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俺に青春は向いていない  作者: 真面堂 九世
第5章

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3

「待ってください、陰浦様!」

「なぁ、それやめてくんない? それに、俺たちこれから用事があるんだ」


 仰々しい敬称を付けてくる中坊二人をきっぱり拒絶する。


「す、すみません陰浦先輩。デート中に……」

「デっ…!?」


 顔を真っ赤にして慌てる優等生に、中坊の一人が「うわっ可愛い……」と素直な感想を漏らした。


「ただ、一つ聞きたいことがあるんです!」

「はぁ……なんだ?」

「どうやったら、陰浦先輩みたいになれますか?」

「は?」

「どうやったら、こんな可愛い人と付き合えますか?」

「は?」

「か、かのっ……」


 中坊二人が俺に次々と質問を投げかけ、優等生が中坊の言葉にさらに赤くなった。


「いや、付き合っていないんだが……」

「あ、これからなんですね。すみません余計なことを言ってしまって」


 変な勘違いをしているが、もうなんでもいいや。


「もういいやそれで……。んで、モテたいんだっけ?」

「「はい!!」」


 さっさと終わらせるため、元気よく返事をする中坊二人を改めて見る。

 二人はイキった髪型にイキった服装、イキった……ダメだ、イキっているとしか感想が出てこない。


「別にモテるわけじゃねーけど、そうだな……じゃあ、まず、その変な髪型、変な服装、変なアクセ類……。まぁとにかく、お前たちがカッコいいと思っていることを一旦全部やめろ」

「「そ、そんなぁ……」」


 俺が中坊二人の格好を全否定すると、二人は少し悲しそうな顔をする。


「今のお前たちは、ただイキっているガキにしか見えない。普通の格好をしろ、普通の。俺を見てみろ、スゲー普通だろ?」


 今日の俺の服装は、黒のシャツ、黒のTシャツ、黒のパンツ、それと黒の靴……。

 うっわ、全身真っ黒だな。

 自分でもちょっと引いてしまうくらい真っ黒だった。


「「「うーん……」」」


 真っ黒とはいえ、超シンプルなコーディネートなのだが、中坊二人とついでに優等生も納得がいっていない。


「なんだよ? 別に変じゃないだろ? 真っ黒だけど……」

「確かに服装は普通なのですが……。いつものことですけど、その黒い服装と、……その……目つきと、纏っている雰囲気のせいで、ちょっと怖い印象があります……」


 優等生の言葉に中坊二人が必死に頷く。


「……。まぁ、とにかく普通にしろ」


 二人はまだ納得がいっていないようだ。


「でも……俺たちの彼女持ちの先輩が、ヤンキーになればモテるって……」


 中坊二人の「せんぱいくん」は、頭の悪い謎理論をコイツらに教え込んだみたいだ。


「んなわけないだろ……。だが一応、女子の意見を聞いてみるか。どう思う?」

「え! 私ですか?」


 突然話を振られた優等生が戸惑いつつも話し出す。


「えーっと、そうですね……。そのぉ……そのような格好の方とはあまり一緒には……。あ、でも、いざというときに守っていただけそうだなって……思います」


 優等生は素直に感想を口にするが、中坊二人の顔を見て、すぐにフォローした。


「「じゃあ、どんな人がタイプなんですか?」」

「えぇ!?」


 二人が優等生に詰め寄って質問すると、優等生はより戸惑い、頬を染めて俺を見るが観念して答える。


「……え、えーっと……や、優しくて頼りになる方、ですかね?」

「「なるほどぉ」」

「やっぱり、イケメンじゃないとダメですか?」


 その質問に、優等生はきっぱりと否定した。


「いえ、見た目は関係ありません」

「でも、強い男の方がいいですよね」

「……そのようなこともありませんけど、でも、いざとなったときに、守ってもらえると嬉しいですね」


 優等生の好みを聞いた二人はすぐさまスマホを出してメモを取る。


「「さすがっす、陰浦先輩!!」」

「は?」

「こんな可愛い人を射止めるなんてさすがです。尊敬します」

「します」

「い、射止め……」

「だから違うって……」


 もうなにを言っても無駄だ。


「では、次会うときまでには、俺たちも彼女を作って見せます。それじゃあ、デートのお邪魔みたいなんで、このあたりで失礼します!」


 中坊二人は、俺たちに感謝を告げると、そのまま走り去っていった。


「結局、あいつらはなんだったんだ?」

「さ、さぁ……」


 まだ顔の赤い優等生も首をかしげた。


「そうだ、忘れてたな。ほら、どっちがいい?」


 優等生に向かって、冷えたお茶と常温のお茶を一本ずつ差し出す。


「え? あ、ありがとうございます。では、こちらの常温の方を頂きます」


 優等生が両手でお茶を受け取った。

 そして、二人でベンチに座ってお茶を飲む。

 二人同時に「プハァ」と息を吐くと、俺たちは思わず顔を見合わせ、優等生がクスッと笑う。


「フフッ。なんだか、息ぴったりですね」

「偶然だろ」


 そう言いつつ、俺もつい口元が緩んでしまった。


「で、これからどうする? もし、なにか買いたいものがあるのなら、その荷物を預かっておくから行ってきてもいいぞ」

「えー、そこは私の買い物に付き合ってくれるのではないのですかぁ?」


 優等生が少し意地の悪い表情をする。


「まぁ、邪魔じゃなければ、ついて行ってもいいけど……」

「それでは行きましょう!」


 優等生は俺の手を引っ張り、楽しそうに歩き出した。

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