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俺に青春は向いていない  作者: 真面堂 九世
第3章

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「えーっと、まぁ、しゃーねーな。じゃあ、お前ら四人とも、うちの生物部に入っていいぞ」


 体力測定が終わった放課後、昨日の始業式に集められた四人が呼ばれ、それぞれの記録用紙を眺めて担任が気だるげに言う。


「んー、だけどなぁー。陰浦、お前の記録なんだが、体育館での競技は平均より少し上くらいだが、グラウンドでやったのは飛び抜けているからなぁ……むしろ学校一レベルで……」


 担任が俺の記録用紙を取り出した。


「やっぱり、運動部に入ったほうがいいんじゃねーか?」

「マジで嫌です!」


 担任に運動部を勧められるが、きっぱりと断る。


「……わかったよ。俺は嫌がる生徒には無理強いはしないからな」


 担任が記録用紙をトントンと教卓で整え、話を切り替えた。


「これから生物部の三年生と顔合わせをするから、生物室に集合してくれ。俺は一旦職員室に行くから先に行っててくれ」


 担任が教室を出て行くのを確認した俺たち四人は、自分たちの荷物を持ち、教室棟の隣にある特別棟の生物室へ向かった。

 生物室に着き、優等生を筆頭に扉を開けて中に入る。教室には男子一人、女子二人の三年生がいた。


「おや!? 君たちか! 生物部の新しい仲間というのは! ようこそ!! 歓迎するよ! 俺は熱尾 太陽(あつお たいよう)! よろしくな!!」


 あ、この人、苦手だ。


 スポーツ刈りに焼けた肌。そこに真っ白な歯を見せる笑顔。

 身長は百八十五センチくらいで、半袖から生えている腕は、目に見えてわかるくらいの筋肉質だ。たぶん運動部にでも入っているのだろう。


 俺みたいな陰キャは、こういう、「ザ、熱血」とは相性が悪すぎるんだよなあ……。

 俺が一番避けたいタイプ。

 ただでさえ強制的に入れられたし、初っ端から熱血で脳筋臭全開の部員。

 やめようかな? この部活。


「「「「……」」」」

「なんだなんだ!? 元気がないぞぉ?」

「うっせーぞ、この脳筋バカ」

「バカとはなんだバカとは!! 赤城 紅葉(あかぎ もみじ)くん!」

「脳筋は否定しねーのかよ。てか、フルネームでアタシの名前を呼ぶな!」


 熱血先輩と、口の悪いもう一人の先輩が言い争う。

 いかにも問題児というような感じの先輩女子だ。にしても目つきが悪いな。


 雑に結んだポニーテール。

 鋭い目つきで熱血先輩を睨む。

 腰には灰色のカーディガンを結び、シャツの袖を腕まくりしている。

 シャツのボタンを胸元まで外し着崩しているせいで、谷間が見えていた。


 オタクメガネは少し背伸びしたり、顔の角度を変えたりして、どうにかして気づかれずに胸を覗こうと鼻息を荒くしている。


「フースー、フースー……」


 バレバレだぞ、メガネくん。

 机に伏せて寝ていたもう一人の小柄な先輩が、パッと起き上がった。

 その先輩は、俺たち新入部員をくりっとした大きな目でジーっと見てくる。

 座っていた椅子から飛び降り、パタパタとスリッパを鳴らして、小動物のように小走りで近づいてくる。

 近づいてきた先輩は、ギャルの目の前で立ち止まり、もう一度顔をジーっと見上げる。


「……」

「え、なになに?」


 見定め終わった先輩は、ギャルの手を取り、自分の頭に乗せて吟味し始めた。


「……」

「え、本当になんなの? ……イタッ!?」


 より戸惑うギャルをよそに、ブカブカの制服姿の先輩は頭に乗せたギャルの手をペシッと叩き、猫のように「シャーッ」と威嚇した。

 次は優等生の目の前に移動した。


「なんだか緊張しますね」


 先輩は、少しワクワクしている優等生の手を取り、頭に乗せた。

 すると、今度はなにかがよかったのか表情が和らいだ。


「なにかわからないですけど、合格ですか?」


 和らいだ表情はすぐに元に戻り、また猫のように威嚇した。


「痛い。……なにが駄目だったのでしょうか?」


 優等生の疑問に答えず、隣にいるオタクメガネの前に移動する。


「フッ……。次はボクの番ですか……。まぁ? 選ばれし者のボクが選ばれて当然ですけど……」


 ほんのり汗をかいたオタクメガネが、わけのわからない厨二っぽい発言をし、女子にさわれると思い込んで手を浮かせて待っていた。


「え……?」


 女子二人と違って、オタクメガネはフイッと素通りされてしまった。

 浮かせていた手だけが、むなしく宙に残った。


「……」

「……?」


 オタクメガネを素通りしたちっこい先輩は俺の前まで来て、数秒間見つめ合う。

 すると——。


「……なでて」

「え? あ、はい……」


 上目づかいで猫のように頭を差し出され、俺は自分でもわからず、なぜか先輩の頭を撫でてしまった。

 頭を撫でると、先輩の表情が気持ちよさそうに綻ぶ。

 癖ッ毛のショートカットで、モフモフした髪を撫でていると、なんだか昔飼っていた猫を思い出す。


「すまん遅くなった。お、珍しいな。黄倉が初対面のやつに懐くなんて。って、そんなことより紹介するからお前ら座れ」

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