第二話 鈴の音の先
その村には、古くから伝わる話があった。雪の夜、鈴の音を聞いても、外へ出てはいけない。理由を知る者は誰もいない。ただ、昔からそう言われていた。
ある冬の夜。青年は机に向かい、読書をしていた。外では、静かに雪が降っている。吹雪ではない。風も穏やかだった。
その時。
……チリン。
小さな鈴の音がした。青年は顔を上げる。気のせいかと思った。しかし――
……チリン。
今度は、はっきり聞こえた。
青年は窓辺へ歩き、外を見た。雪の向こうに、人影があった。立っているだけだった。動かない。ただ、時折小さな鈴の音が響く。
青年はしばらく眺めていた。やがて、部屋の隅に置かれた古い札へ目を向ける。幼い頃、祖父に言われた言葉を思い出す。
『あの音を聞いても、追ってはいけない』
青年は窓から離れた。……はずだった。
けれど、しばらくして。青年は外套を手に取っていた。
「少し見るだけだ」
そう呟いて、扉を開けた。
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外へ出ると、人影は歩き始めた。
……チリン。
青年は後を追った。少し歩き、振り返る。家の明かりが見える。まだ戻れる距離だった。
前を見る。人影は少し先にいた。青年が歩くと、また進む。あと少し。もう少しだけ。そう思いながら歩き続けた。
いつの間にか、家の明かりは見えなくなっていた。
そして、青年のすぐそばで鈴の音が聞こえた。
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翌朝、村人が青年の家を訪ねた。扉は開いており、中には誰もいない。
雪の上には、足跡が残っていた。村の外へ向かう足跡。その先で――
足跡は途切れていた。
それ以来、村では、鈴の音を聞く者はいなかった。
……その冬までは。
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……チリン。




