ、うん……お兄ちゃんこそ今日は早かったんだね」
オンラインゲームに夢中でユズが帰ってることに気が付かなかったようだ。
にしてもユズの様子が変だな、顔を真っ赤にして今にも殴ってきそうだった。
まあ、ユズが殴りかかってくるのはいつものことだが。
「それより慌てて飛び込んできたけど何か用か?」
「え! あ、ううん。なんでもない、なんでもないの!」
そういってまたユズは扉を閉めてどこかへいってしまった。
なんだったんだろうか?
まあ妹の行動がおかしいのは今に始まったことじゃないし気にしないでおこう。
そして俺たちは再びゲームをやり始めるのだった。




