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俺に青春は向いていない  作者: 真面堂 九世
第1章

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6

 集まった四人はそれぞれ顔を見合わせると、ある男子生徒と目が合う。


「げっ!! ワンパンマン……」


 「ヤベッ」と呟き、メガネの奥の小さな目がスッと視線を逸らす。

 お前か。自己紹介の時に言ってたやつは。


「そんでお前ら、どこか入りたい部活はあるか?」


 担任は正面に並んでいる俺たちを見渡す。


「マリィたんのライブ配信を見られなくなるかもしれないので嫌です」


 一人目はさっき目を逸らした、一言で言えばオタクメガネだ。

 オタクメガネは片手でラノベを読み、癖なのかもう片方の手でメガネを何度もクイッと上げる。

 髪は寝癖だらけで、銀フレームのメガネをかけている。

 大きく育った腹のせいでシャツのボタンが悲鳴を上げていた。


「……キモッ。アタシはバイトがあるからムリ~」


 二人目はギャル。

 ギャルは退屈そうに髪の毛をクルクルと手で遊ばせながら、目で追えないくらいのスピードでスマホをいじっている。

 鎖骨あたりまで伸ばしたウェーブのかかった金髪。

 垂れ目を強調させた派手なメイクで顔面を改造している。

 ミニスカートの裾に届くくらいサイズの大きいベージュのカーディガンを着て、学年ごとに色の違う赤色のリボンをアレンジして、胸元にゆるくつけている。


「小林先生。私も放課後は習い事があるので……すみません」


 三人目はさっき話した優等生。

 優等生は前で両手を揃え、丁寧に腰を折る。


「……」


 それと、四人目の俺。


「うっ……」


 立て続けに断られた担任は一瞬圧倒されたが、なにも発言していない俺と目が合う。


「お! そうだ、陰浦。お前、バスケやってたらしいじゃねーか。バスケ部にはい——」

「絶対に嫌です! もう疲れることはしたくないんで。そんなのに入るくらいなら自分で新しい部活を作りますよ」

「おぉ、いいじゃねーか。どんな部活を作るんだ?」


 担任が興味津々で見てくるが、適当に言っただけだから、そんな急に言われても……。


「えーっと……じゃあ、帰宅部で」

「……は? 一応聞くがどんな部活だ?」

「家にまっすぐ帰る部活です」


 本来、帰宅部とは、どの部活にも所属していない生徒たちの俗称であるが、この際、正式に部活動にしてもらおう。早く帰って寝られるし。


「却下」


 クソッ、やっぱダメだったか……。


「それじゃあ、もう一つ思いついたものがあります」

「どうせろくでもないものだろうけど、聞いてやる。言ってみろ」

「それは睡眠部です」

「……は?」


 担任は、今度こそ俺がなにを言っているのかわからないと、口を開けたまま固まってしまったので、懇切丁寧に説明する。


「人間にとって三大欲求のうち、睡眠は最も大切なものです。勉強ばっかりだと脳が疲労して、逆に成績が落ちます。ですので、より良い睡眠を探求し、自分に最適な睡眠を追求することによって、健康的な学生生活を過ごすことが目的の部活です。そうすれば成績もきっと上がります」


 淡々と、理路整然と、俺が活動意義を説明する。

 即興で考えた割には、我ながらそれっぽいんじゃないか?

 これは、担任も納得するだろ。


「どーでもいいけど、アタシもそれでー」


 ギャルはスマホをいじりながら適当に同意する。


「フッ、だったらボクも……」


 オタクメガネは眼鏡をクイッと押し上げる。


「なるほど……。確かに!」


 優等生は俺の説明に深く納得した。

 これで部員の確保はできた。後は顧問だが、教師一年目とか言ってた副担に頼めばいい。頭は堅そうだが、ああいうのに限って意外とチョロいからな。


「決まりましたね。それじゃあサヨナラー…………ぐえっ!?」


 ちゃんと部活としての目処が立ち、帰ろうと振り返った瞬間、担任が俺の襟を掴み、制服で俺の首が締まる。


「待て待て待て! んな部活が通るか!! わぁーったよ、仕方ねーなー。お前ら、俺が顧問している生物部に入れ」


 担任は掴んだ俺の襟を放し、頭をガリガリとかいて諦めたようにため息をつく。


「え、嫌です。自分、虫が大っ嫌いなんで……」

「アタシもー」

「ボクもだ!」

「すみません先生。私もです」


 俺を筆頭に他の三人も次々と断っていく。

 そんな俺たちに担任がさらに深いため息をつく。


「はぁ……お前らなぁ……。大丈夫だ、安心しろ。たまにちょっとした手伝いをしてもらうが、基本的には帰宅部と変わらん」


 帰宅部と変わらないならいいか。と妥協しようとしたが、担任が「待てよ……?」と顎に手を当てる。


「優等生の夏葉はともかく、お前ら三人は、明日の体力測定でサボりそうだな……」

「?」

「「「……」」」


 優等生は不思議な顔をしていたが、俺を含めた三人は考えを見破られたと、舌打ちをした。

 ギャルとオタクメガネも同じ考えだったとはな。


「そうだなぁ……お前ら三人、特に陰浦。明日の体力測定でサボったやつは、運動部行きだからな。さすがにないと思うが、夏葉、お前もサボるなよ? よし、もう帰っていいぞ」


 俺たち四人は言葉を失い、トボトボと自分の席に移動して帰り支度をした。

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