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俺に青春は向いていない  作者: 真面堂 九世
第1章

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「そうそう、コイツ、目つきは悪いですが実は優しいやつなんで……うちの明をどうぞよろしくお願いしますぅー」


 俺の頭に手を置かれ、無理やり一緒にお辞儀をさせられた。

 陸斗による母親のような振る舞いと、反抗期の子供のように、頭にある手を叩き落とす俺。

 まるで漫才みたいなやり取りに、クラスメイトたちは安堵したように笑い声を漏らす。


 そんな反応を見た陸斗は、俺に向かってドヤ顔をしてきた。

 どうやら、放っておいたらみんなから怖がられてぼっちになる俺を案じて、俺の悪印象を払拭しようとしてくれたらしい。

 最後のドヤ顔さえなければ普通に感謝したのにな。

 しかし、思いのほかウケた状況を見て、調子に乗った陸斗が余計なことを喋り始めた。


「ハハハ。でもコイツ、怒ったらめちゃくちゃ怖いんだよなぁ。中学生の時にブチギレて学校の不良たちを一人残らずワンパンで気絶させたことがあって……」

「はぁ……」


 俺は額に手を当て、つい、ため息をついてしまう。あー、頭が痛くなってきた……。

 陸斗は調子に乗ると、喋らなくてもいい余計なことを、ペラペラと誇張して喋る悪癖がある。

 陸斗の口から俺の黒歴史が飛び出した瞬間、教室の空気が凍り付く。

 「不良だ……」「こわ……」「ワンパンマンで草」、そんなささやきが耳に刺さる。

 俺のことを睨んでいた不良もどきどもは、急に目を逸らし始め、着崩していた制服を正していく。

 クソッ……。余計なことを言いやがって。てか誰だワンパンマンって言ったやつ⁉︎

 俺はまだ大丈夫なはずだ。

 ……大丈夫だよな?


 引いているクラスメイトたちのことなんか目に入っていない陸斗が、なおも続ける。


「アハハハ。それに気絶してるのに、その不良たちをボコボコに…………あっ!」


 どうやら周りの状況に気付いたみたいだ。


「んー、やっぱ今のナシ、ナシナシ。アハハハ……」


 教室の雰囲気にも、喋り過ぎたことにも気づいた陸斗は、無かったことにしようとするが、もう遅い。

 ただでさえ怖がられていたのに、これで完全に危険人物認定だな。

 もうそこまで喋ったなら、いっそ全部喋ってしまえよ。ちょっと気になっちゃうだろ。

 どうせもう俺の株なんて地の底だし……。さよなら、俺の平穏な高校生活。


「そうか、お前があの……」


 担任は俺の黒歴史を耳にしたことがあるらしい。

 俺が起こした問題は、ものすごいスピードで他の中学、高校に話が広まっていた。

 陸斗は席に座ると同時に「ゴメンッ」と両手を合わせて謝ってくる。

 次は俺の番なのだが、このアホのせいでマジでやりづらい……。もういいや、さっさと終わらせよう。


「陰浦 明です。趣味も特技もありません。よろしくお願いします」

「……もう終わりか?」

「はい」


 担任が「もっと話せよ」と言いたげな目を向けてくるが、めんどくさいので無視する。

 本当は弁解をすればいいんだろうけど、他人の評価なんてどうでもいいし、趣味も特技もないのは本当のことだし。


「……そうか、じゃあ次―」


 俺の番が終わってからは早かった。中にはちょっとイカれた自己紹介をする奴もいたけど、基本的には淡々と流れていった。


「よし全員終わったな。それじゃあ今から席替えをするぞー。順番にこの箱から番号の書かれた紙を引いていけ」


 担任は教卓の中から使い古された箱を取り出す。


「明、何番だった?」

「ん」


 ニヤニヤしている陸斗に引いた紙を見せる。


「お! 近いな。ほら、またお前の前の席。ラッキー」

「チッ」


 近いどころか前後はこのままで、場所を移動しただけだった。


「なぁ、今舌打ちした?」

「気のせいだろ。ほら、行こうぜ」

「いや、やっぱりしただろ」


 ホワイトボードに書きだされた番号と引いた紙を照らし合わせ、みんなそれぞれ席を移動し始めた。


「いやー、二人とも良い席とれたな」

「……だな」

「どうしたんだ? 嫌なのか? 隅っこなんてめちゃくちゃ良い席じゃねーか。主人公席だぞ?」

「なんだよ主人公席って? いや、確かに悪くないけどさ。まぁ、気にすんな」


 窓側の一番後ろ。あらゆる学校物の創作物で、主人公がよく座るあの席だ。

 良い席を取れたのだが、俺がその席に移動しようとすると、クラスメイトたちからは顔を合わせないようにそそくさと避けられたり、俺を見るや、あえて遠回りされたりなど、もうすっかり不良というか犯罪者扱いだ。

 他人の評価なんて全く気にならない。そう思っていたが、ここまで露骨にされると、流石に堪える……。


 新しい席に座り、頬杖をついて、窓の外の景色を眺めながら傷ついた心を少しでも癒す。

 他の奴らも移動し終わると、近くの席同士のやつと和気藹々(わきあいあい)と喋り出す。

 隣の席の女子は、前の席のやつと楽しそうに話していた。

 俺の隣になってしまったのは少し気の毒だと思ったんだが……。


「あ、陰浦さん、お隣ですね。これからよろしくお願いいたします」


 挨拶をしてきた隣の女子を思わず見る。

 俺のことを怖がると思いきや、笑顔で挨拶をしてきた。


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