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俺は今、ショッピングモール一階の適当なベンチに座っていた。
「暇だ……」
このショッピングモールは三階建てで、天井のない吹き抜けとなっている。
見上げると青空が広がっている。
植えられた木々が程よく日差しを遮ってくれるおかげで、眩しさも少ない。
時折り吹く心地いい風が、肌を優しく撫でていく。
ベンチの背もたれに体重を預け、上を向いてぼんやり空を眺めていると、ふと、最近顔見知りになった顔が俺の視界にスライドインしてきた。
「……」
「おはようございます。陰浦さん」
目が合ったその人物はニッコリとほほ笑む。
「……おはよう。なにをしているんだ、優等生?」
優等生はいつもと同じ髪型で、女性用の服の名前なんて知らないが、白のトップスにベージュのスカート。
派手ではないが、落ち着いた色合いが妙に大人っぽく見える。
それに、薄っすら化粧までしていて、普段の、学校での優等生じゃないみたいだ。
さすがは美少女と言うべきか、周囲の視線が優等生に集まっているのがすぐにわかる。
「陰浦さんがここで、ぼんやりと物思いに耽っていらっしゃるのを偶然見つけましたので、来ちゃいました」
紙袋をいくつか持った優等生が俺の隣に座る。
にしても近い……。お互いの肩が普通に当たっている。
「そうか……」
「陰浦さんこそ、このような場所でなにをしていたのですか?」
優等生が小首をかしげる。
「あぁ、今日は姉貴の買い物の荷物持ちだよ」
「お姉さんと来られていたのですね。……ん? そのお姉さんはどちらにいらっしゃるのですか?」
優等生は辺りを見回して、俺のゴリラを探す。
「ここにはいないぞ」
「え?」
さらに首をかしげる優等生に説明する。
「姉貴は午前中に買いたいものを物色して、午後に一気に買い物をするタイプの人間だから、俺の仕事は午後からなんだ」
もちろん、目をつけていたものが売り切れていることも多々あるみたいだが、ゴリラ曰く、それもそれでショッピングの醍醐味らしい。
今は午前十一時。まだあと一、二時間ある。
「なるほど、それでお一人だったのですね」
「そっちは?」
納得する優等生に俺が質問を返す。
「私も姉と一緒にお買い物に来ていたのですが、姉とはぐれてしまって……」
「へぇー、姉がいたんだな。それで、迷子になったから助けてほしいのか?」
「違います! 私が迷子になったんじゃありません!!」
優等生は少し声を上げて慌てて否定した。
「私のおねえ……姉は、目を離すとすぐに迷子になるんです!」
「そうか、悪い。大変そうだな」
「アハハハ……」
姉のことをかなり探していたのか、心なしか笑顔が引きつり、少し疲れた表情をしている。
「なにか飲むか?」
「え?」
優等生は目を瞬かせた。
「いや、結構疲れているみたいだし、俺もちょうど喉が渇いたからな。なにが飲みたい? 奢るぞ」
「い、いえ、そんな悪いですよ。飲み物代ぐらい自分で出します」
優等生は両手を振り遠慮する。
「別にいいよ。俺、バイトしてるから気にするな」
「……では、お言葉に甘えさせていただきます」
「ん。なにがいい?」
「お茶をお願いします」
優等生が軽くお辞儀をした。
「おっけ、じゃあ買ってくるから待っててくれ」
「あ、私も行きます」
紙袋を持ってベンチから立とうとする優等生を、俺は制止する。
「いいって、荷物持ってくるの大変だろ? 座って待ってていいから」
「あ、はい。わかりました。お気遣いありがとうございます」
やはりよほど疲れていたのか、浮かせた腰を素直に下ろした。
優等生をベンチに残し、俺は同じ一階にある近場のスーパーに向かった。
「袋はいかがされますか?」
「いえ、大丈夫です」
「では、二点合計百九十八円です」
「これで……」
「ありがとうございましたー」
「あざます」
会計を済ませ、元の場所へ戻る。
すると――。




