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「待ってください、陰浦様!」
「なぁ、それやめてくんない? それに、俺たちこれから用事があるんだ」
仰々しい敬称を付けてくる中坊二人をきっぱり拒絶する。
「す、すみません陰浦先輩。デート中に……」
「デっ…!?」
顔を真っ赤にして慌てる優等生に、中坊の一人が「うわっ可愛い……」と素直な感想を漏らした。
「ただ、一つ聞きたいことがあるんです!」
「はぁ……なんだ?」
「どうやったら、陰浦先輩みたいになれますか?」
「は?」
「どうやったら、こんな可愛い人と付き合えますか?」
「は?」
「か、かのっ……」
中坊二人が俺に次々と質問を投げかけ、優等生が中坊の言葉にさらに赤くなった。
「いや、付き合っていないんだが……」
「あ、これからなんですね。すみません余計なことを言ってしまって」
変な勘違いをしているが、もうなんでもいいや。
「もういいやそれで……。んで、モテたいんだっけ?」
「「はい!!」」
さっさと終わらせるため、元気よく返事をする中坊二人を改めて見る。
二人はイキった髪型にイキった服装、イキった……ダメだ、イキっているとしか感想が出てこない。
「別にモテるわけじゃねーけど、そうだな……じゃあ、まず、その変な髪型、変な服装、変なアクセ類……。まぁとにかく、お前たちがカッコいいと思っていることを一旦全部やめろ」
「「そ、そんなぁ……」」
俺が中坊二人の格好を全否定すると、二人は少し悲しそうな顔をする。
「今のお前たちは、ただイキっているガキにしか見えない。普通の格好をしろ、普通の。俺を見てみろ、スゲー普通だろ?」
今日の俺の服装は、黒のシャツ、黒のTシャツ、黒のパンツ、それと黒の靴……。
うっわ、全身真っ黒だな。
自分でもちょっと引いてしまうくらい真っ黒だった。
「「「うーん……」」」
真っ黒とはいえ、超シンプルなコーディネートなのだが、中坊二人とついでに優等生も納得がいっていない。
「なんだよ? 別に変じゃないだろ? 真っ黒だけど……」
「確かに服装は普通なのですが……。いつものことですけど、その黒い服装と、……その……目つきと、纏っている雰囲気のせいで、ちょっと怖い印象があります……」
優等生の言葉に中坊二人が必死に頷く。
「……。まぁ、とにかく普通にしろ」
二人はまだ納得がいっていないようだ。
「でも……俺たちの彼女持ちの先輩が、ヤンキーになればモテるって……」
中坊二人の「せんぱいくん」は、頭の悪い謎理論をコイツらに教え込んだみたいだ。
「んなわけないだろ……。だが一応、女子の意見を聞いてみるか。どう思う?」
「え! 私ですか?」
突然話を振られた優等生が戸惑いつつも話し出す。
「えーっと、そうですね……。そのぉ……そのような格好の方とはあまり一緒には……。あ、でも、いざというときに守っていただけそうだなって……思います」
優等生は素直に感想を口にするが、中坊二人の顔を見て、すぐにフォローした。
「「じゃあ、どんな人がタイプなんですか?」」
「えぇ!?」
二人が優等生に詰め寄って質問すると、優等生はより戸惑い、頬を染めて俺を見るが観念して答える。
「……え、えーっと……や、優しくて頼りになる方、ですかね?」
「「なるほどぉ」」
「やっぱり、イケメンじゃないとダメですか?」
その質問に、優等生はきっぱりと否定した。
「いえ、見た目は関係ありません」
「でも、強い男の方がいいですよね」
「……そのようなこともありませんけど、でも、いざとなったときに、守ってもらえると嬉しいですね」
優等生の好みを聞いた二人はすぐさまスマホを出してメモを取る。
「「さすがっす、陰浦先輩!!」」
「は?」
「こんな可愛い人を射止めるなんてさすがです。尊敬します」
「します」
「い、射止め……」
「だから違うって……」
もうなにを言っても無駄だ。
「では、次会うときまでには、俺たちも彼女を作って見せます。それじゃあ、デートのお邪魔みたいなんで、このあたりで失礼します!」
中坊二人は、俺たちに感謝を告げると、そのまま走り去っていった。
「結局、あいつらはなんだったんだ?」
「さ、さぁ……」
まだ顔の赤い優等生も首をかしげた。
「そうだ、忘れてたな。ほら、どっちがいい?」
優等生に向かって、冷えたお茶と常温のお茶を一本ずつ差し出す。
「え? あ、ありがとうございます。では、こちらの常温の方を頂きます」
優等生が両手でお茶を受け取った。
そして、二人でベンチに座ってお茶を飲む。
二人同時に「プハァ」と息を吐くと、俺たちは思わず顔を見合わせ、優等生がクスッと笑う。
「フフッ。なんだか、息ぴったりですね」
「偶然だろ」
そう言いつつ、俺もつい口元が緩んでしまった。
「で、これからどうする? もし、なにか買いたいものがあるのなら、その荷物を預かっておくから行ってきてもいいぞ」
「えー、そこは私の買い物に付き合ってくれるのではないのですかぁ?」
優等生が少し意地の悪い表情をする。
「まぁ、邪魔じゃなければ、ついて行ってもいいけど……」
「それでは行きましょう!」
優等生は俺の手を引っ張り、楽しそうに歩き出した。




