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俺に青春は向いていない  作者: 真面堂 九世
第2章

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4

「はぁ……。憂鬱です……」


 ようやく体力測定もハンドボール投げを残すのみとなり、クラスメイトたちは担任が吹くホイッスルの合図でボールを投げていく。

 出番となった優等生は長いため息をつき、気分を落とす。


「大丈夫、美緑ちゃん。私なんて二メートルだよ。美緑ちゃんならできるよ」

「そうでしょうか?」


 優等生のペアの女子が必死に元気づけるが、それでも気分は晴れない。


「こういう時は、どうでもいいや、って思ってやれば気になんなくなるぞ」

「わかりました……やってみます」


 優等生は小さく息を吐き、「どうでもいい……どうでもいい……」と自分に言い聞かせながら投球位置へ向かった。

 担任からボールを受け取ると、一度深呼吸をする。

 何度も体を揺らしてタイミングを図ったのち、ようやく、両手で持ったボールを投げる。


「………………えい!」


 あ、これは駄目かも……。

 投げる瞬間に、目をつむっていた優等生は、自分が投げたボールを探してキョロキョロするが見当たらない。


「……マイナス一メートル」

「ま、マイナス!?」


 記録を聞いた優等生は後ろを振り向き、転がっているボールを恨みがましく見る。


「はいかわいいー」

「かわっ」

「可愛すぎる」


 その光景を見ていたファンたちが、各々感想を述べた。


 優等生は自分が落としたボールを拾ってもう一度投げる準備をする。

 今度こそ遠くへ飛ばそうと、大きく振りかぶり二投目を投げる。


「えいっ!!」


 ボールは一投目とは違って、青空に吸い込まれるように高く舞い上がり、頭上に輝く太陽と重なる。

 そして――。


 ドスンッ。


「イタイッ!」


 今度は優等生の狙い通り行くかと思われたが、真上に飛んだボールはそのまま落下し、自分の頭に直撃してしまった。

 優等生は頭を両手で押さえて、その場にしゃがみこんだ。


「はい、ばかわいいー」

「ばかわっ」

「ばかわいすぎるっ」

「「「チッ…」」」


 よりデレデレする男子たちに、女子たちが揃って舌打ちする。


「……えーっと……ゼロ」

「ゼ……ロ……」


 担任が遠慮がちに告げた記録を聞いて、優等生は絶望の表情を浮かべながら戻ってきた。

 投げ終わった生徒は、次の生徒が投げるボール拾い兼、測定係をしなければならない。

 だが、とある男子が半ば無理やりその役を引き受けた。


「アハハハハ。物理的にも記録的にも頭が痛いな。どんまいどんまい」

「……岡田さん、嫌いです」

「え、なんで?」


 陸斗が何気にうまいことを言うと、デリカシーのない発言に怒った優等生は、そっぽを向いて陸斗と顔を合わせなくなった。

 そういうことを平気で言うから、みんなに「残念イケメン」だなんて言われるんだよ。


「えー、なんでだろ? ま、いいや、次、俺行ってこよーっと」


 本物のバカは切り替えが早く、軽快な足取りで投球位置に向かった。


「どうしましょう。岡田さんに対する陰浦さんの気持ちが、少しわかってきました」

「だろ? あのバカと付き合っていると、それこそ頭が痛くなってくる」

「……もしかして、陰浦さんも私をバカにしてますか?」

「してないしてない。それより、あのバカが投げるみたいだ、見ようぜ」


 話を逸らしたが、優等生にしばらくジト目で見られた。


「よーし、これも最高記録をたたき出すぞー」


 陸斗は肩をぐるぐる回して投げる準備をする。

 陸斗はこれまで、全種目を全力でこなしてきた。

 さすがというべきだろうが、よく疲れないものだ。


「よっこらせっ!!」


 爺臭い掛け声とともに、陸斗が勢いよくボールを投げ飛ばした。


「おぉ! 飛んだ飛んだ。見たか明? 記録更新したんじゃねーか?」

「六十九メートルでーす」

「スゲーな岡田。三学年でお前が一番スゲーんじゃないか?」

「……」


 測定係が大声で叫んだ記録を聞いた担任は、はしゃぐ陸斗を手放しで褒める。

 俺は変わらず無関心に記録用紙へ結果を書き込む。

 二投目は一投目より飛ばせず、陸斗は悔しがっていたが、それでも一投目で高記録を出していたため、あまり気にしていない。


「岡田さんって本当にすごいですね」

「そうだな。昔っからあいつは運動『だけ』は他のやつらより飛び抜けていたからな」

「そうなのですか。まるで、物語の主人公みたいですね」

「バカだけどな……」


 いつの間にか、最後に残ったのは俺だけだった。

 重い腰を上げる。


「はぁ……めんどくせーけど、俺も行ってくるわ。これ持っててくれ」

「はい、頑張ってください」


 優等生に俺たちの記録用紙を預かってもらい、俺もため息を吐きながら渋々ハンドボール投げに向かった。


「お! 明が投げるのか。さすがのお前でも俺の記録は越えられねーだろー。俺は、この辺まで投げたんだぞー」

「……」


 投げ終わった陸斗は測定係になり、自分が投げた記録地点より少し先で俺が投げるのを待った。

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