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俺に青春は向いていない  作者: 真面堂 九世
第4章

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2

「これ、なんに使うんだよ……」


 俺たちがやって来たこの資料室には、段ボール箱が置かれているスチールラックと本棚が所狭しと並んでいた。

 本棚には学校史やアルバム、赤本などが数多く並び、片隅では学校の模型やパソコンが埃をかぶっている。

 資料室というより、ちょっとした倉庫だ。

 他の教室より少し広いから、大変そうだ。


 俺たちは担任から渡された用紙に従い、ゼッケンやタスキの数を確認していく。

 だが、中には水鉄砲、叩かれても痛くないチャンバラ用の剣、紙風船、子供用三輪車など、高校教育では絶対に使わないような物まで、なぜか大量に保管されていた。


「あーメンドクセー。お前ら、早く終わらせろよ」


 俺と厨二メガネとギャルの三人は、担任に押し付けられた仕事を渋々こなしている一方、不良先輩は部屋の中央のパイプ椅子にふんぞり返り、長机に脚を乗せ、頭の後ろで手を組んでサボっていた。

 仕事自体は結構簡単で、四人も人数はいらないのだが、こうも堂々とサボられてはこっちの気が滅入ってしまう。


「せんぱいも~、手伝って下さいよぉ~」

「そ、そうだそう——」

「あ゛?」

「ヒィ……テツダッテクダサイオネガイシマス」


 ギャルと厨二メガネが不良先輩に手伝いを頼むが、不良先輩の一睨みで厨二メガネが怯み上がる。


「いいか? 三年のアタシが働くわけねーだろ。後輩が雑用をすんのは当たり前だろ」


 不良先輩がゴミクソパワハラ上司みたいなことを言ってくる。

 こういうやつに限って、まったく仕事が出来ないんだよなぁ。

 そう個人的な偏見を口には出さず、俺は黙々と仕事をこなす。

 こういうのは言わぬが花だ。


「あー! 卒アルはっけーん!」


 ギャルが突然大声を出した。


「おいぃ! なにお前までサボってるんだよ!」

「うっさい! ちょっと疲れたからきゅーけー。あ、アンタたちはやっていていいからねぇー。さーて、おねぇーちゃんはどこかなぁ?」


 ギャルは不良先輩が座っている対角線の席に座り、休憩と称して持ってきた卒アルを、ページをゆっくりめくりながら自分の姉を探し始める。


「これだから頭の軽いビッチどもは……」


 厨二メガネはサボり続ける女子二人への毒を吐き、汗をかきながら仕事を続ける。

 俺も仕事の続きをしに奥の方から攻めていく。


「え、この人って……。ねぇ、陰浦」

「んー、なんだー?」


 自分の姉を探していたギャルは、棚の向こうにいる俺に向かって声を少し張る。


「アンタって、おねぇーさんいるの?」

「あぁ、いるけど?」

「じゃあ、この人ってアンタのおねぇーさん?」


 ギャルのもとへ近寄る。

 指差すのはある女子生徒の写真だ。

 覗き込むと、不良先輩も気になったのか身を乗り出し――ゴツン、と互いの頭がぶつかった。


「イテッ……すみません」

「いや、アタシのほうこそ悪かったな」


 今度こそ写真を見ると、見覚えのあるやつがいた。

 茶髪でポニーテールの目つきの悪い女子が写真に写っていた。


「あー、これは完全に姉貴だな。名前も同じだし……」


 どうやらギャルは、六年前の姉貴(ゴリラ)の代の卒アルを引っ張り出したようだ。

 昔から、ゴリラ(姉貴)は写真に写ることを嫌っていた。

 だから卒アルのために強制的に撮られるのを嫌がりすぎて、カメラを睨みつけるような顔をして写っていた。

 メンチ切ってんじゃねーよ、カメラマンがかわいそうだろ。


「え、お前って沙織さんの弟なの——イッテェ」

「イッ……」


 写真の女子生徒が俺の姉貴だと知り、不良先輩は驚いたように、唐突に身を乗り出してきたところで、また俺と頭がぶつかった。


「すまん」

「いえ、大丈夫です」


 俺は頭を押さえながら不良先輩を見る。


「姉貴のことを知っているんですか?」

「まぁな、昔、沙織さんに助けられたことがあるんだよ……」

「へぇー、そうなんですか」


 不良先輩がそのときの光景を勝手に思い出し、微笑みながら思い出に耽る。


「な、なぁ?」


 不良先輩が頬を染めて尋ねてくる。


「なんですか?」

「お前の姉さん、沙織さんに、その……合わせてくれねーか?」


 不良先輩が急にモジモジしだした。

 見た目のわりに意外とかわいらしい一面を持っているみたいだ。

 俺はなんとも思わなかったが、厨二メガネは興奮していた。


「年上の、男勝りなポニテヤンキーは、やっぱりツンデレ属性だよな。それに、スタイルも良いし……うん、有りだな」


 なんてアホなことを呟いている。


「お礼を言いたいんだ。……アタシは昔いじ――」

「いいですよ」


 不良先輩が過去回想に入ろうとするが、興味がないため、話を遮って了承する。


「え?」

「いいですけど、あまり期待しないでくださいね。姉貴は、基本的に過去を振り返らないタイプの人間なんで、先輩のことを覚えているかわかりませんよ?」


 なぜだか、ゴリラ(姉貴)に過度な憧れを抱いている不良先輩に、一応忠告する。


「あぁ、それでもいい。アタシはただ、礼を言いたいだけなんだ」

「わかりました。ただ条件があります」

「わかった。なんでもするから言ってくれ」

「……ん?」


 不良先輩の「なんでも」という言葉に、厨二メガネが過剰に反応しだした。


「今、なんでもするって言った?」


 厨二メガネは両手で空を揉むしぐさをしながら、不良先輩に近づく。


「ぐへへヘ……それじゃあなにをしてもらおうかなぁ」


 不良先輩が目を吊り上げ、厨二メガネを睨み、嫌悪感を露わにする。


「近寄るな! デブ!!」


ドゴッ!!


 不良先輩が厨二メガネの丸々太った腹を蹴り飛ばす。


「ぶひぃ……! ありがとうございますっ!!」


 厨二メガネが床に転がりながら礼を言う。

 ……コイツ、本当にアホだな。


「キモッ」


 転がっている肉団子をギャルが冷たい目で見下す。


「先輩、そんなアホはほっといていいですから、俺が言う条件を飲んでもらいますよ」

「な、なんだ……? まさかお前まで変なことを言うんじゃないだろうな?」


 不良先輩が警戒心を高める。

 この人までなにを言っているんだ。


「バカなことを言っていないで仕事をしてください。それが条件です」

「そんなことでいいのか?」

「はい。むしろ、うちの姉貴なら人に仕事を押し付けずに、みんなと一緒に手を動かしますよ」

「うっ……悪かった、手伝う。ほら、お前もやるぞ!」

「えー、まだ見たかったのにぃ」


 ゴリラ(姉貴)のことを引き合いに出すと、不良先輩は素直に言うことを聞き、ギャルと共に仕事を始めてくれた。

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