番外編2
今回は10000PV記念の番外編です。
ケイコ視点での話となるのでご注意ください。
私には好きな人がいた。
お世辞にもカッコイイとはいえなかったけれど、いつも私に優しく声をかけてくれた。
家が近所だったこともあり小さいころはよく二人で遊んだりしていた。
たまにケンカすることもあったけれど、今ではそのことも含めて良い思い出だ。
小学校の頃はずっと引っ付いて行動してた。
ずっと一緒にいるのが当たり前だと思っていた。
そんな彼とも中学二年生頃から話す機会が減ってしまった。
お互いに異性として意識し始めた、というのもあるかもしれない。
でもきっかけを作ったのは私。
彼のことが好きだった私は、本人にそのことを直接伝えるのがどうしても恥ずかしかった。
いつも一緒にいるのが当たり前だったから今更そんなこと面と向かって言えなかった。
そこで私は、私が彼のことを好きだという噂を流した。
彼の反応を見るために。
私のことをどう思っているのかがどうしても知りたかった。
でも結局失敗に終わった。
いつしか彼は私を避けるようになった。
嫌われた、そう思った。
私も自分で流した噂のせいで気まずくなり話しかけられなくなってしまった。
あんなにいつも一緒にいたのに、それ以来ほとんど話すこともなくなっていた。
同じ高校に入ったものの、結局それは変わらなかった。
もうあの頃には戻れないの?
私はいつしか彼をあきらめるようになっていた。
そしてそんなことも忘れていたある日。
私に親友から一通のメールが届いた。
『ハヤトくんってどんな人?』
驚いた。
もしかして、私のことを誰かから聞いたのかと思った。
『急にどうしたの?』
いきなりだったので逆に聞き返してしまう。
心の中で忘れかけていた彼への思いがまた溢れ出そうとしていた。
『ううん、なんでもない。気にしないで。それよりさ……』
けど私の疑問が晴れぬまま話題を変えられた。
そのあとはいつものように他愛のないメールのやり取りをした。
メールを終えて私はまた彼のことを思い出していた。
またあの頃のように話したい。
私を好きになってくれなくたっていい。
ただ、もう一度、もう一度だけでいいから私に優しく声をかけてほしかった。
ただそれだけだった。
翌朝、アカネと会話していると突然アカネが立ち上がりハヤトのほうへと歩いて行った。
そしてあろうことか彼を連れ出し、廊下のほうへと行ってしまった。
まさか私のことを言いにいったわけじゃないよね?
アカネがいきなりそんなことするわけないとは思ったが少し心配になった。
しばらくすると何か怒ったような顔をしてアカネが戻ってきた。
「どうしたの? 何かひどいこと言われたの?」
「違うの……自分でもわからない。なんであんなこと言っちゃったんだろう?」
その表情を見ればアカネが何を言ったのかが大体予想できた。
アカネはハヤトのことが好きになったのだと。
昨日のメールも考えてみれば好きな人のことを聞いてきたのだ。
そうすれば全てが辻褄が合う。
アカネはきっと彼に告白してきたのだろう。
私と同じ人を好きになったアカネ。
でも私はもう彼には見向きもされない。
それならば、私は――。
昼休みに中庭にいたハヤトに思い切って声をかけた。
「ちょっとハヤト、話があるんだけど?」
「なんだよ急に。話ってなんだ?」
久々に聞いた彼の声はなんだか以前と違って冷めたような印象だった。
「わからないの?」
「中学の頃のことまだ気にしてたのか? あのことならもう気にしてな……」
あ、あの時のことまだ覚えてたんだ。
私のことなんてもうとっくの昔に忘れて記憶の片隅にもないと思ってたのに。
「違う違う! そんな話じゃないって! ったくホント鈍いんだから……本当にわかってなさそうね、全く。アカネのことよ」
慌てて私は否定した。
あの頃のことはもう今は関係ない。
私は、私の親友のために……こうして彼と話をしているのだから。
何やら焦った風な態度をした彼を見て、私はやっぱりアカネが告白したんだと思った。
「アカネは凄く優しくて良い子だよ、だから真剣に考えてあげてほしいの」
「ちょ、ちょっと待て。言ってる意味がわからない」
「え? 告白されたんでしょ? アカネに――」
だからアカネのことを真剣に考えてほしかった。
私のときとは違い直接告白したアカネのことを見捨てないでほしかった。
そう思って私は必死だった。
だからだろうか。
私は自分の間違いに気づいていなかった。
「はい? 俺アカネに告白なんてされてないけど……」
「え? あれ? だって今朝……あれー?」
「本当に告白されたわけじゃないの?」
「しつこいな、されてないって言ってるだろ」
そう、アカネが彼に告白したというのは私の勘違いだったのだ。
でもアカネが彼のことを好きなのは間違いない。
今度は……今度こそはうやむやにしたくない。
「うん、まあいいわ! 告白はまだかもしれないけど、アカネはハヤトのことが好きなのよ! 私にはわかるわ! だから真剣にアカネのことを考えてあげてほしいの! ね? お願い!」
「あのなあ……、何を勘違いしてるのか知らないけど、俺はアカネに告白されたんじゃなくて告白したほうだぞ? ……振られたけどな」
私がアカネの気持ちを代弁すると、思いがけない返事が返ってきた。
アカネが彼を振った……?
どういうこと?
「……え? えええええ!? そうなの!? 私の勘違いだったのかなあ、ごめんねハヤト。今の話はナシで!」
「あ、ああ……俺は別に気にしてないが、俺が振られたことを言いふらしたりするなよ?」
「わかってるって」
急いでその場と取り繕うも言い知れぬ後悔が私を襲う。
なんてことをしてしまったんだろう。
そう思いながらも照れながら昔のように微笑む彼の顔を見てものすごく嬉しくなってしまった。
親友のため、といいながら……こんな…………。
私は、立ち去る彼の後ろ姿を眺めながら人知れず涙を流していた。




