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担任の指示通り三年生と二年生は、向かい合って座った。
だが、気づけば猫先輩は、当然のように俺の膝に座っていた。
「あの、先輩?」
「なに?」
「なんで俺の上に座っているんですか?」
「おちつくから……。そんなことより、なでて」
猫先輩は顎を少し上げ、撫でやすい位置に頭を持ってきた。
「いや、あの……」
「ん、なでて」
仕方なく撫で始める。
……不思議だ。理由はわからないが、手が止まらない。
「ま、まぁボクの実力は公にできないから……。危なかった……。……はぁ……」
「……」
「……羨ましいです」
オタクメガネが厨二なことを言って落ち込み、ギャルはちょっと不服そうにスマホをいじり、優等生は猫先輩を見つめながら眉を寄せていた。
「おい、ひまり! そんなに撫でてほしいなら、あたしが撫でてやる。だから、そんなやつから離れてこっちに来い!」
「いや、アーちゃん、ざつ」
不良っぽい先輩が、猫先輩を俺から引き離そうとするが、猫先輩に片言で拒絶される。
「なんだと!? あんなに気持ちいいって言ってたじゃねーか」
「ちっちっち。この子のなでを味わったら、もうアーちゃんのなでには戻れない」
「ふざけん——」
「なぁ——」
「これから、俺を含めたこの八人で、生物部としてやっていくから軽く紹介するぞ。まず三年からな」
猫先輩に怒鳴ろうとしている不良先輩と、さっきから大人しく俺のことを凝視していた熱血先輩が口を開きかけたところで、黙って見守っていた担任がそろそろ時間だと口を挟む。
「まずは手前のコイツ。コイツは熱尾 太陽。陸上部との兼部だが、バカすぎてここに入れた」
担任が俺たち二年に向かって紹介を始めた。
「やぁ!! よろしくな!」
熱血先輩は親指を立て、真っ白な歯をのぞかせた笑顔を俺たちに向けてくる。
「チッ、うぜぇ」
「次は今舌打ちしたそいつ。そいつは赤城 紅葉だ。見た目と態度でわかると思うが不良だ。常習的な遅刻と校則違反などでここに入れた」
「フンッ……」
俺への嫉妬でずっと睨んできていた不良先輩は、注目されることを嫌ったのか頬杖をついて顔をそむけた。
「……えーっと、最後は陰浦の上に座っている……ちっこいのは、黄倉 陽葵。そいつは授業中に、ずっと居眠りをするわりに成績がいいから、他の先生方に、去年コイツらの学年主任だった俺にどうにかしろと言われて、仕方なくここに入れた」
「……」
猫先輩は、気持ちよさそうに俺に頭を撫でられ続けている。
「次はお前ら二年生、自分たちで挨拶しろ」
担任に促され順番に挨拶をした。
最後の俺が自己紹介を終えると、熱血先輩が目を見開き、満面の笑みを浮かべた。
「やはり君か!! 体力測定の全記録で、最高記録を叩き出したっていう二年生は!」
「へぇー、お前だったんだ。それと一緒に噂になってたな。このオッサンを土下座させたって……。やるじゃん」
熱血先輩が目を輝かせ、不良先輩からは見直したというような顔を向けられた。
だいぶ尾ひれがついているな。
完全に変なレッテルが貼られている。
はぁ……最悪だ。
「それで、どうだい!? 陰浦 明くん! 陸上部に——」
「絶対に、嫌です」
「ハハハ! そうだな! 急に言われても困るよな!」
案外、言葉が通じる人だったのか?
「じゃあ、まず、見学からでもどうだい!? 一度見学してくれたら絶対に入りたくなるよ! 俺たちは、本気で取り組んでいるからね」
ダメだ。やっぱり通じていない。
「よし、顔合わせも終わったし、今日は手伝ってほしいこともないから、これで解散。じゃあな。気を付けて帰れよー。赤城は、明日こそ遅刻すんなよ」
担任に解散を告げられた瞬間、熱血先輩と猫先輩はいつの間にかいなくなっていた。
不良先輩は、気だるげにバッグを肩に回した。
担任は去り際の不良先輩に釘を刺すが、不良先輩は「聞こえねー」とばかりに教室を出ていった。
俺たち二年もバッグを持って立ち上がった。
「陰浦さん、今日も一緒に帰りませんか?」
「あぁ、いいぞ」
昨日に引き続き、優等生に誘われ了承したが、二つの視線が俺たちに刺さった。
「ねぇ、アンタたちってさぁ、付き合ってんのぉ?」
「……」
髪をいじりながら聞いてくるギャルと、無言でうなずくオタクメガネ改め、厨二メガネ。
「? 付き合ってないぞ」
「えっ? はい、付き合っていません」
俺と優等生は揃って否定した。
「「……」」
まだ疑っている目だな。
「でもぉ、昨日バイト前に買い物してたらぁ、アンタたちを見かけたんだけどぉ。結構仲良さげだったしぃ」
ギャルは顎に指を当てて、その時の光景を思い出す。
「いえ、本当は皆さんと一緒に帰りたかったのですけど、お二人ともすぐに帰ってしまわれましたので……」
「すまないな。ボクは大事な使命があったからな……。今日は任務がない貴重な日だ……」
メガネをクイっと上げた厨二メガネが誘ってほしそうに目を泳がす。
「でしたら、今日こそ一緒に帰りませんか?」
パンッと手を合わせ、優等生が二人へ提案する。
「まぁ、いいけどぉ?」
「フッ、どうしてもって言うなら、帰ってやろう……一緒に……」
結局、満更でもない二人も加わり、四人で帰ることになった。




