第十八話
空き教室で濡れた制服の着替えを終えたハヤトたち。
もう五時間目も終わるくらいの時間になっていた。
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「さて、私は次の授業があるからそろそろ行かなくちゃいけないわ」
「あ、あの俺たちはどうすれば……?」
こんな格好で授業を受けろってか。
俺はまだしもルシアはユズの服を着てるから私服である。
「んもう、それくらい自分で考えなさい! あら? なんか熱がありそうね」
「あ、ちょ、ちょっと!」
レイケツが顔を近づけて俺のおでこに手を当ててきた。
ルシアが不安そうな顔してこっちを見てくる。
ち、違うぞ。これはそんなんじゃないからな?
「やっぱり少し熱っぽいじゃない。ネッケツにはあたしから言っとくから今日はもう帰りなさい」
「は、はい、よろしくお願いします」
まあそれが一番良いな。
サボるのは気が引けるけど、午後の授業を受ける気分じゃないし。
「ルシア、いろいろすまなかったな」
「いえ、私のほうこそハヤトに迷惑ばかりかけてしまって……」
俺が一方的に悪いのに、なんか変な気分だ。
「ふふ、良いわねー青春って感じだわ。私の高校時代を思い出しちゃうわ。あ、でも子どもはもっと大人になってからのほうがいいわよ?」
「ちょ、何言ってんすか!」
なんでレイケツなんて呼ばれてるんだか、全然イメージと違うじゃないか。
セクハラって呼んだほうがいいんじゃないか?
よくこんなんで教師になれたなあ。
「ふー、それじゃ今度こそあたしはもう行くわよ。家帰ったら温かくして早く寝るのよ? 二人で温め合って……」
「先生、いい加減に……」
「うふふ、冗談よ冗談。でもそういうところがカワイイわー」
そう言い残してレイケツは教室から出て行った。
めんどくせえ。
助けてもらっといてなんだが、やっぱり俺はレイケツのことを好きになれないわ。
人間中身が大事だよ、マジで。
ユウジはなんであんなのがいいんだろう?
もしかして騙されてるとか言い寄られて困ってるんじゃなかろうか。
そうだとしたら俺がなんとかしてやらないと――。
「あ……」
レイケツがいなくなって、ルシアと二人きりになってしまった。
中庭の出来事が脳裏をよぎる。
気まずい。ものすごく気まずい。
ルシアのほうを見ると下を向きしょんぼりしている。
「よし、帰るぞルシア」
「はい!」
俺がそういうとルシアは満面の笑みを浮かべた。
俺のことを怒ってたりはしないのだろうか。
ルシアは、ルシアは俺のことをどう思っているのだろう――?
さて、俺の気持ちをルシアにどう伝えるか……。
歩きながら、気持ちを整理する。
でもいざ面と向かって告白ってのもなかなか難しい。
アカネのときのことがトラウマにでもなってるのだろうか。
あああ、何やってんだろう俺。
もう逃げないって決めたのに――。
好きだと伝えたかったのに――。
「ルシア、話したいことがある」
「な、なんでしょうか?」
よし、言おう。言ってしまおう。
言葉にしないと伝わらないこともあるはずだ。
「あ、え、えっと……その……俺に黙って異世界に帰ったりするなよ?」
「え? あ、はい。わかりました……」
はあ、言いたかったのはそんなことじゃなかったんだが――。
自分で自分が情けなくなる。
まあこれで急にいなくなることはないだろう、たぶん。
そもそもルシアが帰ろうとしてたかどうかもわからない。
俺が勝手に勘違いしていただけかもしれない。
でも、でも――。
ルシアともっと一緒にいたい。
心の底からそう思うようになっていた。




