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突然、優等生が両手をパンと合わせ、「そうだ!」と話題転換をした。
「陰浦さん。陰浦さんはなにかSNSをやられていますか?」
「えーっと……LINEしかやっていないな。それがどうかしたか?」
今はインスタとかが流行っているらしいが、うちの家族はLINEしかやっていないから、俺もそれしか使う必要がない。
「よかったらお友達になりませんか?」
優等生は、スマホを胸の前でぎゅっと握りしめ、小さく首を傾げた。
「これから一緒の部活に入るかもしれませんし……」
「別に構わないけど、俺にまともなメッセを期待すんなよ?」
「どういうことですか?」
「基本、寝てばっかだから返信できないことが多いし、俺の送るメッセはいつも素っ気ないから怒っているように見えるらしい」
「そうなのですか?」
「なんなら見てみるか?」
「え? あ、はい」
「えーっと、例えば……」
俺はスマホを取り出し、陸斗とのトーク履歴を何件か見せる。
陸斗:『明、起きてるか?』
明:『あぁ』
陸斗:『明日提出の課題、見せてくれ』
陸斗:『頼む』
陸斗:『おーい』
明:『くぁwせdrftgyふじこlp』
陸斗:『寝てんじゃねーか!!』
陸斗:『え、本当に寝てる?』
陸斗:『頼む! 起きてくれ!!』
陸斗:『明日も提出しなかったら部活いけなくなるんだよ』
陸斗:『おーい』
「これと……」
陸斗:『なぁ明』
明:『なんだ?』
陸斗:『明日暇か?』
明:『あぁ』
陸斗:『釣りいこーぜ』
明:『あぁ』
陸斗:『いい釣りスポット見つけたんだよ』
明:『そうか』
陸斗:『なんなのお前、ゴブスレさんなの?』
陸斗:『え、もしかして怒ってる?』
陸斗:『なにかしたのなら謝るから返事してくれ』
陸斗:『おーい』
「てな感じだけど、それでもいいな——」
トーク履歴を見せ終わり、優等生を見ると、顔を両手で覆い、プルプルと震えていた。
「どうした?」
我慢できなかったのか、ついに「プッ……」と声が漏れ、そこからは堰を切ったように笑い始めた。
「……い、いえ、ふふふ。……なんでもな……うふふふふふ……」
「いや、笑える要素あったか?」
「……はぁ、はぁ、はぁ……。やっぱり、陰浦さんと岡田さんのお二人は、いいコンビですね」
「やめてくれ。腐れ縁なだけだよ」
笑いすぎて滲んだ涙を拭った優等生が、ふと落とした一言。その寒気のする発言に、俺は鬱陶しい虫を払うような仕草で否定した。
「そんで、どうするんだ?」
「はい! お友達になりましょう」
互いにスマホを近づけ、QRコードを読み取り、LINEを交換した。
それと同時に、キーッと電車のブレーキがかかり、車体が小刻みに揺れる。
電車が完全に停車し、ドアが開いた。
「そんじゃあな。明日はお互い、適当に頑張ろうな」
「ふふふ。はい! 頑張りましょう。また明日」
「あぁ」
俺は電車を降り、改札を抜けて家路についた。
◇ ◇ ◇
美緑:『こんばんは』
明:『どうした? こんな時間に』
美緑:『こんな時間もなにも、まだ八時ですよ』
美緑:『LINE交換したてですし、今はなにをしていらっしゃるのかなと』
明:『なにって、今から寝ようとしてただけだけど?』
美緑:『まだ八時ですよ?』
明:『知ってるよ』
明:『いつも九時くらいに寝てるんだよ』
美緑:『それにしても早いですね』
美緑:『テレビや動画などは見ないのですか?』
明:『最近のは面白くないからな』
明:『そんなもの見るくらいなら一時間でも早く寝るよ』
美緑:『ww』
美緑:『まだ知り合ったばかりですけど、なんだか陰浦さんらしいですね』
明:『まぁな』
明:『悪い、もうそろそろ眠いから寝るわ』
美緑:『はい』
美緑:『おやすみなさい』
明:『おやすみ』
夏葉 美緑は、さらりとした肌触りのパジャマを着て、自室のベッドでうつぶせになっていた。
空いている窓から夜風が入り込む。
美緑は陰浦 明とLINEをしていた。
「もうちょっとお話したかったなぁ……」
スマホを閉じ、仰向けになった美緑はそばにあるペンギンの抱き枕を引き寄せる。
開け放った窓から吹く夜風が心地いい。
「おやすみなさい……」
そうつぶやくと、美緑もすぐに眠りへ落ちていった。




