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俺に青春は向いていない  作者: 真面堂 九世
第4章

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4

「さて、お前ら。なにを食いたい?」


 俺たちは約束通り、担任のおごりで昼飯を食いに行くことになった。

 下駄箱で靴を履き替え、校門まで歩いていた。


「「焼肉!」」


 厨二メガネと熱血先輩(兄)。


「パフェ」


 ギャル。


「なんでもいい」

「皆さんにお任せします」


 不良先輩と優等生。


「ごはん、いらない……。ねたい……」

「俺も。帰って寝たい」


 猫先輩と俺。の順に担任のリクエストに次々と答えた。

 結局、出たのは「焼肉」と「パフェ」だけ。デザートは置いといて、昼飯は実質、焼肉一択だ。


「うんうん。よし、じゃあ、俺の行きつけの店に連れて行ってやろう」


 担任を先頭に校門を出て、歩いていると。

 ドンッと、突然俺の横腹に鈍い衝撃が走った。


「おぅっふ……なんだ?」


 視線を落とすと、小さな男の子が俺に抱きつくようにしがみついていた。

 


「にーたん!!」


 男の子が俺を見上げ元気よく叫ぶ。


(がく)!? どうしてここに……?」

「え? 陰浦さん、弟さんがいらっしゃったのですか?」


 男の子の正体に俺が驚愕すると、優等生は別のことで驚く。


 はしゃぐたびに髪がふわふわと跳ねていた。

 にこにこと笑う顔を見ると、見ているだけで こっちまで元気になりそうだ。

 泥だらけのスニーカーと、少しよれたTシャツが、今日も全力で遊んできたのがわかる。


「いや、違――」

「岳! 走っちゃダメって言ったでしょ!!」


 そこに、この子……岳の母親が、同じ脇道から駆けてきた。


「ママ、にーたん!」


 岳は嬉しそうに母親に振り返り、俺を指さした。


「あれ? 明じゃない。今帰るところ?」

「なんだ、やっぱり姉貴か」


 現れたのは、俺の二番目の姉貴だ。


「あぶねーだろ、岳の手を放しちゃ……」

「しょうがないでしょ。アンタを見るなり、いきなり私の手を振り払って、走って飛び出していったんだから……」


 満面の笑みでしがみついてくる小さな腕。

 この子はゴリラ(姉貴)の子……つまり甥っ子だ。


「姉貴ということは陰浦さんのお姉さんですか? この子は甥っ子さん?」

「まぁな」

「よぉ、陰浦」


 俺とゴリラ(姉貴)が、担任へ振り向く。


「あ、悪い、姉の方だ」

「あぁ! だいちゃん!!」

「久しぶりだな、陰浦姉」


 卒業式以来の再会に、空気が一気に懐かしい色を帯びる。


「え? だいちゃん、まだダル高校の教師やってたんだぁ。え、でも、任期的には……」

「それはなぁ……お前たちが思っている以上に、俺が優秀というわけだ」

「ふーん、そっ。それで、こんな大人数でどこに行くの?」


 担任の自慢を含んだ返答を軽く流したゴリラ(姉貴)は、俺へと視線を向ける。


「俺たちが先生の仕事を仕方なく手伝ってやったから、昼飯をおごってくれるんだよ」

「え、マジ?」


 パッと表情を明るくする。


「じゃあ、あたしたちも行くー」

「おい待て、なんでそうなる?」

「え、ダメなの?」

「だめ……なの?」


 姉貴がわざとらしく首をかしげると、その子供である岳も真似をする。


「ウッ……」

「どうしましょう陰浦さん。岳くんがすっごく可愛いです」

「え、待って。最カワなんですけどぉ」


 岳のあまりの可愛さに、担任がたじろぎ、優等生は俺の肩を興奮気味に何度もたたき、ギャルがいろんな角度からスマホを構えて連写する。


「わかったよ。じゃあ行くぞ」

「やったー、ラッキー」

「やったー♪」


 こうして、ゴリラ(姉貴)と岳が加わり、担任の行きつけらしい場所に向かうことになった。

 ゴリラ(姉貴)は久々に再会した担任と昔話に花を咲かせ、楽しげな岳は俺と手を繋いで店まで歩いた。



 * * *



「おっちゃん、やってるー?」


 暖簾(のれん)をくぐり、店の中に入っていく担任に続き、ゴリラ(姉貴)、熱血先輩(兄)、猫先輩、不良先輩の順になにも言わずに入っていく。

 しかし、俺たち一年は躊躇していた。


 窓は油や埃で白く曇り、店には蔦が絡んで全体的に薄暗い。

 看板は錆び付き、文字もほとんど読めない。


 店の引き戸は建付けが悪く、開けるにもコツがいりそうだ。

 それを担任がいとも簡単に開けていた。

 扉を開けるだけでもものすごくうるさい音がした。

 ある意味では防犯になるな……。


「……な、なんだか老舗って感じですね……」

「いや、お化け屋敷でしょ、ここ」

「ボロいな」

「ボロボロー♪」


 初めて来た優等生が精一杯気を使い、ギャルと俺、岳が率直な感想を口に出した。


「いや待て、この扉……異世界につながってるのかもしれん!」

「それは無いですね」

「ねーよ」

「絶対ない」

「なーい」

「……」


 厨二メガネがやはり厨二なこと言うが、俺たちが厨二メガネには酷な現実を突き付ける。

 俺たちもボロボロの店に入った。

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